『好奇心が原動力』高畑勲・宮崎駿両監督の先輩アニメーター『大塚康生』のワクワクする仕事術!

『好奇心が原動力』高畑勲・宮崎駿両監督の先輩アニメーター『大塚康生』のワクワクする仕事術!

『未来少年コナン』や『カリオストロの城』の作画監督で知られる『大塚康生』さん。のびのびとした画風・ダイナミックな動きを取り入れたアニメーションは、大塚さんの人生の生き方、考え方そのものが反映されていました。大塚さんの類稀なる画力、機関車・ジープへの愛情、そして宮崎駿・高畑勲両監督と過ごしてきた若き日々を知っていただけたらと思います。


『カリオストロの城』をめぐるエピソードいろいろ

この映画は宮崎駿の第一回劇場監督作品となっていますが、当初は作画監督の大塚康生さんが監督をする予定でした。
ところが先にあがってきた映画のシナリオは、キャラクターの解釈も軽く、大塚さんが納得する内容ではありませんでした。

監督を引き受けた宮崎さんは、早速『カリオストロ』のイメージボード作りを始めます。
車が得意な大塚さんの特徴を生かすアイデアを考えていたようです。

このイラストのフィアット500、今ではすっかりルパンの車として定着していますが、実は最初は違う車だったのです。
『カリオストロ』からさかのぼること10年前。
初期のTV「ルパン」を大塚さんが担当していた時、視聴率低迷からTV局の方針で、青年向け路線を無理やり子ども向けに変更する事態が起きたことがありました。
スタッフの入れ替え、内容の大幅変更。
この緊急事態に、高畑さんと宮崎さんが手伝いに入りました。

当時のルパンの愛車の設定は「フェラーリ12気筒搭載ベンツSSK」。
手が足りなく困っているというのに、車の絵が難しすぎて、大塚さんと青木さんという方しか描けなかったのです。その時、宮崎さんがこんな提案をしました。
「泥棒が成功しないのでは、この連中は何で食っているのか?ヨーロッパの庶民の足で、誰でも描ける形の、あのフィアット500(チンクエチェント)にすればいい!」と、外に駐車していた大塚さんの愛車を指差して言ったのです。

フィアット500 大塚康生ルパン三世作画集

こうして大塚さんの愛車がそのままルパンの愛車になりました。
この車は、シートが腰かけ式で、立ったままアクセルやブレーキが踏めるのだそうです。
まさにアクション向けの車ですね。

実はこの車は、宮崎さんにも思い出のある車。
若き日の宮崎さん、大塚さんたちがどんちゃん騒ぎの宴会をした後、酔っぱらった大塚さんが、駅まで帰る人をフィアットで送る!と言い出したのだそうです。(もう50年以上前の話)
ところが途中でその人を降ろすと、車は闇の中へ消えていき、そのまま朝まで帰ってこなかった!大塚さんは、朝になってランニングシャツ一枚、泥だらけでやっと帰ってきました。
酔った勢いで、フィアットは武蔵野の雑木林を抜け、あぜ道を抜け、工事中の柵をすり抜け、台地を削って造成中の切通し道の真ん中のぬかるみに埋まりはまっていたそうです。
まるで映画さながらの無茶苦茶な運転ですね。
そんなことも、カリオストロのカーチェイスを面白がって描ける要因なのかもしれません。

愛車フィアットと若き日の 大塚康生さん

さて一方、このクラリスの運転する車にもモデルがあります。

シトロエン・2CV

宮崎さんの愛車2CVシトロエンです。
こんなふうに身近なところからアイデアを得ているのです。
それにしても二人とも、普段からオシャレな車を選んでいるのですね。
その時点で、目の付け所がすでに違っていると思います。

宮崎駿監督と2CVシトロエン

『彼(宮崎さん)は映画の主人公たちを、生きている人間のように自分に引きつけて考え抜きます。ルパンは彼の中で歳を重ねていて、おっちょこちょいではあるものの、老成したやさしさと思慮深さがあって、クラリスへの距離のおき方にも中年らしい分別があり、まるで彼自身が若い女性に対してとっているスタンスを感じさせるものでした。』と、大塚さんは『作画汗まみれ』で回想しています。
宮崎さんの意図はもちろんですが、それを細やかに読み取れる大塚さんならではの鋭い分析力を感じます。二人は、本当にいいコンビだったのでしょうね。

鈴木敏夫プロデューサーから見た大塚さんと宮崎さん

【糸井重里】 (笑)宮崎さんと大塚さんとでは、大塚さんのほうが西洋的かもしれない。 【鈴木敏夫】 そうです。宮さんは細かいところを見る人で、大塚さんは、宮さんに向かっても、大きなところについて「ここ、おかしいんじゃない?」と指摘します。非常に合理的なかたです。 ふたりは、キャラクターとしても、実に対照的ですね。 たとえば、大塚さんは外国に出かけて、誰とでも堪能にやりとりをして、実践でおぼえた言葉を駆使してさまざまな話を聞いてきて、なおかつ、いろんな買いものをしちゃう。 ジープなんかも買ってきてしまうような人です。 ところが、宮崎駿は、とにかく外人に英語でしゃべりかけることはゼロ。 しゃべりかけられると、必ず彼は、一歩、後ずさりするんです。 大塚さんと一緒に仕事をした人や、大塚さんから習った人というのは「アニメーションってたのしいなぁ。仕事ってたのしい」と思うのですが、 宮崎駿と一緒に仕事をした人は、「仕事っていうのは苦しいし、アニメーションはたいへんな道のりだ」と考えるわけです。この差は大きいですよね。 【糸井】 両方がいたから、できることがあったんですね。

https://www.1101.com/ghibli/2004-07-27.html

ほぼ日刊イトイ新聞 - ジブリの仕事のやりかた。

『カリオストロの城』ポスター裏話

【鈴木】
大塚さんは、とにかく1枚絵としておもしろいというよりは、動きのほうですよね。
彼自身のことで言えば、1枚絵のほうはあまり得意ではなかったようです。
【糸井】
両方できるのは、宮崎駿さんということですか?
【鈴木】
宮さん(宮崎駿さん)は、そうです。だから、『カリオストロの城』のクラリスというお姫さまも、勝手に大塚さんに描かれるのがイヤなんですよね。

忙しくて映画宣伝用のポスターなんて描けないときにも、宮さんは
「ポスターを描く条件がある。オオツカさん、クラリスを出すな!」と言った……。

大塚さんは、「宮さん、わかった、わかった。出さないから」とか言うんだけど、描かせるとそこにいるんですよね。ただ、ちょっと気絶していて、顔を下に向けているわけで。

だからポスターのクラリスって、どんなものも、みんな下を向いているんです。
目も顔も見えなければ、宮さんも怒らないだろうと(笑)。
【糸井】
もう、化かしあいになってきていますね……。

『ほぼ日刊イトイ新聞』ジブリの仕事のやりかた。宮崎駿・高畑勲・大塚康生の好奇心。より引用

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