青い体験
エロティックコメディというジャンルの映画が1970年代から1980年代にかけてイタリアで爆発的に流行しました。1973年に公開された「青い体験」はその代表作で、内容は少年の初体験ものです。
「青い体験」と聞いただけで、現在40代後半~50代前半の男性であれば印象深いものがあるのではないでしょうか?!
原題は「Malizia」で「悪意」という意味です。好きな女性に対して意地悪をしたくなるという青少年にありがちな感情を上手く言い表したタイトルですね。もっとも「悪意」というタイトルでは日本ではヒットしなかったのではないかと思います。その点、女性へのあこがれ、興味、初体験といったことを「青い体験」という邦題は上手く含んでいますよね。

青い体験
このイメージポスターはよく出来ていますよねぇ。「青い体験」そのものです。美しい年上の女性のパンチラシーンに70年代に青春時代を過ごした男性は心奪われたことでしょう。
「青い体験」はコメディ映画です。リアリティはありませんが、その分笑いながら気楽に楽しむことができます。できますが、それは今の若者もしくは大人に限られます。70年代のティーンエージャー達(男のみ)は、そういうわけにはいきませんでした。
あり得ない話ではありますが、ドキドキ、ハラハラものです。あり得ないと分かってはいるものの、リアリティを感じずにはいられないという、なんとも矛盾した映画なのです。
登場人物
登場人物は限られていますが、皆さんそれぞれに魅力的です。
少年の初体験もののエロティックコメディには美しい女性と可愛らしい少年が必須ですが、「青い体験」もそこのところはしっかりと基本どおりに作られています。
年上の女性役は、ラウラ・アントネッリが演じています。

ラウラ・アントネッリ
この映画はラウラ・アントネッリにつきます。彼女なしには「青い体験」は成り立たなかったのではないかと思えるほど輝いています。「青い体験」をきっかけに注目を集めるようになったラウラ・アントネッリは、1970年代のヨーロッパを代表するセックス・シンボルと言われるようになりました。
相手役を務めたのがアレッサンドロ・モモで、ニーノという主人公の少年です。

アレッサンドロ・モモ
性に目覚めた少年の複雑な心情を上手く表現したアレッサンドロ・モモ。当時はおそらく世界中のティーンエージャー達(男のみ)が共感したと思われる役どころを、役得と妬まれながらも(おそらく)見事に演じ切っています。
アレッサンドロ・モモは、本作で注目を集め「続・青い体験」でもラウラ・アントネッリと再び共演をはたしたのですが、「青い体験」公開の翌年1974年に17歳という若さで交通事故で亡くなっています。
あらすじ
ニーノ(アレッサンドロ・モモ)は両親と兄、弟の5人で暮らしていましたが、母親が急死してしまうところから物語は始まります。
性への好奇心旺盛のニーノは、葬儀の帰り車の中で…
あってもなくてもよいようなシーンですが、冒頭にこのシーンがあるために一気にテンションが上がります。つかみはOKとはまさしくこのことです。
さて、葬儀から戻ってみると、母親が生前に頼んでいたという家政婦のアンジェラ(ラウラ・アントネッリ)が居り、美人で気立てのいい彼女を気に入った一家は彼女を雇い入れます。
一緒に生活することになったアンジェラを父親と長男は口説こうとやっきになり、そんな父と兄の態度を苦々しく思うニーノなのでした。

「青い体験」には本筋とはあまり関係のないエロティックなシーンが出てきます。友達の美人なお姉さんに自転車の乗り方を教えるという場面もそのひとつです。
あってもなくてもよいシーンですが、なくては困る!そういったシーンでもあります。

友達のお姉さんとニーノ
「家族全員が同意すれば」という条件のもと、父親からのプロポーズを受けるアンジェラでしたが、ニーノの妨害にあいます。それが嫉妬心だと看破したアンジェラは、激しい雨の夜に自分の方からニーノを誘うのでした。

ニーノの父親とアンジェラ
翌朝、ニーノは父親とアンジェラの結婚を祝福します。そして結婚式の当日、ニーノはアンジェラに祝福のキスをし、笑顔で「ママ」と呼ぶのでした。
スタッフ

サルヴァトーレ・サンペリ
監督はサルヴァトーレ・サンペリ。「青い体験 」のあと「続・青い体験 」も監督し、その後は「スキャンダル」や「美しき少年/エルネスト」などの話題作でも知られています。残念ながら2009年3月4日、ローマ郊外にある自宅で亡くなりました。
音楽も美しいし、当時日本も含め各国で大ヒットしたのがうなずける脚本も素晴らしいのですが、やはり特筆すべきは撮影のヴィットリオ・ストラーロでしょう。因みに、「青い体験」でもクライマックスの嵐の夜の場面などで見事な腕前を披露していますが、この後「地獄の黙示録」、「レッズ」、「ラストエンペラー」と3度もでアカデミー撮影賞を受賞しています。
今観ると別に過激な表現があるわけではありませんが、当時は観てはいけないものを観るような、罪悪感すら覚えるような、それでも好奇心には勝てないといった、そんな甘酸っぱい映画ですね。