卒業式シーズンには「はなむけ」の言葉ですね、そう「鼻向け」の言葉…

卒業式シーズンには「はなむけ」の言葉ですね、そう「鼻向け」の言葉…

2月といえば、バレンタインもあるけれども、学生さんには受験の時期。そしてその先にある「卒業式」。社会人さんも職場での異動や転職などで転機の時期かもしれません。今回は、そういう人生の節目や転機のときに、旅立ちをする相手に対して行う行為についての民俗コネタです。


2月といえば、バレンタインもあるけれども、学生さんには受験の時期。そしてその先にある「卒業式」。社会人さんも職場での異動や転職などで転機の時期かもしれません。

今回は、そういう人生の節目や転機のときに、旅立ちをする相手に対して行う行為についての民俗コネタです。

「はなむけの言葉」

送る方も送られる方も。。。

別れと旅立ちのとき「卒業式」

「はなむけの言葉」。
これ、聞いたことありませんか?あるいは、言ったことありませんか?
『卒業生に贈る在校生からのはなむけの言葉』とか『卒業生に贈る保護者からのはなむけの言葉』などです。

「卒業式のはなむけの言葉」

ネットで「卒業式のはなむけの言葉」の事例を検索すると、ワチャッと出てくる出てくる!

例えば・・・
・ご卒業おめでとうございます。今日のような、春の日差しのようにあたたかく、春風のように優しい人に、なって下さい。
・卒業おめでとう。今日がゴールであると同時にスタートです。今までの思い出と友だちを大切にして、楽しい学校生活を送って下さい。
などなど。

さて、その「はなむけ」の語源が今回のお話。

「はなむけ」の語源

漢字で調べると「餞」「贐」など難しいのが出てくるので、これは見なかったことにしておいて、「ハナムケ」という音にご注目ください。
これ、「鼻向け」なんです。馬の。もとは「馬の鼻向け」だったのですが「馬の」部分がいつしか消えて「はなむけ」となりました。

「餞別」などにも使われる「餞」のイメージが強くて。。。

「はなむけ」は「馬の鼻向け」??

どういうこと?と思われる方もいらっしゃると思いますので、古代にさかのぼってみますね。

旅人が向かう方向に馬の鼻を向ける安全祈願だった「鼻向け」

古代、旅立ちに際し、その旅人が向かう方向に馬の鼻を向ける安全祈願の行為がありました。紀貫之さんが記した日記『土佐日記』(10世紀頃成立か)冒頭に「二十二日に、和泉の国までと、平らかに願立つ。藤原のときざね、船路なれど、馬のはなむけす」と書かれているのが有名な事例かもです。この『土佐日記』以外の平安時代の書物にもチラホラとこの単語が出てくるので、少なくとも平安時代には一般的だったのかな?と思います。

やがて「馬の鼻向け」から「お餞別」へ

元々は旅立ちのときに馬の鼻を向けて、「道中お気をつけて」的な挨拶をする・・・そんな行為だったのですが、江戸時代の書物『奥の細道』(松尾芭蕉・著)に「紺(こん)の染緒(そめお)つけたる草鞋(わらじ)二足(にそく)餞(はなむけ)す」と記してあったりするから、だんだん「馬」感が消えて、かわりに品を渡すようになっていたことが伺えます。

「旅=馬」から鉄道や自動車の時代へ

そして、近代になると旅に馬を使うことがなくなってまいります。鉄道が敷かれるようになったこと、自動車が出現したことなどから私たちの生活の中で馬が消えていきました。

そうやって馬から品に変化しようとも、馬そのものが生活から姿を消そうとも、「旅立ちに際して挨拶をする」ことは消えませんでした。ですので、現代でも、人生の旅立ちの節目節目で「はなむけの挨拶」をするのかな?と思います。

モノより心からの挨拶のほうが大事ですよね♪

今回は旅立ちの挨拶のルーツについてのコネタでした~。

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