はじめに
綾瀬はるかさん主演の人気ドラマ「ホタルノヒカリ」。「干物女」の流行語を生み出し、映画化もされたこの作品は、ひうらさとる先生のマンガを原作としています。もちろん、原作も大ヒット。ひうら先生の代表作といわれています。
そのひうら先生は、1980年代後半、講談社の少女マンガ雑誌「なかよし」で作品を発表していました。「なかよし」の読者層はおおむね女子小学生。その少女たちと同じ年代の小学生、しかし普通の小学生とは一味も二味も違うスーパー小学生たちを主人公としたアクション活劇が、今回ご紹介する「レピッシュ!」です。
基本情報
「レピッシュ!」は、1988年から1989年にかけて、講談社の少女マンガ雑誌「なかよし」で連載されました。単行本(講談社コミックスなかよし)は全3巻、文庫版は講談社漫画文庫より全2巻で発売されています。

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主役は東京の名門校に通う小学生たち
この物語は、次のようなコマから始まります。

この帝東学園児童部に通うお金持ち小学生のうち、突出して「フツ―じゃない」、5年生の4人をご紹介しましょう。
天真爛漫な主人公 椿チャコ

椿チャコは、一代で経済界の一大勢力「椿コンツェルン」を築き上げた実業家・椿カズミの一人娘。その性格は至って天真爛漫。しかし、そのトボけた言動に騙されがちですが、実は、成績は万年トップ。頭の回転も速く、直面した問題に対して、突拍子もない解決策を思いつくのはたいてい彼女です。東京タワーをこよなく愛し、将来は東京タワーに住むのが夢。
なお、上記のプロフィールに出てくる人名「えーじ」については後述いたします。
ハードボイルドに憧れる行動派・宅間クミ(マグミ)

宅間クミ(通称マグミ)は「なぜかいま話題のニュー・ウェーブ保育園グループ」理事長の長男。「ニュー・ウェーブ保育園」の全貌は明らかにされませんが、有名芸能人がこぞって子どもを通わせている、オシャレな保育園のようです。普段の言動や口調は荒っぽいマグミですが、一方で仲間への情に厚く、練馬区の自宅に帰れば、三つ子の弟の世話をテキパキこなす一面も持っています。どうやら、チャコに淡い恋心を抱いているようです。
おしゃまでゴージャスな耳年増 栗尾かの子

栗尾かの子は、老舗和菓子の末娘。4人の姉たちの恋愛失敗談を常日頃聞いているため「あたしはぜったい男で苦労しない」と自負しています。お肌の調子が悪いという理由での遅刻は日常茶飯事、通学にはシャネルのバッグを使用。同世代の男の子たちにはモテている様子ですが、理想の男性とはまだ出会えていない模様。
理論派のパソコン少年 広瀬隆生(タカオ)

広瀬隆生(タカオ)は、T大教授の次男坊。父は講演活動で全国を飛び回り、タカオも父の手伝いで同行することもあるようで、そうとう優秀な頭脳の持ち主(ただし、テストの成績ではチャコにかなわず万年2位)。インターネットが普及していなかった当時において、自宅の巨大コンピュータを駆使して世界中の情報を収集するのが趣味です。
そんなお騒がせ4人組ですが、小学5年生という自分たちの立場と、街で見かける疲れた中学生たちを比較して、少々思うところがあるようです。


「レピッシュ」とは?
ある日、いつものようにパソコンで情報収集をしていたタカオが、とある極秘情報を手に入れます。それは、ヨーロッパの経済界を取り仕切っていたドイツ人実業家、ベンツ=カール=フレッド氏の死、そして彼の残した遺言が発端でした。


レピッシュとはドイツ語で「ばかげた」「子どもじみた」という意味。この後継者探しが「ばかげた宝さがし」ということで、その子どもも「レピッシュ」と呼ばれるようになりました。そして、その「レピッシュ」は今、日本にいるというのです。
タカオが仲間たちにこの情報を伝えた場所は、椿家南館(高層ビル)最上階、チャコお気に入りの東京タワーが見える屋根裏部屋。そして、この情報と共に、彼らの運命を変える人物が飛び込んできます。
謎の青年・一条瑛児

いきなり窓を突き破って登場したこの青年。人を探していて、トラブルに巻き込まれてしまったと語るのですが、その「探している人」とは……。

住むところを探しているという彼に、4人組は「一緒にレピッシュを探そう」と提案。チャコの住み込みの家庭教師ということにして、半ば強引に仲間に引き入れます。
ここから、チャコたち4人組と一条瑛児の、波乱万丈のレピッシュ探しが始まったのでした。

「レピッシュ探し」をめぐる人間模様
こうして「レピッシュ探し」に乗り出した4人組。財力とそれぞれの特技を生かし、周囲を巻き込みながらの捜索劇を繰り広げます。



もちろん、レピッシュを探しているのは彼らだけではありません。邪魔するオトナたちも多数登場します。


一方、4人組の仲間となった瑛児も、子どもたちは知らない顔を持っている様子。

タイトルについて
このマンガのタイトル「レピッシュ!」。この単語にピンときた方も多いことと思います。文庫版で、ひうら先生はこのタイトルについて次のようなコメントを残しています。
小学生4人組のひとり、マグミの名前も、バンド「LÄ-PPISCH」のボーカル・トランペット担当・MAGUMIさんが由来のようです。
おわりに
ファッションの流行にはサイクルがあるといいますが、2016年現在、80年代後半から90年代のファッションが再び脚光を浴びているようです。
当時の「なかよし」連載陣の中でも「レピッシュ!」は、その「都会感」「オシャレ感」において突出していました。小学生4人組も、それぞれ時代や個性に沿ったオシャレを楽しんでいます。
そんな時代の空気を醸し出しながら、時に悩みぶつかりながらも、基本的には豪快かつ天真爛漫に「ばかげた宝さがし」に奮闘する小学生たち。彼らの活躍は、ぜひマンガ本編を手に取ってお楽しみ下さい。