モッズ
「さらば青春の光」という1979年に公開されたイギリス映画があります。モッズの、モッズを愛する者たちの、バイブルともアンセムともいえる映画です。
因みにモッズとは、1950年代後半から1960年代中頃にかけて、ロンドン近辺の若い労働者の間で流行した音楽やファッションをベースとしたライフスタイルを持つ者のことです。
モッズファッションの特徴は、髪を下ろした短髪、細身の三つボタンスーツ、ミリタリーパーカーに多数のミラーで装飾されたランブレッタやベスパなどのスクーターを愛用していました。

「さらば青春の光」は60年代のモッズを主人公にした物語です。この映画を観るとモッズたちがどのような生活をしていたのかがよく分かります。
四重人格
「さらば青春の光」には原作があります。1973年に発表されたザ・フーの「四重人格」というアルバムがそれです。

四重人格
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「四重人格」はザ・フーにとって6枚目のオリジナル・アルバムで、「トミー」以来のロック・オペラ・アルバムでもあります。
オペラの内容は1960年代中期のロンドンが物語の舞台となっており、モッズ少年のジミーの多重人格と精神的な葛藤を軸に展開されるのですが、ジミーの四重人格は、それぞれザ・フーのメンバー4人の人格を投影したものとなっています。
アルバム・ジャケットがとてもカッコいいですね。ジミーが乗っているスクーターのバックミラーにはザ・フーのメンバーの顔が映りこんでいます。
また、このアルバムにはストーリーに沿った写真集がついています。
さらば青春の光
原題はアルバムと同様に「Quadrophenia」なので、映画のタイトルとしても「四重人格」で良かったのでしょうが、きっと映画のタイトルとしては弱いと判断されたのでしょうね。

さらば青春の光
ポスターに付けられているコピーをみると、意味が分かるようでいで分からないというか、やぶれかぶれなんだという気持ちだけが伝わってくるものとなっていますね。映画もまさにそんな感じです。
意味は不明瞭ではありますが、このコピーはむしろ不明瞭ということで「さらば青春の光」という映画の本質を言い当てているように思います。

さらば青春の光
この映画の魅力のひとつは個性的な登場人物ですが、特に主役のジミーを演じたフィル・ダニエルズのカッコよさは格別です!

ジミー・クーパー
そしてマドンナ役のレズリー・アッシュ。彼女の可愛さにはジミーでなくてもきっとノックアウトされてしまいますよ。美人です。

ステフとジミー
モッズのあこがれの存在であるエース役として当時はポリスとしてまだ駆け出しだったスティングや、モンキーという女の子役でトーヤ・ウィルコックス(後年ロバート・フリップと結婚する)などミュージシャンが出演していますので、音楽ファンは要チェックですよ。

エースとジミー
あらすじ
1964年ロンドン、モッズの青年ジミー・クーパーは広告会社の郵便室係として働いていますが、毎日の退屈な仕事に嫌気がさし、日々モッズ仲間と覚せい剤やパーティーに明け暮れていました。

銀行休業日の週末のこと、モッズたちは海沿いの町ブライトンへ向かいます。各地から多くのモッズたちが集まり、ジミーは自分がモッズであることの誇りと喜びを体感するのですが…。

しかし、ブライトンでは、ライバル組織のロッカーズとの対立が表面化し、警察が出動する大騒ぎとなります。

その大騒ぎのさなか、憧れのステフとジミーは初めて結ばれます。

しかし、ジミーはエースらとともに逮捕、拘置されてしまいます。
ロンドンに戻るとジミーの環境は一変します。母親に麻薬を見つけられ家を追い出され仕事もクビ、愛するステフは友人にとられ、愛用のスクーターは事故で大破してしまします。
失意のジミーは、何もかもが光り輝いて見えたブライトンへ向かいます。

再び訪れたブライトンでジミーは現実を目にします。失望したジミーは、止めてあったエースのスクーターを盗んでビーチー岬へと向かうのでした。

ちなみに、ビーチー岬はイングランド・イーストボーンの町の近くにあり、自殺の名所です。
その後
この映画は、公開当時モッズのリバイバル・ブームを巻き起こしました。日本でもこの頃からモッズ・コートが定着してきたほどですが、イギリスでの影響は日本の比ではなかったようです。
イギリスでは多くのミュージシャンのお気に入りの映画となっているようですが、その中でもブラーはかなりリスペクトしているようで、彼らの代表作である「パークライフ」に主演を務めたフィル・ダニエルズがナレーションとして参加しています。
同曲のプロモーション・ビデオにも参加していて、話題になりました。
どうしょうもない、やるせなさ満載の1本です。決して元気とか勇気とかが湧いてくる映画ではありませが、イギリスの雰囲気にどっぷりと浸ることが出来ます。