バブル時代の生き残り、Y31セドリック

バブル時代の生き残り、Y31セドリック

日産セドリックといえば、かつてはトヨタのクラウンと並ぶ、日本を代表する高級車の双璧でした。しかし、2004年に兄弟車のグロリアと統合してフーガにバトンタッチ。セドリックが消滅して10年以上経っても印象が強く残っているのは、タクシー用が2014年まで製造されていたからでしょう。


デザインや足回りを刷新したY31型

セドリックのY31型は、1987年6月のフルモデルチェンジで登場しました。セドリック・グロリアは法人所有が多いため、パーソナルなハードトップをラインナップしつつも、法人利用を重視した設計をしていました。しかし、市場調査をすると、実は中小企業などのオーナー社長が法人名義で登録しているだけで、実際は自分で運転している人が多い、ということが分かりました。そのため、今までにないくらいパーソナル寄りに振ったのがY31型の特徴です。

年寄りくさいセドリックのイメージを一変した。

Y31型のフルモデルチェンジとともに、一躍人気グレードとなったグランツーリスモ

ちょうど日産も、1990年代までに技術の世界一を目指す「901運動」を推進中だったため、豪華なブロアムのほか、個人需要の拡大とユーザー層の若返りを図ったグランツーリスモを初設定し、人気車種となりました。

先代のY30型では、4ドアハードトップ、4ドアセダン、ステーションワゴン/ライトバンの3種類のボディを用意していましたが、Y31型ではハードトップとセダンだけとなり、ステーションワゴン/ライトバンはY30型が継続生産されました。一方で、セドリックをベースに3ナンバー専用ボディを与えたシーマを追加設定したのが特筆されます。

一見、Y30型以前と同様にドア以外はハードトップと共通に見えるが、実はほとんどがセダン専用パーツである。

フルモデルチェンジした、Y31型セダン

Nissan Cedric Sedan (Y31) 1987–91 images

Y31型セダンは、ハードトップと同じくCピラーにクオーターウィンドーを設けた6ライトのデザインで、一見ドア数が違うだけでしたが、フロントグリルやテールライトのほか、コーナリングランプの形状も異なるなど、外装についてはハードトップとは細部が異なる専用のデザインでした。

屋根から開くプレスドアやクオーターウィンドーで、セダンながらパーソナル感があった。

Y31型セダンのリアデザイン

Nissan Cedric Sedan (Y31) 1987–91 wallpapers

ボディをストレッチしたリムジンも登場

エンジンのラインナップは、V型6気筒のガソリンエンジンが3000ccのNAターボ(195PS)とNA(160PS)、2000ccのDOHCターボ(185PS)とNA(125PS)、そしてディーゼルエンジンの直列6気筒の2800cc(94PS)がありました。このほか、タクシーなどの営業車用にLPGエンジンも用意されました。

Y31型のダッシュボードは、ハードトップ・セダンともに共通だった。

写真はハードトップのブロアムVIP。

Nissan Cedric Hardtop (Y31) 1987–91 photos

当初、セダンにグランツーリスモの設定はなかったのですが、1988年6月に追加設定。1989年6月のマイナーチェンジでは、2000ccターボエンジン車のATが4段から世界初の5段になりました。

また、日産の子会社、オーテックジャパンにより、ホイールベースを150mm伸ばしたLシリーズや、600mm伸ばしたセドリック・ロイヤルリムジンなども設定されました。

価格は1000万円を越え、当時のメルセデスベンツのSクラスに匹敵した。

ホイールベースを600mm伸ばしたセドリック・ロイヤルリムジン

Autech Nissan Cedric Royal Limousine (Y31) 1987–91 pictures

ハードトップだけY32型にモデルチェンジ

お約束通り、登場から4年後の1991年6月に、セドリックはフルモデルチェンジをしますが、ハードトップのみがモデルチェンジをしてY32型になりました。Y31型の製造途中から高級車は3ナンバーが趨勢となり、セドリックもY32型で3ナンバーサイズのボディに、3000ccエンジンが主力となりました。しかし、セダンはタクシーが5ナンバー以下でないと中型車に区分されないため、5ナンバーサイズのY31型が継続生産されました。

丸目4灯のグランツーリスモは、若者からも熱い支持を集めた。

フルモデルチェンジでパーソナル感を強めたY32型セドリック

Nissan Cedric Gran Turismo (Y32) 1991–95 pictures

しかし、大幅な変更が加えられ、今でもタクシーなどで見かける外観になりました。外観の変更点は、ライトまわりやフロントグリルの高さを高くしたことで、フェンダーやボンネットの形状も変更、屋根を後方に延長してCピラーの上部を太くするとともにクオーターウィンドーの廃止、テールライトまわりの変更、車体側面のキャラクターラインの廃止などで、ドア以外は一変しました。

大きなグリルと太いCピラーで重厚感が増した。

ビッグマイナーチェンジにより、ドア以外はすべて新たなパネルとなったY31型セダン

Pictures of Nissan Cedric Sedan (Y31) 1987–91

クオーターウィンドーの廃止は、セダンの後席住人のプライバシーを高めた。

リアデザインも大幅に変わった

Photos of Nissan Cedric Sedan (Y31) 1987–91

写真は後年のタクシー仕様のものだが、基本的な形状は1991年に登場した。

マイナーチェンジで、ダッシュボードは丸みのある形状に変更された。

Nissan Cedric (Y31) 1991 photos

また、ダッシュボードも従来のデザインをベースに、丸みのあるものに変更されました。エンジンはV型6気筒の3000cc・NA(160PS)と2000cc・NA(125PS)、直列6気筒の2800ccディーゼル(94PS)で、ターボのラインナップを廃止。このほか営業車用にLPGが用意された。

セドリック・グロリアは個人向けのハードトップ、法人向けのセダンと性格を大きく分け、Y31型セダンはタクシーなどの営業車のほか、企業や官公庁の公用車として安定した販売を保ちました。また、前期型で好評だったLシリーズも継続されました。

自家用の販売終了後も営業用は継続

ハードトップは1995年6月にY33型にフルモデルチェンジし、セダンはやや遅れて9月にマイナーチェンジを受けました。1998年6月のマイナーチェンジでは、助手席エアバッグの設定を目的に、ダッシュボードが大幅に変更されました。

そして1999年6月、ハードトップはY34型にフルモデルチェンジ。セダンは継続生産されましたが、2002年に自家用モデルが廃止されました。この頃、日産はルノーとの提携により車種ラインナップが大きく変わっていました。日産の顔だったセドリック・グロリアも、フーガにバトンタッチする形で2004年10月に廃止されたのです。そして、セダンの営業車のみが継続されました。

フロントグリルの形状やテールライトが小変更された。

Y33型に合わせてマイナーチェンジされたY31型セダン

Photos of Nissan Cedric Sedan (Y31) 1987–91

ちなみに、兄弟車のグロリアは、1999年にセダンがセドリックに統合する形で廃止されたこともあり、このモデルチェンジで完全に消滅しました。

営業車のみとなったセドリックは、排ガス規制をクリアしながら製造が続き、2009年にはアイドリングストップの追加されたほか、保安基準の改正に合わせるためボンネット形状が変更されました。

見慣れた形状だが、製造期間が長いので、よく見ると細部が異なる。写真は1991年以降では初期の形状。

Y31型セダンのタクシー仕様

Nissan Cedric Taxi (Y31) 1991 wallpapers

そして2014年12月1日、ついにセドリックの販売が終了し、日産のタクシー専用車は一時ラインナップから完全に姿を消しました。これにより、Y31型は27年の超長寿にピリオドを打ったのです。

ボンネット形状が変更され、やや丸みを帯びた。

保安基準に適合するため、2009年にマイナーチェンジを受けたセドリック営業車

Photos of Nissan Cedric (Y31) 1991

現在も、セドリックセダンのタクシーが走っていますが、一番新しいクルマでもすでに3年は経っています。見かけたら、ぜひ乗車して日産の名車、セドリックの記憶を脳裏に、身体に残してください。

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