私が以前、ミドルエッジで書いた記事の中に”フィリー・サウンド”についてのものに若干、”ロックンロール”に関して言及したことがある。結果を先に言うならば、”フィリー・サウンド”も”ロックンロール”も元はアメリカの黒人たちが黒人のために、作っている黒人の大衆音楽であった”ブラック・ミュージック”から派生したものなのである。
17世紀にアメリカに宣教徒がやってきて、また、アフリカから奴隷が連れて来られて、ゴスペルとブルースという音楽形態ができる下地ができた。
ゴスペルは教会音楽、ブルースは日々の生活を歌った日常音楽である。これらの音楽は、それぞれに発展してきたが、20世紀に入って、微妙に混ざり合うようになる。
そして、1940年代までに、ブルースとゴスペルを合わせ、しかも、強いビートを持った黒人の音楽が誕生している。その音楽は、当初はレース・ミュージックと言われていたが、1949年に「リズム&ブルース」という名前で呼ばれるようなった。このリズム&ブルースに注目した白人音楽家がそれを真似て、”ロックンロール”というものを生み出し、これが世界的にヒットするようになったのである。
ロックンロール(Rock'n'Roll)とは何か??

ロックンロールな内田裕也
人種差別解消の一助になっと言われる”フィリー・サウンド ”をもう一度、あの人に聞かせたい!! - Middle Edge(ミドルエッジ)
ロックンロールは造語だった?!
ロックンロール(Rock'n'Roll)という言葉自体は、1950年代初頭にラジオDJであったアラン・フリードが考案し、広めた“造語”であった。
ロックンロールの特徴は黒人音楽であるR&Bの均等なエイト・ビート、ブルースの一種であるシャッフル、ジャズの一種であるスウィングなどのリズムに、ブルースのコード進行(AADAEDAEのようなコード進行)や音階(スケール)を応用した楽曲構成になっている。また、それらの特徴に白人音楽カントリー・アンド・ウェスタンの要素を少し掛け合わせたものとされている。
ちなみに、”ロックンロール”とは、もともと黒人たちのスラング「Rockin' Rollin' Wheelin'」からきていて、これはセックスの隠語だったそうです。
”ロックンロール”とロカビリー”の違いって何なの??

アラン・フリード
ロックンロールとよく似た言葉で”ロカビリー”があるが、ロカビリーとロックンロールの境界線は曖昧で、ロックンロール、ロカビリー好きの永遠の課題と言えるかもしれない。エルヴィス・プレスリーが「キング・オブ・ロックンロール」「キング・オブ・ロカビリー」と呼ばれるように、ロックンロールとロカビリーは微妙なところで同義語でもあり、異義語でもあると言える。
厳密に分けるとすれば、白人音楽のカントリー・アンド・ウェスタンの要素が特に強いものを「ロカビリー」、黒人音楽のR&B要素が特に強いものが「ロックンロール」とされている。
ロックンロールの神様3人衆!!
上記に言及したフリードのラジオ番組は黒人は勿論のこと、白人の若者たちからも絶大な支持を集め、またたく間に”ロックンロール”が広まっていったのである。この時、特に人気を集めていたのがチャック・ベリー(Chuck Berry)、リトル・リチャード(Little Rechard)、ファッツ・ドミノ(Fats Domino)であるが、ロックンロールの発明者であり神とまで言われている3人の黒人たちであった。
チャック・ベリー(Chuck Berry)

チャック・ベリー
リトル・リチャード(Little Rechard)

リトル・リチャード
ファッツ・ドミノ(Fats Domino)

ファッツ・ドミノ(Fats Domino)
ロックンロールの終焉
このようにロックンロールの旋風が50年代末まで吹き荒れていたが、何せ50年代のアメリカにはまだまだ人種差別の風潮が色濃く残っていて、1958年頃から白人中産階級により黒人音楽をルーツに持つロックンロールが一般向けのラジオ放送で演奏される事を嫌悪し、ロックンロール追放運動が起こり、一方で保守的な黒人キリスト教徒からも神聖であるべきゴスペルが教会から持ち出され商業的に味付けされる事への反発が起き、不買、不売、焚盤など一種迫害にも近い「ロックンロール狩り」が全米各地で発生する。同時に音楽産業の変化に伴う「ロックンロール産業」の商業化とあわせ、主要ミュージシャンが徴兵・死亡・懲役などで次々とシーンを去ったことからアメリカでのロックンロールは次第にその勢いを失い、残った主なミュージシャンもヨーロッパにその活動の舞台を移していった。しかし、後に、「イングリッシュ・インベージョン」と言って、ヨーロッパに移り、進化したロックンロールは、特にイギリスからアメリカに反転攻勢をかける原因のひとつになったと言わざるをえないのである。