Andy Warhol
世界でもっとも有名なバナナの絵といえば、おそらくアメリカのバンド「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド」のファースト・アルバムに使われているものではないでしょうか。
描いたのは現代美術、ポップアートの巨匠、アンディ・ウォーホルです。

アンディ・ウォーホル
アンディ・ウォーホルは大学卒業後、グラフィック・デザイナー、イラストレーターとして「アート・ディレクターズ・クラブ賞」を受賞するなど成功を収めていましたが、1960年にファインアートの世界へ飛び込みます。
試行錯誤の末、1961年に代表作となる最初のキャンベル・スープの缶を発表し、翌年にはシルクスクリーンプリントを用いてマリリン・モンローを大量制作しています。これらの作品は大きな話題を呼び、アンディ・ウォーホルは一躍ポップ・アートの中心人物となり大いに注目を集めます。
1964年にはニューヨークにファクトリーと呼ばれるスタジオを構え、絵画だけにとどまらず映画や雑誌など多くの作品を発表していくことになります。この時期はアンディ・ウォーホルにとって生涯でもっともクリエイティブな時期だったといえます。
そのアンディ・ウォーホルが音楽・ダンス・フィルム・照明などを含めた「エクスプローディング・プラスティック・イネヴィタブル」というマルチメディア・イベントを企画したのは1966年のことです。このイベントの音楽に、当時まだ無名だったヴェルヴェット・アンダーグラウンドを起用することにしたのです。
Velvet Underground & Nico
ニューヨークはグリニッジ・ヴィレッジにあったカフェ・ビザールを拠点として演奏していたヴェルヴェット・アンダーグラウンドを友人に連れられて観に行ったアンディ・ウォーホルは一目で気に入り、企画していたイベントへの出演依頼とファースト・アルバムのプロデュースを買って出ることになります。
ファースト・アルバムに関してアンディ・ウォーホルは音楽的なことには一切タッチしなかったといいますが、アンディ・ウォーホル制作の映画「チェルシー・ガール」で主役を務めた元モデルのニコに歌わせることを条件にしています。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ
アルバム・ジャケットの表面にバンド名はなく、大きくアンディ・ウォーホルと書かれていることからアンディ・ウォーホル人気にあやかってのものだったのでしょうし、アンディ・ウォーホル自身もヴェルヴェット・アンダーグラウンドがこれほど大きな影響を与える偉大なバンドとなることなど想像していなかったと思います。
アンディ・ウォーホルの名前の他にジャケットにはバナナのヘタのところに小さな文字で"Peel Slowly And See"の文字があります。そうなのです。このバナナはシールで出来ていて、皮をはがすことが出来たのです。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ
で、シールをゆっくりとはがしてみると当然のようにバナナなのですが、男性器を連想させるということからこのジャケットは話題(顰蹙?)となりました。しかし、話題となるのはアンディ・ウォーホルのことばかりで音楽の方は酷評され当時はヒットしていません。
その後、このアルバムに影響を受けたというミュージシャンが後を絶たず、それにともない10年以上の年月をかけてミリオンセラーとなっています。とても稀なアルバムですね。
今日でこそ名盤とされている「ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ」ですが、価値観が変わったとはいえ評価とは結構いい加減なものですね。
ルー・リードとジョン・ケイル、二人の天才のせめぎ合いが奇跡を生んだ。ポップなロックン・ロールと無機質なノイズの饗宴。デビュー作にして屈指の名盤。
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Live McmxcⅢ
セカンド・アルバム「ホワイト・ライト/ホワイト・ヒート」を最後に現代音楽の要素をバンドに持ち込んでいたジョン・ケイルが脱退し、4枚目のアルバム「ローデッド」を最後になんとほとんどの楽曲を作りメイン・ボーカルであったルー・リードも脱退してしまいます。ルー・リードもジョン・ケイルも居なくなったバンドをヴェルヴェット・アンダーグラウンドよんでもいいのか迷うところですが、その後「スクイーズ 」というアルバムを出してバンドは解散します。
しかし、奇跡は1993年におこります。オリジナル・メンバーでヴェルヴェット・アンダーグラウンドは再結成されたのです。
その時のライブ盤のジャケットにも、あのバナナがReデザインされています。このジャケットのデザインはルー・リードの当時の奥さんであるシルビアさんが担当しています。
なんとも微妙なデザインとなっていますが、アルバムの内容もジャケット同様に賛否両論ということに。。。

ライヴ1993
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Unripened
実はバナナ・ジャケットはもう1枚あります。1966年4月に行われたファースト・アルバムのセッション後の4月25日に作られたアセテート盤が青バナナ・ジャケットとして存在します。

Unripened
2002年にニュー・ヨークのフリー・マーケットでこのアセテート盤が発見され、その後海外のオークションで約1800万円という高値で落札され話題となりました。
内容は古いアセテート盤が元ですから音質が良いとは言えないしろものですが、むしろこちらの方がヴェルヴェット・アンダーグラウンドらしいようにも感じられます。もともと意識的にノイズを出していたバンドですからね。因みにファースト・アルバムとは全く異なるヴァージョンの曲もあり、すべて別ミックスです。
歴史的な価値があるかとは思いますが、マニアックなファン向けのアルバムですね。但し、アルバム・ジャケットはシャレも効いててセンス良しです。
オリジナル・アルバムにあった"Peel Slowly And See"のところには、かわりに“UNRIPENED LISTEN SLOWLY AND HEAR”の文字があります。

ザ・ヴェルヴェット・アンダーグラウンド