ハンマーを遠くに投げるためには、ハンマーの先端のスピードアップが不可欠である。
重信は、体を後ろに倒れこみながら回り、回転半径を大きくして、ハンマーの遠心力を高めた。
そして重信は当時の日本記録75m96cmを打ち立て、その技術は息子に受け継がれた。
また2003年から師事しているアメリカ在住のアイルランド人:トーガコーチと新技術も導入した。
「元々、ディール選手( 米)のコーチなんですが、試合などでディール選手と話していると共感できる部分が多かった。
「自分しか気づいていないだろう」と思っているようなことまで知っていたんです。
ずっと彼の練習拠点(オレゴン州ユージン)に行きたいと思っていて、それが実現したときに、トーガコーチを紹介されたのです。
非常に厳しい方で僕には合っていると思いましたし、一緒にやっていて本当に奥が深いなと思います。
技術を変えているというよりも基本に戻って作り直す作業なんです。
これが大変なんですよ。
ある程度の記録が出るようになると勇気のいることなんです。」
回転スピードの速さが室伏の特徴であり武器である。
世界のトップと室伏を見比べると1番に目につくのは室伏の速さである 。
しかしトーガは、その回転をゆっくり始めるように指導した。
ハンマーの飛距離を決めるのはリリース(手からハンマーが離れる瞬間)時のスピード。
その局面での最大スピードを獲得するには、最初からスピードを上げるより徐々に回転速度を上げていく方がいい-というのがトーガコーチの考え方。
ただこれは表面的な言い方であって、室伏によれば、次のような説明になる。
「速い遅いというよりも、1個1個、1つ1つの回転をこなすことが大事なんです。
確実に回っていくということですね、
しっかりした円にならないとダメなんです。
もちろん最後は、ハンマーヘッドは速くなりますよ。
それは、トレーニングをしていく中でできるようになるんです。」
人生、チャレンジ、人間、チャレンジするために生まれてきている
1998年
父:重信氏の日本記録を更新
アジア大会優勝
2000年
80m突破
2001年
世界選手権銀メダル
アジア記録の83m47cm
2002年
世界グランプリ優勝
アジア大会2連勝
2003年
世界選手権銅メダル
世界歴代3位の84m86cm
2004年
アテネ五輪金メダル
2008年
北京オリンピックでは80m71で5位になったが、2位と3位の選手がドーピング違反が発覚し、失格、メダル剥奪となったため一時、3位となった。
(後にこの処分は撤回され、銅メダルならず。)
2010年
IAAFワールドチャレンジミーティングス、リエティ大会で世界ランキング1位となる80m99、ザグレブ大会で79m91を投げて優勝し、IAAFハンマースローチャレンジの初代年間チャンピオンとなった。
2011年
世界陸上大邱大会で81m24を投げて優勝。
世界選手権で初の金メダルを獲得。
世界選手権における男子最年長優勝者(36歳と325日)。
日本人選手で初となる五輪・世界選手権2冠覇者
2012年
ロンドンオリンピックでは78m71で3位になり、銅メダルを獲得。
2014年
日本選手権20連覇を達成
2015年
日本選手権と世界陸上を欠場。
2016年
2年ぶりの出場となったリオデジャネイロ五輪代表選考会を兼ねた第100回日本選手権で自己ベストを20メートル以上下回る64m74を投げて12位。
引退を表明。
室伏の達成してきたことは日本陸上競技会において金字塔の連続だった。
オリンピックと世界選手権における投擲種目のメダルは史上初。
2003年、84m86cmを投げ、世界歴代3位、現役選手では最高記録保持者となった。
2004年、アテネ五輪では日本の投擲選手としては史上初、陸上競技で、マラソン以外の種目では68年ぶりの金メダル。
五輪や世界選手権とは別に、グランプリ・シリーズという世界の主要都市で開催されるサーキット形式の試合がある。
そのうち最もレベルの高い数試合がゴールデンリーグで、室伏は2001年ローマ大会で同リーグ日本人初の優勝者となり、2002年にはこれも日本人初めての種目別優勝を飾った。
「人生、チャレンジですから。
スポーツでも人生でも、それぞれの立場で必ずハードルが与えられている。
仕事でも学校生活でもチャレンジするものはたくさんあると思いますよ。
それに対して逃げたらダメなんです。
ハンマー投も、1つのことができたらまた次、それができたらその次と、常に挑戦の連続でここまで来た
人生もチャレンジの連続なんですよ。
チャレンジすれば絶対にワクワクする。
やる気が起きないというのは、チャレンジしていないからなんです。
それはどこか生き方に問題がある。
チャレンジする対象は絶対にあります。
それを見過ごしたらダメなんです。
人間、チャレンジするために生まれてきているんですから。」