カール・ルイス「以外」で100m走で輝いた選手、90年代の世界記録上位5選+日本人最速!

カール・ルイス「以外」で100m走で輝いた選手、90年代の世界記録上位5選+日本人最速!

80年代から90年代前半にかけて、”史上最速の男”はアメリカの「カール・ルイス」であった。そのルイス「以外」にどんなスプリンターが居たかを振り返ってみたい。”20世紀最速の男”は誰だったか思い出して欲しい。


80年代から90年代前半にかけて、”史上最速の男”はアメリカの「カール・ルイス」であった。
実際に記録にも記憶にも残る選手で、21世紀に入り、アサファ・パウエルやウサイン・ボルトなどのジャマイカ勢が台頭してくるまでは、長らく100m走の代名詞的存在であった。

本稿では、そのルイス「以外」にどんなスプリンターが居たかを振り返ってみたい。
偉大なルイスの記録を大幅に超えた記録が続出。”20世紀最速の男”は誰だったか思い出して欲しい。

カール・ルイス

《第5位》リンフォード・クリスティ(1993年8月15日)【9秒87】

1960年4月2日生まれ。国籍はイギリス(出身はジャマイカ。7歳のときにイギリスに移住)。
身長:189cm、体重:84kg。

《自己ベスト》
100m:9秒87 (1993年)
200m:20秒09 (1988年)

リンフォード・クリスティ

1993年にドイツ・シュトゥットガルトで開かれた世界陸上で記録。
2位のアンドレ・ケーソン(アメリカ)は9秒92、デニス・ミッチェル(アメリカ)は9秒99だった。
このレースにはカール・ルイスも出場しており、記録は10秒02の4位。

クリスティが1位でゴールを駆け抜けると、実況は興奮気味に「ついにルイスの壁を破りました!リンフォード・クリスティ!」と叫ぶように伝えている。続けて「ルイスの神話が終わりを告げました!」とも発している。
ルイスは大会前に32歳となり、”カール・ルイス時代”の終焉がささやかれ始めた時期でもあった。

シュトゥットガルト世界陸上のリンフォード・クリスティ

《トリビア》

1988年のソウルオリンピックで、ベン・ジョンソンとカール・ルイスの直接対決が大注目となった。そのレースでクリスティは3位でゴールしている(後にベン・ジョンソンが失格となり、銀メダルへと繰り上げ)。

ベン・ジョンソン

《第4位》アト・ボルドン(1998年4月19日)【9秒86】

1973年12月30日生まれ。国籍はトリニダード・トバゴ。
身長:175cm、体重:75kg。

《自己ベスト》
100m : 9秒86 (1998年)
200m : 19秒77 (1997年)

アト・ボルドン

10代の頃にアメリカに移り住み、サッカー選手となっていたが、90年代前半にスプリントの才能を買われ、陸上の世界に。

1992年バルセロナオリンピックではトリニダード・トバゴ代表に選出され、その後の世界ジュニア選手権では100mと200mで優勝を果たしている。

ボルドンの100mの自己ベストは、1998年と1999年に集中している。1998年4月19日に風速+1.8の中、9秒86を出し、その後6月17日、1999年6月16日、1999年7月2日にも同タイムを出している。

《トリビア》

100mでは9秒台を28回も記録している。歴代で5位である。
また、オリンピックで4つのメダルを獲得し、「トバゴの弾丸」の異名を持っている。

《第3位》リロイ・バレル(1994年7月6日)【9秒85】

1967年2月21日生まれ。国籍はアメリカ。
身長:183cm、体重:82kg。

《自己ベスト》
100m : 9秒85(1994年)
200m : 20秒12(1992年)

※画像は「TVガイド 関東版 1991/8/17 - 8/23」表紙:カール・ルイス+リロイ・バレル [世界陸上]

リロイ・バレル(右)とカール・ルイス(左)

2度も世界記録を出している。
年齢はカール・ルイスよりも6歳下だが、”カール・ルイス時代”とバレルの全盛期はほぼ重なっており、90年代前半を代表するスプリンターとして知られている。

世界記録を初めて出したのは1991年6月14日の9秒90。しかし、この記録は約2ヶ月後の世界陸上100m決勝において、カール・ルイスが9秒86を出した事で破られている。
なお、この時はバレルも自己ベスト(当時)の9秒88をマークし、銀メダルを獲得している。

1994年にアスレティッシマで9秒85を記録し2度目の世界記録を達成した。

カール・ルイスが持っていた9秒86の世界記録を抜いた直後のリロイ・バレル

《トリビア》

《第2位》ドノバン・ベイリー(1996年7月27日)【9秒84】

1967年12月16日生まれ。国籍はカナダ。
身長:183cm、体重:83kg。

《自己ベスト》
100m : 9秒84(1996年)
200m : 20秒42(1998年)

ドノバン・ベイリー(1997年)

1996年アトランタオリンピックの100m決勝で、9秒84の世界新記録を出して優勝。
しかもスタートの反応時間は一番遅かったにも関わらずである。
序盤は下位に位置していたが、レース中盤から猛烈な追い上げを見せ、最後はトップでゴールした。

さらにこの記録は1968年に100mに電動計時が導入されて以来、初めてアメリカ人選手以外による世界記録更新という快挙でもあった。

また、世界チャンピオン、五輪チャンピオン、世界記録保持者の3つのタイトルを独占。これは、カール・ルイスに次いで2人目の達成となった。

中盤からトップ集団を猛追、最後は力強い走りで優勝したベイリー

《トリビア》

200mと400mの偉大なスプリンターであるマイケル・ジョンソン。90年代の短距離界をカール・ルイスと共に牽引し、1996年には19秒32の世界新記録を出したアメリカのスーパースターがいた。

その彼とベイリーは1997年に「世界最速決定戦」として銘打たれた「150メートル走」対決に出場した。
当時短距離の世界記録保持者同士の対決とあって、大変注目されたが、レース中盤にジョンソンが脚を故障してしまい、ベイリーの圧勝に終わる。レース後に歓喜するベイリーとは対照的に憮然とした表情のジョンソンが印象的だった。

マイケル・ジョンソン

《第2位》ブルニー・スリン(1999年8月22日)【9秒84】

1967年7月12日生まれ。国籍はカナダ(出身はハイチ・カパイシャン。1975年にカナダに引っ越した。)。
身長:180cm、体重:86kg。

《自己ベスト》
60m:6秒45(1993年、世界歴代6位)
100m:9秒84(1999年)
200m:20秒21(1999年)
走幅跳:8m03(1987年)
三段跳:15m96(1986年)

ブルニー・スリン

1999年の世界選手権の100mで、9秒84という好記録で銀メダルを獲得した。この記録は少し前に破られたドノバン・ベイリーの前世界記録に並ぶタイムであった。

書籍「Bruny Surin: Le lion tranquille (French)」

《トリビア》

走幅跳にもエントリーしており、1990年のコモンウェルスゲームズでは7位に入るなどしている。

1991年の世界選手権では、カール・ルイスとリロイ・バレルの対決が話題となっていた。スリンは決勝で8位ではあったが、入賞を果たしている。

また、リレーでも活躍し、1996年のアトランタオリンピック4×100mリレーの決勝では、アメリカの記録を約0秒5上回り、金メダルを獲得した。

《第1位》モーリス・グリーン(1999年6月16日)【9秒79】

1974年7月23日生まれ。国籍はアメリカ。
身長:176cm、体重:80kg。

《自己ベスト》
100m:9秒79(1999年)
200m:19秒86(1997年)

モーリス・グリーン

20代前半は記録が伸びず、ハンバーガーショップの店員・倉庫番・競争犬の世話などのアルバイトで生計を立てるという苦しい選手生活を送っていたグリーン。

アトランタオリンピックでのドノバン・ベイリーの世界新記録での優勝を目の当たりにし、コーチを変えるなどし、トレーニングを積んでいった。
無名のまま出場した1997年アテネ世界選手権では大本命と目された前回のチャンピオン、ドノバン・ベイリーを序盤からリードし、9秒86の大会タイ記録で優勝。大きな注目を浴びた。

そして、1999年6月16日に行われたアテネ国際グランプリ100mにおいて、当時の世界記録9秒84を、一気に100分の5秒も短縮する9秒79という驚異的な世界新記録を樹立し、人類で初めて100mを公式に9秒7台で走った男となり、20世紀における史上最速の男となった。

本来のレースパターンは先行逃げ切り型だが、後半さらに加速し、9秒79の世界新記録で駆け抜けたモーリス・グリーン

《トリビア》

100mでは9秒台を51回記録しており(その他にローリングスタート、風速計故障、それぞれ1回ずつ9秒台で走っている)、アサファ・パウエルに次ぐ史上2位の記録である。

《日本人》伊東浩司(1998年)【10秒00】

1970年1月29日生まれ。兵庫県神戸市出身。
身長:180cm。

《自己ベスト》
100m:10秒00 (1998年)
200m:20秒16 (1998年)
400m:46秒11 (1996年)

※画像は著書「疾風になりたい―「9秒台」に触れた男の伝言」

伊東浩司

1998年12月、バンコクアジア大会の男子100m、準決勝で当時のアジア記録ともなる日本新記録の10秒00を出した。

この際、速報タイムでは9秒99で、ついにアジア人・非ネグロイド初の9秒台かと思われたが、準決勝だったため最後は少し流しており、期待された記録は達成できなかった。

非アフリカ系選手で当時の最高記録となる10秒00をマークしたのは、1984年のポーランドのマリアン・ヴォロニンに続き2人目であった。その年の年末、紅白歌合戦にゲスト出演するまでに知名度が上がり「アジアの風」と呼ばれた。

9秒99でゴールしたかと思われたが、幻に終わった・・・

《トリビア》

以上、90年代の100m走の記録をまとめた!
20世紀最強だったアメリカ陸上界の復権はまたあるのだろうか。

リンフォード・クリスティやベン・ジョンソンは元々ジャマイカ出身。昔から才能の宝庫だったであろうジャマイカ。
これからどんなルーツを持ったスプリンターが、どの国から出てくるか、期待を持って注目したい。

オススメの特集記事

永遠の憧れはカール・ルイス!1995年、日本人で初めて100m9秒台を体感した男「伊藤喜剛」!! - Middle Edge(ミドルエッジ)

幻の金メダリスト『ベン・ジョンソン』ドーピング事件の陰謀説と引退後の活動について - Middle Edge(ミドルエッジ)

カール君・コカール君・ジョンソン君など『ビートたけしのスポーツ大将』の名物人形を振り返る! - Middle Edge(ミドルエッジ)

関連する投稿


吉田沙保里  強すぎてモテない霊長類最強の肉食系女子の霊長類最強のタックル その奥義は「勇気」

吉田沙保里 強すぎてモテない霊長類最強の肉食系女子の霊長類最強のタックル その奥義は「勇気」

公式戦333勝15敗。その中には206連勝を含み、勝率95%。 世界選手権13回優勝、オリンピック金メダル3コ(3連覇)+銀メダル1コ、ギネス世界記録認定、国民栄誉賞、強すぎてモテない霊長類最強の肉食系女子。


レトロゲーム配信サービス「プロジェクトEGG」より『トラぶるCHASER 第1話』『3Dテニス』が配信スタート!!

レトロゲーム配信サービス「プロジェクトEGG」より『トラぶるCHASER 第1話』『3Dテニス』が配信スタート!!

レトロゲーム関連の復刻・配信ビジネスなどを行うD4エンタープライズが運営するレトロゲーム配信サービス「プロジェクトEGG」にて、新規コンテンツ『トラぶるCHASER 第1話 トラブルは空から未来から(PC-9801版)』『3Dテニス(MSX版)』の配信がスタートしました。


抜群のスタイルで💦世の脚光を浴びた『広田恵子』現在は?!

抜群のスタイルで💦世の脚光を浴びた『広田恵子』現在は?!

高校時代からモデル活動を始め1986年に「カネボウ・スイムウエアイメージモデル」として脚光を浴びた広田恵子さん。現在は家族で〇〇を組んで活動している・・・。


「おかあさんといっしょ」の『にこにこ、ぷん』が令和に復活!公式YouTubeチャンネル開設&グッズ展開決定!!

「おかあさんといっしょ」の『にこにこ、ぷん』が令和に復活!公式YouTubeチャンネル開設&グッズ展開決定!!

NHK「おかあさんといっしょ」の人形劇コーナーとして1982年から1992年までの10年間にわたり放送され、累計2,000話以上の物語が制作された人気シリーズ『にこにこ、ぷん』が、令和の時代に新たなかたちで帰ってきます。


「世界・ふしぎ発見!」のミステリーハンターも務めた女優『ジュリー・ドレフュス』!!

「世界・ふしぎ発見!」のミステリーハンターも務めた女優『ジュリー・ドレフュス』!!

1991年3月にミステリーハンターとして登場されると出演回数8回で、出演回数ランキング33位となるジュリー・ドレフュス さん。2013年出演のドラマ「老舗旅館の女将日記」を最後にメディアで見かけなくなり気になりまとめてみました。


最新の投稿


世界が熱狂!葛飾商店街×『キャプテン翼』コラボ「シーズン2」開催!新エリア&限定メニューで街を駆け抜けろ!

世界が熱狂!葛飾商店街×『キャプテン翼』コラボ「シーズン2」開催!新エリア&限定メニューで街を駆け抜けろ!

葛飾区商店街連合会は、2025年10月10日より『キャプテン翼』とのコラボイベント「シーズン2」を亀有・金町・柴又エリアで開催。キャラクターをイメージした限定メニューやスタンプラリーを展開し、聖地巡礼と地域活性化を促進します。


キン肉マン愛が英語力に!超人たちの名言・名場面で学ぶ『キン肉マン超人英会話』発売

キン肉マン愛が英語力に!超人たちの名言・名場面で学ぶ『キン肉マン超人英会話』発売

人気アニメ『キン肉マン』の「完璧超人始祖編」の名言・名場面を題材にした英会話学習書『キン肉マン超人英会話』が、2025年11月29日(土)にKADOKAWAより発売されます。超人たちの熱い言葉を通じて、楽しみながら実用的な英語表現をインプットできます。TOEIC満点保持者やプロレスキャスターなど、豪華プロ集団が監修・翻訳を担当した、ファン必携の英語学習本です。


【カウントダウン】あと2日!古舘伊知郎&友近「昭和100年スーパーソングブックショウ」いよいよ開催迫る!豪華ゲスト集結の東京国際フォーラムは「昭和愛」で熱狂へ!

【カウントダウン】あと2日!古舘伊知郎&友近「昭和100年スーパーソングブックショウ」いよいよ開催迫る!豪華ゲスト集結の東京国際フォーラムは「昭和愛」で熱狂へ!

開催直前!TOKYO MX開局30周年記念「昭和100年スーパーソングブックショウ」が10月16日に迫る。古舘伊知郎と友近がMC、豪華ゲストと共に贈る一夜限りの昭和ベストヒットに期待高まる!


ギタリスト 鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブを東阪ビルボードで開催!

ギタリスト 鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブを東阪ビルボードで開催!

ギタリスト 鈴木茂が、『鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブ~Autumn Season~』を11月13日にビルボードライブ大阪、16日にビルボードライブ東京にて開催する。今回は、1975年にリリースされた1stソロアルバム「BAND WAGON」の発売50周年を記念したプレミアム公演となる。


【1965年生まれ】2025年還暦を迎える意外な海外アーティストたち!

【1965年生まれ】2025年還暦を迎える意外な海外アーティストたち!

2025年(令和7年)は、1965年(昭和40年)生まれの人が還暦を迎える年です。ついに、昭和40年代生まれが還暦を迎える時代になりました。今の60歳は若いとはと言っても、数字だけ見るともうすぐ高齢者。今回は、2025年に還暦を迎える7名の人気海外アーティストをご紹介します。