こんなことって?タイトルを間違って連載開始!そして…

こんなことって?タイトルを間違って連載開始!そして…

長くマンガの世界にいていろいろな事を経験してきましたけどその中でもこんなことってあるの!っていう事件が自分の身に降りかかりました。それは1994年、Jリーグバブルの真っただ中のことでした。


J-Kids 未来のJリーガーを応援する少年サッカー雑誌

子供をターゲットに創刊したのでしたからボクじゃなくてもマンガの表紙の方がよかったんじゃないかと…もちろん編集部側の思惑はあったんでしょうが。

J-Kids1号、当時Jリーガー第一人者のカズのイラストが表紙でした

Jリーグが開幕した90年代前半と同じ頃、ジャンプで「スラムダンク」が大ヒットしていました。
その関係で某出版社のバスケットボールの雑誌がバカ売れしたそうです。
で、その売れた分をJリーグバブルに乗っかろう(?)と出したのがこの雑誌「J-Kids」でした。

後発のサッカー雑誌ということで先行しているサッカー雑誌にはまともに対抗しないで子供をターゲットに日本全国の少年サッカーチームを取材して紹介、さらにマンガを2本載せて…そんな画期的な(?)サッカー雑誌にちょっとしたきっかけで創刊前に知り合う事になり創刊号からボクも連載することになったのでした。

連載の第一歩はまず打ち合わせからです。

僕の担当は編集の人数がいなかったのか編集長直々に担当という事になったのですが本人曰く「マンガには詳しくないので社外の者だけどマンガに詳しい友人を連れてきました」とカメラマンだという友人が同席しました。

「俺は池沢さとしと同じ野球チームに入っていたからマンガには詳しいんだ!」とその人は豪語しました…

「?」…有名作家さんと同じ野球チームに入っていたからマンガに詳しいのだったらボクは高橋陽一さんに次原隆二さん、なかいま強に…数えきれないですがまあそこはあまり相手にはしないで打ち合わせを続けました。

「女の子が大切だ、女の子を出せ!」最初の打ち合わせで自称マンガに詳しいカメラマンが言った注文はそれだけでした。

一緒に野球をやっただけで描いているマンガ家本人よりマンガに詳しいと思っちゃう人もいるんですね!でもこの雑誌4コママンガを前に書いたボクのアシスタントのK君の友だちH君が描いていたり
技術的な記事の挿絵を陽一さんのところで一緒だったO君が描いていたりと知り合いがたくさん描いています!

もうビックリだらけの打ち合わせです!

ケンジくんクリア!…一生懸命考えたタイトルでした…が!

長くサッカーマンガ「キャプテン翼」のアシスタントをやっていたとはいえサッカーは未経験、学生の頃に授業や遊びでやっていたくらい。サッカー部の友だちが多かったので詳しいつもりでしたけど今のようにネットで情報が入ってくるような時代ではなかったので知識不足といってもおかしくなかったのです。

が、当時のボクなりに一生懸命考えたタイトルが「ケンジ君クリア!」主人公の名前は高津ケンジ、転校生が得意なサッカーを通じて友達を増やしていく、そんなマンガにするつもりであえてシュートとかじゃなくて中盤の底で相手の攻撃から守り抜く!そんなイメージで「クリア!」ってつけて自分では気に入ってました。

ネーム(鉛筆で描いたラフです)が完成し打ち合わせに行くと例のカメラマンは仕事だとかで
来ていなくて編集長と2人で打ち合わせでした。

「女の子を出せって言われたけど設定の紹介をしながらだと今回は難しかったのでそれっぽい女の子をモブにちょっとだけ描いたけどお話には登場させられませんでした」と編集長に言ったらOKをもらいそのままペン入れに入りました。

完成した原稿を渡して数週、いよいよ創刊です!献本を待ちきれず創刊号は発売日に買ってきて
まず自分のマンガのページを広げてみました…

そこにあったのは…

タケシ君、クリア!…えっ?

小学生を主人公にしたサッカー漫画って少年サッカー漫画の王道です。張り切って描かせてもらったのですが…

そしてこれが僕の描いたマンガ第1話です…えっ?

何とタイトルが「タケシ君、クリア!」…えっ?ボクが考えたタイトルは「ケンジ君クリア!」です。

主人公の名前は高津ケンジだから「ケンジ君」なのですが、慌ててチェックしてみたのですが主人公の名前はそのままケンジ君でした。もともと脇役にも「タケシ」という登場人物はいません。

つまり物語の中で全く登場しない「タケシ君」がタイトルになっていたのです。すぐに編集部に電話したのですが要領をえません、ムリを承知でできる事なら次号でタイトルを「ケンジ君」に直して「間違えました」っていうコメントを入れてもらえたら…と言ってみたのですがあっさり却下。

もちろんタイトルロゴの作り直しなんてお金もかかりますしムリだろうと思っていたのでこちらもすぐに折れて第2案の次回から主人公の名前を「高津タケシ」にして何もなかった事にしてシレっと連載を続けるという案を提示、そう言う事になりました。

誰かが間違えたのは間違いないのですが…今思うと間違えた可能性のあるのはたった一人、編集長だけです。ボクよりだいぶ年配の方でしたし頭を下げるのは嫌だったんでしょうね(笑)

ただどうしてそんな間違いをしたのかと考えてみると丁度そのときにある事件が起こっていたのでした。

ビートたけしのバイク事故!

そうなんです、ちょうどそのタイトルロゴを作っている頃にあの大事件が起こっていたのです。つまりタイトルを指定してデザイナーに発注するときにビートたけしの事故のニュースをきいて「ケンジ君クリア!」がいつの間にか「タケシ君クリア!」になってしまったのではないかと(笑)

あくまでもボクの想像ですが…

だからこういうイラストってもっと年上の20歳前後の人をターゲットにしてるとしか思えなかったのですが…やはり売り上げは?

そしてこれが第2号の表紙です…2号にして

大揉めの第2話打ち合わせは…

そして第2話の打ち合わせ、その時も編集長と2人、当初隔月雑誌という事だったので余裕をもって話すことができたのですがマンガ2本の人気ではもう1本の方がよかっのですが(流れ星銀河を描いた高橋よしひろさんでした)小学生のアンケートは僕の方が上だったと言ってもらってちょっと満足していました。

そしてネームを作って2度目の2話の打ち合わせ、今回はカメラマンさんも出席して3人での打ち合わせになったのですがなんだか雰囲気が変です。

話をしていると2話はいいとして次の3話で連載終了…打ち切りのような事を言っているのですが
すでにボクに話していてボクも納得しているていで話しています、それもボクの方を見ずにあまり意味のない会話を続けているのでちょっと腹立ってきました。

滅多にというかこの時くらいしか経験がないのですが本当に頭にきて「まるでボクが打ち切りって聞いているように話をしていますけどやり方がおかしいんじゃないですか?」とボクが言うと「あれ?言ってなかったっけ?」なんてとぼけて言って、例のカメラマンはいきなり「俺は女の子を出せって言ったのに何ででてないんだ!」と逆に怒りだしました。

「1話の打ち合わせでネームを見てもらった時にページの関係でだせないとOKをもらってます」「そこに参加してなかったのに今更そんな事言う資格はないですよ」と言うと黙ってしまったのでその後は編集長を相手に話を進め2話はこれでOK,3話で終わらせるという事に決めて高田馬場の打ち合わせ場所を後にしました。

自分では気に入っていた作品だけに残念でした…と思っていたら数日後編集長から電話がかかってきて「すいません、3号どころか2号で廃刊という事に決まってしまいました」と言われました!

何とビックリ栗3号雑誌というのはきいたことがあったのですがそれにも届かない2号で終わってしまう事になりしかもタイトルが1話と2話で違うマンガになってしまったのでした。

もう一度言いますが1話も2話も結構…というかかなり気に入っていた作品だったので今でも残念です!

「ケンジ君クリア!」面白いんだよ…たぶん読んだことがある人はあまり…というかほとんどいないと思いますが(笑)

よく読むとわかるんですがこの第2話は主人公の名前はしれ~っと高津タケシになってます(笑)

そうです、第2話もタイトルは…

ここでしか読めない!ナカガー書き下ろしの「時空探偵マツ・de・DX」はコチラから

時空探偵マツ・de・DX

関連する投稿


KAZU&YASUの原点が復活!「GOAL BASE SHIZUOKA」が静岡のカルチャー交差点に

KAZU&YASUの原点が復活!「GOAL BASE SHIZUOKA」が静岡のカルチャー交差点に

サッカー界のレジェンド、三浦知良選手と兄・泰年氏の少年時代の原点である「サッカーショップ ゴール」発祥の地に、ミュージアム型カルチャースポット「GOAL BASE SHIZUOKA」が2025年11月11日にオープンします。三浦兄弟の軌跡を辿る貴重な展示と、往年の「ゴール」を再現したショップ、カフェが融合。サッカーを軸に、ファッション、アート、若者カルチャーをつなぎ、静岡から新たな文化を発信する「基地(BASE)」を目指します。


【訃報】元サッカー選手、サルヴァトーレ・スキラッチさんが死去。イタリアW杯、ジュビロ磐田などで活躍

【訃報】元サッカー選手、サルヴァトーレ・スキラッチさんが死去。イタリアW杯、ジュビロ磐田などで活躍

「トト」の愛称で親しまれ、1990年のイタリアワールドカップなどで活躍した元サッカー選手、サルヴァトーレ・スキラッチさんが18日、結腸癌のためイタリア・パレルモの病院で亡くなっていたことが明らかとなりました。59歳でした。


天才・小野伸二が引退。本人も「怪我がなければ…」というフィリピン戦で負った大怪我とは?

天才・小野伸二が引退。本人も「怪我がなければ…」というフィリピン戦で負った大怪我とは?

サッカー元日本代表で北海道コンサドーレ札幌のMF・小野伸二(44)が3日、明治安田生命J1の最終節・浦和レッドダイヤモンズ戦で、現役ラストマッチを迎ました。


とにかく明るい丸山桂里奈   数々の栄光と失敗、おもしろエピソード

とにかく明るい丸山桂里奈 数々の栄光と失敗、おもしろエピソード

よく「何にも考えてなさそう」「何も悩みがなさそう」「なんでそんなに明るいの?」といわれる丸山桂里奈だが、決してサッカー人生なにもかもがうまくいったわけではなく、どちらかというと苦労人。だけど明るい理由は「いつかきっと笑ってサッカーをする日が来る。その日のために・・・・」という気持ちだった。


元日本代表MF・小野伸二(44)が今季限りでの現役引退を発表。フランスW杯、ワールドユースなどで活躍した“天才”

元日本代表MF・小野伸二(44)が今季限りでの現役引退を発表。フランスW杯、ワールドユースなどで活躍した“天才”

J1リーグの北海道コンサドーレ札幌に所属する元日本代表MF・小野伸二(44)がこのたび、自身のインスタグラムにて今季限りでの現役引退を表明しました。


最新の投稿


プロレス界の歴史が動く今こそ読むべき一冊! 『ようこそ、プロレスの世界へ 棚橋弘至のプロレス観戦入門』2025年12月18日(木)発売!

プロレス界の歴史が動く今こそ読むべき一冊! 『ようこそ、プロレスの世界へ 棚橋弘至のプロレス観戦入門』2025年12月18日(木)発売!

新日本プロレスの“100年に一人の逸材”棚橋弘至氏による著書『ようこそ、プロレスの世界へ 棚橋弘至のプロレス観戦入門』が2025年12月18日にKADOKAWAより発売されます。引退が迫る棚橋氏が、26年の現役生活で培った視点から、プロレスの魅力、技の奥義、名勝負の裏側を徹底解説。ビギナーの素朴な疑問にも明快に答え、プロレス観戦をさらに面白くする「令和の観戦バイブル」です。


ウルトラふろく200点以上を一挙収録!『学年誌 ウルトラふろく大全』発売

ウルトラふろく200点以上を一挙収録!『学年誌 ウルトラふろく大全』発売

小学館クリエイティブは、ウルトラマンシリーズ60周年、『小学一年生』100周年の節目に『学年誌 ウルトラふろく大全』を11月28日に発売しました。『ウルトラQ』から『ウルトラマン80』までの学年誌・幼児誌のウルトラふろく200点以上を網羅的に掲載。組み立て済み写真や当時の記事も収録し、ふろく全盛時代の熱気を再現します。特典として、1970年の人気ふろく「ウルトラかいじゅう大パノラマ」を復刻し同梱。


伝説のプロレス団体 UWF40周年記念イベント“無限大記念日”開催!

伝説のプロレス団体 UWF40周年記念イベント“無限大記念日”開催!

伝説のプロレス団体『UWF(ユニバーサル・レスリング・フェデレーション)』が、設立40周年を記念し、特別イベント「無限大記念日」を書泉ブックタワー(東京・秋葉原)にて開催します(2025年12月24日~2026年1月12日)。第1次UWFの貴重な試合映像や控室、オフショットなど、4,000枚以上のアーカイブから厳選された写真が展示されます。復刻グッズや開催記念商品も販売され、当時の熱狂が蘇ります。


グラニフ×『幽☆遊☆白書』初コラボ実現!幽助、蔵馬、飛影など全21アイテム登場

グラニフ×『幽☆遊☆白書』初コラボ実現!幽助、蔵馬、飛影など全21アイテム登場

株式会社グラニフは、TVアニメ『幽☆遊☆白書』との初コラボレーションアイテム全21種類を、2025年12月2日(火)より国内店舗および公式オンラインストアで販売開始します。主人公の浦飯幽助をはじめ、桑原、蔵馬、飛影のメインキャラクターに加え、戸愚呂、コエンマなど欠かせないキャラクターをデザイン。11月26日より先行予約も開始され、ファン必見のラインナップです。


全長20cmの迫力!1/18スケール『国産名車コレクション』創刊

全長20cmの迫力!1/18スケール『国産名車コレクション』創刊

アシェット・コレクションズ・ジャパンは、隔週刊『1/18 エクストラスケール 国産名車コレクション』を2026年1月7日に創刊します。全長約20cm、1/18スケールのダイキャスト製で、日本の自動車史を彩る名車を精巧に再現。ボディラインやエンジンルーム、インパネなどの細部ディテールにこだわった「エクストラ」なコレクション体験を提供し、マガジンでは名車の開発秘話や技術を深掘りします。