大衆車からの脱却を図ったトラッド・サニー

大衆車からの脱却を図ったトラッド・サニー

ラティオの販売終了で、空席となった日産の小型セダン。その座と言えば、かつてはサニーが君臨していました。特に1985年に登場した6代目は、品質やデザインにおいて、その後の方向性に大きな影響を残しました。


「大衆車だから」を排除した高品質設計

日産サニーは1966年に発売された小型セダンで、日本の販売台数の首位を巡って、長年トヨタ・カローラと競い合ってきました。そのため、このカテゴリーは「大衆車」と呼ばれてきました。

サニーのなかでエポックとなったのが、1985年9月発売の6代目、B12型です。このモデルは「トラッド・サニー」の愛称が付けられました。特筆すべきはボディ品質です。それまではボディ剛性などの品質面で、「大衆車ならこんなもの」という暗黙の了解が設計側にもユーザー側にもありましたが、6代目では高張力鋼板、亜鉛ニッケル合金メッキを用いた防錆鋼板を採用し、ボディ剛性が大幅に高まりました。サニーの大幅な品質向上は、1987年にフルモデルチェンジをした6代目カローラにも大きな影響を与えたと言われています。

エンジンはいずれも直列4気筒で、1500cc、1300ccのガソリンエンジンのほか、1700ccディーゼルを用意。駆動方式は先代に続いてFF方式となりました。その後、1600ccツインカムエンジンやフルオートフルタイム4WDが加わり、バリエーションが充実していきました。

デザイン面では、角張ったデザインの3BOXセダンが特徴で、フロントグリルにはSUNNYの「S」をモチーフにしたシンボルマークが入れられました。ボディ剛性の大幅な向上やボクシーなデザインには、1984年から日産でライセンス生産をしていたフォルクスワーゲン・サンタナの影響が大きかったと言われています。

四角いボクシーなデザインは、「トラッド・サニー」のキャッチコピーによく似合っていた。

1985年に発売された6代目。

Nissan Sunny Sedan (B12) 1985–87 wallpapers

クルマのしっかり感がデザインからも伝わり、従来の大衆車のイメージを覆す上質なものとなった。

前期型のリアデザイン。

Nissan Sunny Sedan (B12) 1985–87 wallpapers

上級グレードには、全席パワーウインドーも装備され、バブル経済の入り口とともに、大衆車も大きな転換期となった。

B15型ターボモデルの内装。

Nissan Sunny Sedan (B12) 1985–87 wallpapers

大規模なMC(モデルチェンジ)でサニー顔が誕生

6代目サニーは、1987年9月にマイナーチェンジを受けました。前期型は、月間販売ランキングで首位に立つほど売れていましたが、このマイナーチェンジで大規模なデザイン変更を受けました。フロントでは、バンパーに付いていたウインカーがバンパー上に移されました。リアデザインでは、ナンバープレートがバンパー上から下に移され、コンビネーションランプの形状も大きく変わりました。これが、いわゆる「サニー顔」の始まりとなります。

メカニズム面では、E15型から新開発のGA15型(1500ccエンジンの場合)となり、主力エンジンの馬力は73PSから85PSに大幅に引き上げられました。サニーが元気だった時代の、意欲的なマイナーチェンジでした。

なお、6代目では4ドアセダンのほか、3ドアハッチバック、ステーションワゴンのカリフォルニア、3ドアクーペのRZ-1の4タイプのバリエーションがありました。

写真はツインカム1600ccエンジン搭載車。

マイナーチェンジでいわゆる「サニー顔」となった後期型。

Nissan Sunny (B12) 1987–90 wallpapers

マイナーチェンジで、リアデザインも大きく変更された。

Nissan Sunny (B12) 1987–90 images

キープコンセプトをした7代目

1990年1月、サニーはフルモデルチェンジをして7代目・B13型となります。デザインは角に丸味があるものの完全なキープコンセプトでしたが、品質はいっそう高まりました。これにより「サニー顔」は2世代目へと突入しました。

バリエーションはセダンのみとなり、3ドアはNXクーペとして独立しました。また、ステーションワゴンのカリフォルニアは、サニーではなくADバンをベースとして生まれ変わりましたが、フロントデザインはサニー顔でした。

メカニズム面では、エンジンは引き続きGA型ですが、ツインカム化されました。当初のラインナップは1800cc、1600cc、1500cc、1300cc、1700ccディーゼルと多様でした。

1992年にマイナーチェンジを受け、フロントグリルのSマークは、日産のCIマークに変更されました。B13型は1994年1月にフルモデルチェンジを受けますが、メキシコでは「ツル」の車名でつい先日、2017年5月まで製造されていました。

完全なキープコンセプトだった。

1990年にフルモデルチェンジした7代目

Nissan Sunny Sedan (N14) 1990–95 photos

1500cc・1600ccのスーパーサルーンでも「GT-Sルック」としてオプションで選択でき、人気を集めた。

1800ccに設定されたGT-Sは、エアロバンパーやシルスポイラーを採用。

Nissan Sunny GTS (B13) 1991–92 pictures

ステーションワゴンのカリフォルニアは、ADバンがベースとなったが、フロントデザインはセダンに合わせられた。

ステーションワゴンのカリフォルニア

Nissan Sunny California (Y10) 1990–96 photos

アメリカのサニーはB11型以降、セントラの名で発売。2ドアセダンのスポーティモデルもあった。

Nissan Sentra SE-R Coupe (B13) 1991–94 photos

メキシコでついこの間まで製造されていた「ツル」。

Photos of Nissan Tsuru 2004

8代目の失敗で9代目は先祖帰り

1994年1月にフルモデルチェンジした8代目・B14型は、サニーユーザーの若返りを図るため、従来のイメージを残しつつも大規模なデザイン変更を受けました。しかし、若年層のセダン離れが進んでいたこともあり、販売実績はよろしくなく、1997年5月のマイナーチェンジで大規模なデザイン変更を受け、B13型を彷彿とさせる角張感を持たせたデザインになりました。

このため、1998年10月にフルモデルチェンジした9代目・B15型では、完全にB13型を踏襲したデザインとなりました。当時の雑誌インタビューでも、デザイナーが作りたいクルマというよりも、「市場を重視して伝統的なサニーユーザーを意識したデザイン」という方針が語られていました。

2002年5月にマイナーチェンジを受け、日産の新しいCIマークを採用するなど、デザイン変更を受けました。そして2004年10月、サニーの国内での新車販売を終了し、長い歴史に幕を下ろしました。

1994年にフルモデルチェンジした8代目は、デザインの若返りを図ったが、販売実績には結びつかなかった。

1994年にフルモデルチェンジした8代目

Nissan Sunny (B14) 1993–99 images

8代目は1997年に大規模なマイナーチェンジを受け、燈火類やバンパーに角張った印象が加えられた。

日産・サニー - Wikipedia

各部の設計は新しいが、デザインはトラッドサニーに先祖返りした。

1998年にフルモデルチェンジした9代目

Images of Nissan Sunny (B15) 1998–2002

キープコンセプトが生産終了の原因?

売れ筋の車種のモデルチェンジは難しく、大胆に変えればユーザーが離れ、キープコンセプトならともに高齢化していくまでです。サニーの場合、B13型でキープコンセプトをしたのが、車名の寿命を早めた原因かもしれません。都合8年間ユーザーを引きずって、B14型のときには潜在ユーザーが離れてしまったのです。

かくいう私は、サニーユーザーでした。初めて免許を取ったとき、我が家のクルマはB12型サニーの後期型。角張っているので非常に運転がしやすく、5速MT車でしたので半クラや坂道発進など、MT操作の基本を鍛えられました。

さらに、このB12型を廃車にしてしまったため、知り合いのつてでB13型を中古で購入し、2年ほど乗っていました。このB13型は解説でも記した通り品質が高く、何よりも電子制御キャブレターの5速MT車でしたので、運転して非常に楽しかったです。

しかし、年頃の青年には「オヤジグルマ」という女子の目線が気になるわけです。特に私が運転しだした頃は、若者はRV、オジサンは大衆車という図式でしたので、学生という身分なので仕方がないのですが、女子を誘いにくいクルマでした。

今になると、B12型もB13型も格好良く、楽しいクルマでした。しかし、それは思い出も加わって今になって感じる印象。サニーの名がなくなってしまったのは残念ですが、B15型を見ればそれもやむなし、と言わざるを得ません。

歴史にタラレバはありませんが、昔のサニーのように、ユーザーをリードするクルマであり続けられれば、今もサニーの車名は残っていたかもしれません。

日本では最後のモデルとなったB15型後期型。

Nissan Sunny (B15) 2002–04 wallpapers

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