『好奇心が原動力』高畑勲・宮崎駿両監督の先輩アニメーター『大塚康生』のワクワクする仕事術!

『好奇心が原動力』高畑勲・宮崎駿両監督の先輩アニメーター『大塚康生』のワクワクする仕事術!

『未来少年コナン』や『カリオストロの城』の作画監督で知られる『大塚康生』さん。のびのびとした画風・ダイナミックな動きを取り入れたアニメーションは、大塚さんの人生の生き方、考え方そのものが反映されていました。大塚さんの類稀なる画力、機関車・ジープへの愛情、そして宮崎駿・高畑勲両監督と過ごしてきた若き日々を知っていただけたらと思います。


『大塚康生さん』ってどんな人?

1931年、島根県生まれ。1957年、東映動画に入社し日本初の本格カラー長編アニメーション「白蛇伝」(’58)、「わんぱく王子の大蛇退治」(’63)などに動画として参加、「太陽の王子ホルスの大冒険」(’68)で初めて作画監督を担当する。その後、東京ムービーを拠点に日本アニメーションなどでもアニメーターとして仕事をする。
作画監督作品は「ムーミン」(’69)、「ルパン三世」(’71)、「パンダコパンダ」(’72)、「未来少年コナン」(’78)、「ルパン三世 カリオストロの城」(’79)、「じゃりン子チエ」(’81)など多数。
1991年から9年間代々木アニメーション学院アニメーター科の講師として教壇にたつ。技術顧問を務めるテレコム・アニメーションフィルムのアニメ塾などを通じ、現在も後進の指導にあたっている。

『作画汗まみれ』(増補改訂版) 大塚康生 著 徳間書店 より引用

『作画汗まみれ』の表紙を見ているだけで、「これも観た!あれも観た!」とワクワクしてきます。「あ~あれあれ!」とわかるキャラクターが何人もいませんか?
大塚さんが関わったアニメの数々。あなたはどれを覚えていますか?

高畑勲・宮崎駿監督が語る『大塚さん』とは

高畑・宮崎両監督の絶大な信頼を得ている大塚さん。
とても興味のわく人物です。その人となりを、少年時代から振り返ってみましょう。

機関車に夢中だった少年時代

10歳くらいの時に、出征する兵士を見送るために、初めて大人に連れられて津和野駅にやってきた大塚少年。その時初めて見た蒸気機関車に「ハンマーで殴られたような」衝撃を受けたのが始まりだったそうです。
やがて山口市に引っ越し、小郡駅の近く(といっても12㎞離れていた)になって小郡機関区があるため、止まっている機関車を思う存分スケッチできるようになります。
駅員や機関区で働く大人たちは、熱心でしかも絵の上手い大塚少年を可愛がり、積極的に機関車の仕組みを教えてくれたり、運転台に乗せてくれたりしたそうです。

「ずっとあとになって、日本中の線路から蒸気機関車が姿を消そうとしたころ、SLマニアというのが大量に出現しました。しかし、私の場合は、話す相手も仲間もいない孤独な趣味だったのです。(中略)
もしあのころカメラがあり、フィルムが豊富にあったとしたら、私はいちいち機関車の絵を描かないで、ためらわずにシャッターを切っていたことでしょう。」
(『作画汗まみれ』(増補改訂版) 大塚康生 著 徳間書店 より引用)

まだ戦争中だった時代を振り返り、大塚さんが述べられた言葉です。
自分で描いて、家で眺めて、また次の日スケッチしに行く。
と言っても駅は遠く、家から1時間以上も歩いて通っていたそうです。
湧き出るような情熱と関心の強さを感じますね。

2012年、南さんは、このノートに描かれたスケッチをデジタルスキャンし、永久保存することを大塚さんに勧めました。
それらの作品をギャラリーで展示したところ、JR東日本で元車両部長をやっていた人が「これは文化的な価値が大きい」と驚かれたそうです。

子どもが描いたとは思えないほど正確なスケッチ

機関車から学んだ『作動原理』の重要性

大塚さんが、数多くの蒸気機関車を描くことで強く学んだことがあります。
それはどんなものにも、動くためには「作動原理」や「構造原理」が働いており、それをきちんと知って描かないと納得のいく絵が描けないということでした。
特に蒸気機関車は、この「作動原理」がむき出しです。
大塚さんはスケッチしながら、どうやって動くのが目の当たりにして覚えてきました。
これは機械だけでなく、人間の動作にもあてはまることです。
この経験は、アニメーターになってからの大塚さんの仕事を支える、大きな柱となりました。

次の興味はジープ

終戦後、大塚少年が住む町にも、大量の占領軍がジープやトラックに乗って進駐してきました。今まで見たことのない軍用車両、青い目の兵士を見てカルチャーショックを受けたそうです。ところが怯えることもなく、むしろ好奇心が刺激され、たちまちジープの虜となってしまいました。
蒸気機関車の時と同様に、ペンとインクつぼをかかえ、ジープやトラックのスケッチをしに日参したそうです。

大迫力の緻密なスケッチ!
ところが絵が上手くて緻密過ぎたために、アメリカ軍の諜報部に連行されてしまうのです!

関連する投稿


「高畑勲展-日本のアニメーションを作った男。」が開催決定!メインビジュアル、会場のみどころ、チケット詳細などが発表!!

「高畑勲展-日本のアニメーションを作った男。」が開催決定!メインビジュアル、会場のみどころ、チケット詳細などが発表!!

麻布台ヒルズ ギャラリー、NHK、NHKプロモーションが主催する展覧会『高畑勲展-日本のアニメーションを作った男。』が開催されます。


日本アニメーション創業50周年記念!トリビュートイベント「僕たちの未来少年コナン展 2025」が開催決定!!

日本アニメーション創業50周年記念!トリビュートイベント「僕たちの未来少年コナン展 2025」が開催決定!!

日本アニメーション株式会社がアニメーション制作・ライセンス展開を行う『未来少年コナン』のトリビュートイベント「僕たちの未来少年コナン展 2025」の開催が決定しました。


高畑勲脚本・監督作品!『赤毛のアン ~グリーンゲーブルズへの道~』の全国リバイバル上映が決定!!

高畑勲脚本・監督作品!『赤毛のアン ~グリーンゲーブルズへの道~』の全国リバイバル上映が決定!!

国内最大級の映画・ドラマ・アニメのレビューサービス Filmarks(フィルマークス)主催のリバイバル上映プロジェクトにて、日本アニメーション創業50周年を記念し、高畑勲 脚本・監督作品『赤毛のアン~グリーンゲーブルズへの道~』が全国リバイバル上映されることが決定しました。


Z世代にも人気!大人から子供まで楽しめる名作アニメ「パンダコパンダ」の決定本がついに登場!!

Z世代にも人気!大人から子供まで楽しめる名作アニメ「パンダコパンダ」の決定本がついに登場!!

玄光社より、書籍『パンダコパンダ ファンブック』が発売されます。発売予定日は4月15日、価格は2640円(税込)。


スタジオジブリの劇場公開全作品の背景美術を1冊に!『スタジオジブリの美術』が発売決定!!

スタジオジブリの劇場公開全作品の背景美術を1冊に!『スタジオジブリの美術』が発売決定!!

パイ インターナショナルより、書籍『スタジオジブリの美術』の発売が決定しました。発売予定日は2025年1月22日、価格は13200円(税込)。


最新の投稿


プロレス界の歴史が動く今こそ読むべき一冊! 『ようこそ、プロレスの世界へ 棚橋弘至のプロレス観戦入門』2025年12月18日(木)発売!

プロレス界の歴史が動く今こそ読むべき一冊! 『ようこそ、プロレスの世界へ 棚橋弘至のプロレス観戦入門』2025年12月18日(木)発売!

新日本プロレスの“100年に一人の逸材”棚橋弘至氏による著書『ようこそ、プロレスの世界へ 棚橋弘至のプロレス観戦入門』が2025年12月18日にKADOKAWAより発売されます。引退が迫る棚橋氏が、26年の現役生活で培った視点から、プロレスの魅力、技の奥義、名勝負の裏側を徹底解説。ビギナーの素朴な疑問にも明快に答え、プロレス観戦をさらに面白くする「令和の観戦バイブル」です。


ウルトラふろく200点以上を一挙収録!『学年誌 ウルトラふろく大全』発売

ウルトラふろく200点以上を一挙収録!『学年誌 ウルトラふろく大全』発売

小学館クリエイティブは、ウルトラマンシリーズ60周年、『小学一年生』100周年の節目に『学年誌 ウルトラふろく大全』を11月28日に発売しました。『ウルトラQ』から『ウルトラマン80』までの学年誌・幼児誌のウルトラふろく200点以上を網羅的に掲載。組み立て済み写真や当時の記事も収録し、ふろく全盛時代の熱気を再現します。特典として、1970年の人気ふろく「ウルトラかいじゅう大パノラマ」を復刻し同梱。


伝説のプロレス団体 UWF40周年記念イベント“無限大記念日”開催!

伝説のプロレス団体 UWF40周年記念イベント“無限大記念日”開催!

伝説のプロレス団体『UWF(ユニバーサル・レスリング・フェデレーション)』が、設立40周年を記念し、特別イベント「無限大記念日」を書泉ブックタワー(東京・秋葉原)にて開催します(2025年12月24日~2026年1月12日)。第1次UWFの貴重な試合映像や控室、オフショットなど、4,000枚以上のアーカイブから厳選された写真が展示されます。復刻グッズや開催記念商品も販売され、当時の熱狂が蘇ります。


グラニフ×『幽☆遊☆白書』初コラボ実現!幽助、蔵馬、飛影など全21アイテム登場

グラニフ×『幽☆遊☆白書』初コラボ実現!幽助、蔵馬、飛影など全21アイテム登場

株式会社グラニフは、TVアニメ『幽☆遊☆白書』との初コラボレーションアイテム全21種類を、2025年12月2日(火)より国内店舗および公式オンラインストアで販売開始します。主人公の浦飯幽助をはじめ、桑原、蔵馬、飛影のメインキャラクターに加え、戸愚呂、コエンマなど欠かせないキャラクターをデザイン。11月26日より先行予約も開始され、ファン必見のラインナップです。


全長20cmの迫力!1/18スケール『国産名車コレクション』創刊

全長20cmの迫力!1/18スケール『国産名車コレクション』創刊

アシェット・コレクションズ・ジャパンは、隔週刊『1/18 エクストラスケール 国産名車コレクション』を2026年1月7日に創刊します。全長約20cm、1/18スケールのダイキャスト製で、日本の自動車史を彩る名車を精巧に再現。ボディラインやエンジンルーム、インパネなどの細部ディテールにこだわった「エクストラ」なコレクション体験を提供し、マガジンでは名車の開発秘話や技術を深掘りします。