そもそも「蟷螂拳」とは?
両手の人差し指と中指を突き出し、やや膝を曲げて、ポーズをとる…。男子ならば誰もが一度はやったことがあるのではないでしょうか?
清代初期に山東省出身の周亜門という修行僧が、カマキリの戦い方を研究して案出したといわれる蟷螂拳。「カマキリの闘法が原型」というエピソード、ネーミングのカッコよさ、すぐにでも真似できるポージング…。これほど中二心をくすぐる拳法、そうそうありません。そんな蟷螂拳を我々が知るきっかけとなったのは、言うまでもなく、さまざまなフィクション作品なわけですが、では具体的にどんな使い手によって中二病の世界へいざなわれたのかを振り返っていきたいと思います。

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ジャッキー・チェン‐映画『ジャッキー・チェンの鉄指拳』(1978年)など
中二病罹患の権化的存在。鳥山明が『ドラゴンボール』の戦闘シーンを描く際、彼のアクションシーンを参考にしたということからも分かる通り、その影響力は二次的、三次的に世界規模で波及し続けています。

ジャッキー・チェンの必殺鉄指拳
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そんなジャッキー・チェン出演の映画で蟷螂拳が登場したのは、香港映画『スネーキーモンキー 蛇拳』と『ジャッキー・チェンの鉄指拳』(1978年)。前者では蟷螂拳を使用する道場破りが登場し、後者ではジャッキー自らが蟷螂拳の使い手を演じました。
なお、2008年の映画『ドラゴン・キングダム』では、酔拳の使い手ジャッキー・チェン vs 蟷螂拳の使い手ジェット・リーという夢の対決が実現。ジェット・リーが見せる構えがいかにもカマキリっぽくて様になっています。
内村光良‐映画『七人のおたく』(1992年)
ウッチャンといえば、ジャッキー・チェンのファンとして有名。『ウッチャンナンチャンの誰かがやらねば』『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば』などのバラエティ番組で幾度となく共演を果たし、知己を深め合った仲です。そんな内村が格闘技おたくを演じた映画『七人のおたく』では、浜辺で蟷螂拳の型を披露しています。

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武田鉄矢‐映画『刑事物語』(1982年~1987年)
ジャッキー・チェンの名作『ドランクモンキー 酔拳』を観た武田鉄矢が「日本でもこんなアクション映画をつくりたい!」と熱望したため実現した『刑事物語』。そのため、武田の風貌もかなり一昔前のジャッキーの外見に似せています。中国武術研究家の松田隆智から、第1シリーズ撮影開始前より習ったという体術は必見です。
松田隆智‐『ひらけ!ポンキッキ』内で放送された楽曲『カンフーレディ』
そんな松田隆智先生の貴重な御姿が見られる映像がこちら。フジテレビ系の子供向けバラエティ『ひらけ!ポンキッキ』内で放送された『カンフーレディ』というミュージックビデオで、演武を披露しています。なお、蟷螂拳を実演しているのは、映像の1:25くらいからです。
デビッド・チャン‐映画『激突! 螳螂拳』(1978年)
螳螂拳はどちらかといえば、物語の主要キャラではなく、脇役&敵役が使うことの多い拳法。ということでおそらく、螳螂拳の使い手が主役という映画はあまりないのですが、この映画『激突! 螳螂拳』は、螳螂拳全面的にフューチャーした珍しい作品として知られています。復讐に燃える主人公演じるデビッド・チャンの俊敏かつ流麗な螳螂拳は必見です。

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剛拳児‐漫画『拳児』
蟷螂拳の影響力は、スクリーンのみならず漫画界にも波及。この『拳児』は、1988年~1992年まで『週刊少年サンデー』で連載されていた格闘漫画。通常の少年格闘漫画と同様、主人公の闘い&成長がベースとしてあるものの、中国武術の技術論や思想・哲学などの紹介が適宜入るという、教養漫画的側面も兼ね備えた異色の作品でした。

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リオン・ラファール‐ゲーム『バーチャファイター』
対戦格闘ゲーム『バーチャファイター』におけるリオン・ラファールの出現は画期的でした。それまで螳螂拳の使い手といえば、ステレオタイプなカンフー衣装に身を包んだ東洋人(特に中国人)がデフォルト。しかし、リオンのキャラ設定はフランス国籍で、大富豪の御曹司。そして、金髪のイケメンなのです。なぜ、フランス人なのに蟷螂拳を学ぼうと思ったのかは謎ですが、いずれにしても、『バーチャファイター』のゲーム・アニメ・漫画などにまたがるメディアミックス戦略の大成功と、それらの作品でカッコよくカマキリの構えで戦うリオンの登場により、螳螂拳の認知度が一気に上昇したのは間違いありません。
(こじへい)