そのゲテモノ感溢れるタイトルが逆にミドルエッジ世代には心地よく響く、B級SF巨大モンスターパニック映画、それがこの『ジャイアントスパイダー大襲来』だ!

輸入版ブルーレイのジャケット
ブルース・リーとカンフー映画ブームが終わりを告げた1976年に、突然公開されたこの映画こそ、正に我々ミドルエッジ世代を直撃した、思い出のトラウマ映画だと言える。
子供の頃、テレビで流れていた宣伝スポットで、巨大グモが人間を飲み込むシーンや、丘の向こうからその巨大な姿と長い脚を現すシーンを見て、「うわ、スゴい!見たい!」と思った方も多かったのでは?
しかし残念ながら『テンタクルズ」』の回でも書いた通り、よほど理解のある親でなければ劇場に連れて行ってはもらえない内容だった本作。当然ながら、当時無念の涙を飲んだ子供たちも多かったのだ。

国内版DVD発売時の広告
幸い、現在は無事に日本でもDVD化されており、いつでも高画質の大画面で鑑賞出来るようになっている本作。
しかし、やはり我々ミドルエッジ世代の脳裏に蘇るのは、見たくても見に行けなかった子供の頃の欲求を満たしてくれた、本作のコミカライズ版の存在だ!
そこで今回は子供の頃我々を楽しませてくれた、そのコミカライズ版を紹介してみたいと思う。
ミドルエッジ世代のトラウマ映画、『ジャイアントスパイダー大襲来」』とは?
宇宙から落下した隕石!そこから出現した巨大グモ対人間の戦いを描いた、SFモンスター・パニック映画と、公開当時は誰もが思っていた本作。実際、テレビスポットの短い映像に登場する巨大なクモは、子供心にも迫力満点で結構怖かったのを覚えている。

これが当時の子供にトラウマを残した、家よりデカい巨大グモだ!
例えば二階建ての家より巨大なクモが、合成でなく実物大で出現するこのシーン。この衝撃映像に、当時どれだけ多くのミドルエッジ世代の子供たちの心が奪われたことか・・・。

白昼堂々住民を襲う、ジャイアントスパイダー!
ところがこの写真からもお分かりの通り、実際は巨大なハリボテのクモが祭りの神輿の様に台車に乗せられて移動するだけという、我々の期待と夢を打ち砕く低予算映画だったのだ。

『ジャイアントスパイダー大襲来』日本版ポスター
ただ、確かに当時の観客が期待したのも無理はない。なにしろ本作のポスターデザインがご覧の様な奇跡のビジュアルに仕上がっていたため、観客はこのポスターの通りのシーンが登場すると期待して、劇場に足を運んでしまったという訳だ。

公開当時の新聞広告
当時の新聞広告からもお分かりの様に、子供の目にも迫力満点だったこれらの宣伝用ビジュアル。しかも同時上映が未だにソフト化されていない幻の短編映画『ザ・カンフー』とあっては、当時の子供たちの間でも、文字通り話題の的だった本作。年齢的に一人では映画館にいけなかった、彼らの欲求と好奇心を満たしてくれた救世主こそ、これから紹介する本作のコミカライズ版だったのだ。
『ジャイアントスパイダー大襲来』コミカライズ版概略

掲載誌の表紙
このコミカライズ版が掲載されたのは、月刊少年チャンピオン1976年9月号。作者はこの頃の劇画ロードショーで常連となっていた、たなべせつを先生。全40ページで掲載された本作は、後で紹介する様に見開き2ページや片面1ページを使ってジャイアントスパイダーの登場シーンを描くなど、映画の100倍迫力のある内容となっていて実に見事!
当時子供で映画館に行けなかった我々を大いに楽しませてくれた、映画コミカライズ史に残る名作とされているのだ。
『ジャイアントスパイダー大襲来』コミカライズ版内容紹介

本作の扉絵

ある日町外れに落ちた隕石が、全ての発端だった!

隕石から出現した謎の球体とは?
ある日平和な田舎町の外れに落下した隕石。隕石によって地中に空いた穴から出現した、巨大な宇宙グモ=ジャイアントスパイダー!
果たしてその目的とは?この最大の危機に、人類はどうやって立ち向かうのか?

ついに出た、これがジャイアントスパイダーだ!

家より大きいジャイアントスパイダー!

1ページ全面使って描いたこのシーンの迫力!

何と、ブラックホールがこんな所にあるとは!

ジャイアントスパイダーの弱点が明らかに!

中性子爆弾を用意する主人公たち!

中性子爆弾が爆発!
いかがでしたか?
普通に町の外れで中性子爆弾を爆発させる!という展開には、今だからギョッとさせられるが、あくまでも当時の子供にとっては、何か強力な爆弾?程度の認識しか無かった様に思う。ブラックホールが地上にある!という展開も、当時の純真な子供たちは、SF的要素満載に思えて何ら疑問に思わなかったのだ。
最後に
ブラックホールや中性子爆弾など、当時としても最先端の科学要素が満載のこのコミカライズ版。きっと映画本編はもっと面白いのでは?読者にそう思わせた本作こそ、宣伝と集客の効果を見事に果たした名作コミカライズと言えるだろう。
ただ、後年実際に本編を見て、田舎町で巨大なハリボテのクモが移動する、そんなノンビリした映画だったので驚いたという方も、きっと多かったのではないだろうか。しかも真っ昼間の町中に普通にジャイアントスパイダーが現れる展開には、これぞ70年代の大らかさ!と思わずにはいられない。
今回、『テンタクルズ』『オルカ』と、3回に渡って紹介してきた巨大生物映画のコミカライズ版だが、最近ではもはや地上波テレビでの放送も望めないほど、寂しい状態となっている。機会があれば是非これらの作品をレンタル鑑賞して、70年代のあの頃を思い出して頂ければと思う。