その名は、ポール!
ミュージシャン、ベーシスト、名前がポールとくれば、多くの人が思い浮かべるのはマッカートニー。ポール・マッカートニーでしょう。
しかし、ここでご紹介したいのは、もう一人の天才ベーシスト、チェンバースです。

ポール・チェンバース
マッカートニーに負けず劣らずの天才でありながら、いかんせんジャズ。しかも、ポール・チェンバースのリーダーアルバムは僅かに以下の5枚を数えるのみです。
・Whims of Chambers (ブルーノート, 1956)
・Paul Chambers Quintet (ブルーノート, 1957)
・Bass on Top (ブルーノート, 1957)
・Go (ビージェイ, 1959)
・1st Bassman (ビージェイ, 1960)
こうなると知名度は雲泥の差です。代表作といえる3枚目のアルバム「ベース・オン・トップ」ですら一般にはあまり知られていないことでしょう。
しかし、このアルバムは素晴らしい!ポール・チェンバースは素晴らしいんです!

ベース・オン・トップ
アルコ(弓弾き)やピチカート(弦を指ではじいて音を出す)によるアドリブソロで注目されているポール・チェンバースのプレースタイルの特徴は、管楽器経験に根ざした言われているメロディックなベースラインにあります。
貴重な映像を観てみましょう。
「ベース・オン・トップ」にはコール・ポーターの作品でヘレン・メリルの歌で日本でも人気のある「ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ」が収録されています。
いくら素晴らしいと言っても5枚しかアルバムを出していないのに何故ポール・チェンバースの評価が高いのかと疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。
それは、多くの名盤、尋常ではないほど数多くのアルバムにサイドマンとして参加し、素晴らしいプレイを残しているからなんです。
では、彼が参加した代表的なアルバムをご紹介します。
カインド・オブ・ブルー
ポール・チェンバースが参加したアルバムで最も有名なものは、マイルス・デイヴィスの「カインド・オブ・ブルー」ではないでしょうか。
と言うのも、「カインド・オブ・ブルー」は、マイルス・デイヴィスの代表作であるだけでなく、ジャズを代表するアルバムのひとつであり、最も売れたジャズ・アルバムと言われているからです。

カインド・オブ・ブルー
録音メンバーは以下のとおりです。
マイルス・デイヴィス - トランペット
ジョン・コルトレーン - テナー・サックス
キャノンボール・アダレイ - アルト・サックス(on1.,2.,4.,5.)
ビル・エヴァンス - ピアノ(on1.,3.,4.,5)
ウィントン・ケリー - ピアノ(on2.)
ポール・チェンバース - ベース
ジミー・コブ - ドラム
全員すごいメンバーです。そして全部名曲、名演。中でも代表曲である「ソー・ホワット」でのポール・チェンバースのベースはとても印象的です。
ブルー・トレイン
マイルス・デイヴィスを出したらジョン・コルトレーンを出さないわけにはいきませんね。これも名盤中の名盤として名高い、ジョン・コルトレーンがプルーノートに残した唯一のアルバム「ブルー・トレイン」。もちろんベースはポール・チェンバースです。

ブルー・トレイン
ジャズ界の2大巨頭から愛されていたポール・チェンバースですが、ジョン・コルトレーンに至っては「ジャイアント・ステップス(ポール・チェンバース参加)」というアルバムで「Mr. PC」という曲を作って演奏しています。
「PC」とは勿論ポール・チェンバースのことですね。
カッコいい曲ですねぇ。
クール・ストラッティン
発売当時アメリカでは全く売れず、何故か日本でのみヒットしたソニー・クラークの「クール・ストラッティン」。アルバム・ジャケットの素晴らしさと共に今でも人気の作品ですね。

クール・ストラッティン
ソニー・クラーク(p)以下パーソネルは、アート・ファーマー(tp)、ジャッキー・マクリーン(as)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)です。
マイルス・デイヴィスが取り組んだモードジャズや、ジョン・コルトレーンが推し進めたフリージャズには興味を示さなかったと言われるポール・チェンバースにとっては、「クール・ストラッティン」のような「ハード・バップ」はやりがいがあったでしょうね。
グルーヴィー
ジャズの名門、プレスティッジ・レコードを代表するピアノ・トリオ(ピアノ:レッドガーランド、ベース:ポールチェンバース、ドラム:アートテイラー)の名盤中の名盤として有名なのが、レッド・ガーランド の「グルーヴィー」です。

グルーヴィー
緻密で深い音とリラックスできる明るい音が共生しています。 ジャズのかっこよさと癒しの要素を備えた本作を聞いてみてください。 ベースのポールチェンバースの名演でも知られる作品です。
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収録曲の「what can i say,dear」は 、日本人にはテレビ番組「アタック25」の出場者紹介のBGMとして流れていたので馴染みがあるかもしれませんね。
ジョン・コルトレーン「ジャイアント・ステップス」、ウェス・モンゴメリー「フルハウス」、ケニー・ドーハム「クワイエット・ケニー」などソニー・ロリンズ、バド・パウエル、キャノンボール・アダレイ、ドナルド・バード、フレディ・ハバード、ジャッキー・マクリーンなどなどとても数え切れないほどのミュージシャンのアルバムに参加しているポール・チェンバース。
一時期は大げさではなく毎日のようにレコーディングしています。しかし、当時のジャズ・ミュージシャンにありがちだったアルコールとドラッグに溺れ、33歳という若さで亡くなりました。残念です。