J‐POPの巨星・山下達郎の原点『シュガー・ベイブ』
J‐POP史上、最高の男性シンガーソングライターは誰か?
このような議論が交わされると、必ずといっていいほど、槇原敬之、桑田佳祐、玉置浩二、さだまさしらと共に名前が挙がるミュージシャンといえば、山下達郎です。
現在御年64歳。アメリカンポップス・ロックに対する深い造詣と、ボーカルはもちろん、バックコーラス・コンピューターの打ち込み・パーカッションなど、全て一人でこなす音への追及により、これまでに『クリスマス・イブ』『RIDE ON TIME』『高気圧ガール』『さよなら夏の日』『アトムの子』といった数多くの名曲を生み出してきた、ご存じ日本音楽界の巨星です。

山下達郎
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そんな山下達郎の原点となったのが、今から約40年前に活躍した伝説のインディーズバンド『シュガー・ベイブ』です。 女性シンガーソングライターの草分け的存在・大貫妙子も所属していた同グループの活動期間は、1973年~1976年のわずか3年余り。アルバムは1枚しか出していませんし、決してセールス的に成功したわけでもありません。
しかし、山下と大貫が後年ソロ・アーティストとして売れたこと、そして何より、年月を経ても色あせない楽曲の魅力もあって、唯一のアルバム『Songs』は1975年の発売以来、一度も廃盤にならず幾度となく再発売され、2015年には『SONGS -40th Anniversary Ultimate Edition-』というデジタルリマスター版もリリースされています。

SONGS(シュガー・ベイブ)
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シュガー・ベイブが登場した時は、フォークソングの全盛期だった
繰り返しますが、シュガー・ベイブは、活動期間中に売れたグループではありません。彼らがデビューした当時、若者音楽の主流といえば、フォークソングであり、 ガロの『学生街の喫茶店』やかぐや姫の『神田川』などがヒットしていた時期でした。
また、フォークソングから派生して、吉田拓郎・荒井由実などが新しい手触りの音楽「ニューミュージック」と呼ばれる楽曲を発表していましたが、そこにも区別されない異端な存在であり、『はっぴいえんど』同様、アングラなバンドとして一部学生に認知されていました。

学生街の喫茶店(GARO)
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分厚いコーラスワークと複雑なコード進行が画期的だった
■村松邦男 ボーカル・ギター・コーラス
■大貫妙子 ボーカル・キーボード・コーラス
■鰐川己久男 ベース・コーラス
■山下達郎 ボーカル・ギター・キーボード・コーラス
■野口明彦 ドラムス
同バンドにおいて、もっとも多くの楽曲を作曲し、ほぼすべてのアレンジに関わったのは、やはり、山下達郎でした。
山下といえば、熱心なドゥーワップ&アカペラのフォロワーとしても有名。2000年代前半に『ハモネプ』が流行ったときなどは、自身のライブにおけるトークパートで「あんなもん昔からあるし、俺でもできる!」といって、見事なボイスパーカッションを披露していたものです。
そんなアカペラ好きな山下の嗜好もあってか、シュガー・ベイブでは、分厚いコーラスワークが多用されており、そのハーモニーと複雑なコード進行のメロディが絶妙に絡み合う彼の手掛けた楽曲は、いまだに多くの人を魅了してやみません。

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長きに渡って愛され続ける名曲たち
SHOW
シュガー・ベイブ初のワンマンコンサートにおける、オープニングナンバー用にと山下が書き上げた楽曲。アルバム『SONGS』においても、第1曲名に指定されている同曲は、日テレで驚異的な人気を誇った深夜番組『DAISUKI!』のオープニングテーマ&CM前のアイキャッチ用BGMとして知られています。
DOWN TOWN
シングルカットもされた代表曲。この曲が一躍有名になったのは、フジテレビ系のバラエティ『オレたちひょうきん族』のエンディングテーマとしてEPOのカバー・バージョンが使用されてから。
今日はなんだか
こちらも、伊藤と山下の合作。山下の伸びのある歌声と高音のシャウトが、ソウルフルで気持ちの良い1曲です。10年ほど前にフジテレビの音楽&トークバラエティ『堂本兄弟』で、aikoがカバーしたバージョンもなかなか。
いつも通り
大貫妙子が作詞作曲をつとめた楽曲であり、シングル『DOWN TOWN』のB面曲。シティ・ポップの名曲として知られ、都会の華やいだ雰囲気を弾むように歌っている『DOWN TOWN』とは対照的に、その裏通りから街のにぎわいを静かに見つめているような、しっとりとしたバラードナンバーになっています。
夏の終わりに
山下がプロのミュージシャンになってはじめてつくった楽曲。「つるべ落としの」「めくるめく」といった古風な言語を違和感なく音にのせる、彼のワードドロッピングのセンスに溢れた1曲です。
このように、後世に歌い継がれる名曲を残しながらも、41年前に解散してしまったシュガー・ベイブ。今となってはJ-POPの先駆けとして、はっぴいえんどと共に再評価されている同グループですが、これまでに一度も再結成されていません。メンバー同士の交流は今もあるようなので、いつの日か再集結して、あの洗練されたコーラスワークを聞かせてもらいたいものです。
(こじへい)