The Cult

ザ・カルト
ザ・カルトは、1983年にイギリスのウェスト・ヨークシャーのブラッドフォードにて結成されたハードロックバンドです。現在のメンバーは、イアン・アストベリー(ボーカル、パーカッション )、ビリー・ダフィー(ギター )、クリス・ワイズ(ベース)、ジョン・テンペスタ(ドラムス)の4人ですが、ツアーメンバーとしてギターでジェームス・スティーヴンソンが参加しています。
メンバーチェンジが頻繁に行われており、オリジナル・メンバーはボーカルのイアン・アストベリーとギタリストのビリー・ダフィーの2名です。
ファースト・アルバム「ドリームタイム」を1984年にリリースした後、現在までに10枚発表しており、来日公演を1985年、2001年、2010年の3回行っています。

イアン・アストベリー

ビリー・ダフィー
前身は1981年に結成されたポストパンク/ゴシック・ロックバンドのサザン・デス・カルトです。一部に熱狂的なファンを持ったこのバンドは、シングルとコンピレーション・アルバムを1枚ずつリリースしています。
サザン・デス・カルト解散後、イアン・アストベリーがビリー・ダフィー等とはじめたバンド、デス・カルトが母体となります。
当時はポジティブ・パンクなどとも呼ばれていましたが、イアンとビリーの2人を中心に曲を作るようになると、バンド名をザ・カルトに変更し翌年にファースト・アルバムをリリースします。

サザン・デス・カルト
Dreamtime
1984年にリリースされたファースト・アルバム「ドリームタイム」。デス・カルト時代の楽曲もいくつか含まれており、ネオ・サイケっぽいギターをプリミティヴなビートに乗せた疾走感あふれるアルバムとなっています。
しかし、それだけではなくメランコリックなバラードなどが入っているところがミソで、一筋縄ではいかないところを見せ付けています。
ニュー・ウェイヴの流れの中にあるような、この繊細なサウンドは全英トップ20に入るスマッシュ・ヒットとなっています。

ドリームタイム
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Love
当時人気を誇っていた、ワム!やABCなどを手掛けていたスティーブ・ブラウンをプロデューサーに迎え1985年に制作された2枚目のアルバム「LOVE」。
ザ・カルトを象徴するシングル「シー・セルズ・サンクチュアリー」を含んだ本作は全英4位のヒットを記録し、以降カルト・マニアックスと呼ばれる熱狂的なファンが急増しました。
前作の発売以降、ドラマーが流動的で安定していませんでしたが、マーク・ブレゼジッキを迎え入れたことが功を奏したのでしょう。ビートがシンプルになって唯一無二の空気感を醸し出しています。

Love
Electric
本作を持ってザ・カルトの最高傑作とするファンも多い1987年リリースの3枚目のアルバム「エレクトリック」です。全英4位、全米38位となる大ヒットを記録しました。
本作は当初アルバムタイトルを「Peace」として前作同様プロデューサーにスティーヴ・ブラウンを迎え一旦レコーディングを完成させましたが、音があまりにも洗礼されすぎていると思ったザ・カルトは、これを破棄し、ビースティ・ボーイズやRun-D.M.C.、レッド・ホット・チリ・ペッパーズなどのプロデューサーとして有名なリック・ルービンを新たに迎え入れ再レコーディングして完成させています。
英国の音から米国の音へとプロデューサーを変えたところにザ・カルトの戦略を見て取ることができますね。それまでのザ・カルトと決別するかのような音作りがなされていますが、商業的に成功し世界に飛躍するきっかけになったアルバムです。
因みに、収録曲の「ワイルドで行こう」は、ステッペン・ウルフのカバーです。

エレクトリック
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Sonic Temple
前作の成功で活動拠点をアメリカに移したザ・カルトが、エアロスミスやメタリカのプロデューサーとして知られるボブ・ロックを迎えて制作したのが4枚目にして最大の成功作「ソニック・テンプル」です。
前作の豪快さと前々作の繊細さといういいとこどりをしたような「ソニック・テンプル」。
イギリスのバンドの特徴でもある湿った感じがなくなり、からっからに乾いたアメリカ色が強くなったように感じますが、だからこその大成功となったのでしょう。全英3位、全米10位を記録しています。
収録曲の「ニューヨーク・シティ」にはイギー・ポップが参加しており、話題になりました。

ソニック・テンプル
Ceremony
1991年リリースの「セレモニー」のプロデューサーは、チープ・トリックやハートで知られるリッチー・ズィトーが担当しています。アルバム毎にプロデューサーを変えているところにザ・カルトの音作りへのこだわりとしたたかさが見て取れます。
さて5枚目のアルバム「セレモニー」ですが、プロデューサーのリッチー・ズィトーの手腕でしょう、前作よりもさらにアメリカンナイズされ、洗練されたサウンドを聴くことができます。いえ、もしかすると、プロデュースの問題だけではなくオリジナル・ベーシストのジェイミー・スチュワートの脱退が影響しているのかもしれません。
ハードな音を出してもアメリカのハードロック・バンドとは違い、イギリス的な湿った感触があったザ・カルトですが。。。しかし、それと引き換えにスケールの大きなサウンドを獲得したのです。それこそが、アメリカでの更なる成功を目指すために当時のザ・カルトが望んだものだったのでしょう。
流行に左右されない歌の上手さが際立つイアン・アストベリーのボーカルと、思いっきり弾きまくり、目立ちまくっているビリー・ダフィーのギター。結果が分かっているだけに、余計にこの数年後には解散してしまうことが何となく予見できてしまうようなアルバムでもあります。

セレモニー
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ザ・カルトは、1994年に6枚目のセルフタイトルアルバム「ザ・カルト」をリリースし、翌年に解散してしまいます。
再結成は4年後の1999年で、嬉しいことに2001年には7枚目のアルバム「ビヨンド・グッド・アンド・イーヴィル」をリリース。活動休止を挟み2007年に8枚目のアルバム「ボーン・イントゥ・ディス を、2012年には9枚目のアルバム「チョイス・オブ・ウェポン 」を、そして2016年には2007年から続く3部作の最後となる「HIDDEN CITY」をリリースしています。第一線に留まり、これだけ長い期間活動するということ自体大変なことだと思いますが、どのアルバムもファンの期待に応える充実した作品となっているのは奇跡的です。
また、1985年、2001年に続き近年では2010年に来日公演を行い元気な姿を見せてくれています。