スティーヴ・ペリー加入以前のジャーニー
音楽好きで、ジャーニー(Journey)の名を知らない人は少ないと思います。
それほど有名なアメリカを代表するロックレジェンドのバンドの一つですよね。
特に、1980年代に、同じくアメリカ西海岸出身のTOTOなどと同時代に、世界中で大ブレイクして当時のヒットチャートを席巻したバンドです。
そんなジャーニーですが、実は、ブレイクしたのは、ボーカルのスティーヴ・ペリーが加入してからで、それ以前の数年は、デビューしたけど、売れずにパッとしない「プログレッシヴロック系インストバンド」でした。
ジャーニー自体は、『ゴールデン・ゲート・リズム・セクション』なるインストゥルメンタル・バンドを母体として、1974年に正式にサンスランシスコで結成してデビューしています。
その時代のジャーニーは、元サンタナのギタリストであるニール・ショーンを中心に、通好みの高い演奏能力と凝った楽曲(主にインスト曲)を売りにしていましたが、セールス的にはイマイチ振るわず、1975年にリリースしたデビューアルバム『Journey』も全米アルバムチャート138位止まりで、まだ知る人ぞ知る位の認識のバンドでしかありませんでした。
スティーヴ・ペリー加入で本格化!
結局、この初期(スティーヴ加入以前)ジャーニーは、この後も、2ndアルバム『Look into the Future』(全米アルバムチャート100位)、3rdアルバム『Next』(全米アルバムチャート85位)とアルバムをリリースしますが、ブレイクには至らず、当時の音楽メディアの評価も「チンケな、これといって見せ場の無い平凡なポップロックバンド」などと散々なものでした。
このような状態が、3年ほど続いたのち、マネージャーをずっと務めていたハービー・ハーバートはバンドを上昇させるには大改革が必要と決意し、当時は兼任で借りてきていたボーカルを切り、専任のボーカルとしてスティーヴ・ペリーを採用しました。
1977年、4作目のアルバムを制作中の出来事でした。
この時より、バンドは5人編成となりますが、マネージャーのこの英断が見事に命中し、翌年リリースしたジャーニー4枚目のアルバム『Infinity』は、初めて、全米でBillboard 200のトップ40入り(21位)を果たしました。
ジャーニー黄金時代へ
専属ヴォーカリスト・スティーヴ・ペリーが加入して新体制でリリースした4thアルバム『Infinity』が、商業的成功を収め、手ごたえを得たジャーニーは、その後、1979年には5枚目のアルバムである『Evolution』を発表。
タイトルの通り、バンドとしての進化の見られるこのアルバムは、全米(Billboard 200)で前作を上回る全米アルバムチャート20位を記録。
アメリカでも、第一線クラスのバンドの仲間入りを果たし、更なる進化の予兆を示して、1980年代へと突入していきます。
そんな上げ基調の空気の中で、1980年の3月にリリースされたのが、ジャーニー6枚目となるスタジオアルバム『Departure』でした。
ここから、ジャーニーの大躍進、黄金時代が始まります。
Departure

Departure
journey departure CD Covers
1980年代の幕開けとともに、リリースされたジャーニー6枚目のスタジオアルバム。
そのアルバムタイトルとなったDepartureの由来について、ボーカルのスティーヴ・ペリーは「バンドの音楽的方向性や今までの在り方から、脱却(Departure)をあらわした」と語っている通り、これまでより一皮剥けたジャーニーが姿を現わしています。
この6thアルバムは、ジャーニー大ブレイクの口火を切った形で、セールスも大成功。
全米アルバムチャートでは、過去最高の8位まで上がりました。
【収録曲】
Any Way You Want It
Walks Like a Lady
Someday Soon
People and Places
Precious Time
Where Were You
I'm Cryin
Line of Fire
Departure
Good Morning Girl
Stay Awhile
Homemade Love
サウンド面でも大きな変革、新たなキーボードの加入
6thアルバム『Departure』で、バンドのキャリアとしては初の全米アルバムチャートトップ10入りを果たし、遂にブレイクスルーを果たしたジャーニー。
しかし、バンド結成当初からのオリジナルメンバーであり、キーボードのグレッグ・ローリーが、心労などで非常に精神が不安定になってしまい、遂に脱退してしまいます。
ローリーは自分の後任に、当時ジャーニーのツアーの前座を務めていたバンドであるベイビーズ(ジョン・ウェイトがボーカルを務めていた)のキーボーディストであったジョナサン・ケインを推薦しました。
ジョナサンはベイビーズと、どちらを選ぶか迷いましたが、最終的にジャーニーに加わることを選択。
これによって、ジャーニーはサウンド面でリニューアルします。
ジョナサンは、シンセを多用した演奏スタイルに加えて、優れたソングライターとしての素養が高く、これ以後、ジャーニーは新たに曲を書くメンバーが増えて、作品の幅がグンと広がりました。
そうした新体制の中で制作され、1981年の8月にリリースされたジャーニー7枚目のアルバムが『Escape』です。
このアルバムがスーパースターとしてのジャーニーの地位を決定づけることになります。
Escape

Escape
聴いたCD Rock Vol.18 ESCAPE ( ミュージシャン ) - Guitars & Beers - Yahoo!ブログ
1981年8月にリリースされたジャーニー7枚目となるスタジオアルバムです。
前作『Departure』でブレイクスルーを果たし、更に、キーボードに新たなソングメーカーであるジョナサン・ケインを加えて、最強メンバーで放ったアルバムでもありました。
狙い通り、本作は、1980年代らしい、ポップでキャッチーなナンバーだらけの秀作となり、セールスは、ジャーニー初の、全米アルバムチャート1位をはじめ、全世界で爆発的に大ヒット。
売上枚数も全世界で、1000万枚以上を売上げるというモンスターアルバムとなりました。
このアルバムからシングルカットされた曲も、次々とスマッシュヒットを飛ばし、中でも、2004年に、歌姫マライア・キャリーにもカヴァーされてお馴染みの『Open Arms』は、全米ビルボードシングルチャートで4週連続の2位を記録しました。
この『Escape』の超メガヒットによって、ジャーニーはアメリカを代表するトップバンドの地位まで一気に昇りつめ、スーパースターの仲間入りを果たしました。
【収録曲】
Don't Stop Believin'
Stone in Love
Who's Crying Now
Keep on Runnin'
Still They Ride
Escape
Lay It Down
Dead or Alive
Mother, Father
Open Arms
Frontiers

1983年2月(日本発売は5月)にリリースされたジャーニー8枚目となるスタジオアルバム。
この8thアルバムこそ、ジャーニーの最絶頂期の黄金時代のアルバムと言って良いでしょう。
収録曲は、ヘヴィでハードなロックから、メロディアスなスローバラード、ミディアムなアダルトコンテンポラリー調のナンバーまで多彩であり、これまでのジャーニーの一つの形がここにおいて完成形を迎えた充実の作品となっています。
セールスの方も、大成功であり、アメリカだけで累計600万枚以上というビッグセールスを記録。
全米アルバムチャートでも、9週連続2位という変わった記録(この間の1位は歴史的売上で歴代1位のお化けセールスアルバムであるマイケル・ジャクソン『Thriller』だったため)も樹立しました。
この『Frontiers』において、世界中でジャーニーの名を知らないものはいない、というほどの存在まで上り詰めました。
【収録曲】
Separate Ways (Worlds Apart)
Send Her My Love
Chain Reaction
After the Fall
Faithfully
Edge Of The Blade
Troubled Child
Back Talk
Frontiers
Rubicon
メンバーは変われど、未だバリバリ活動を続けるジャーニー
メガヒットアルバム『Frontiers』の後は、大規模なワールドツアーも成功させたり、スティーヴ・ペリーがソロアルバムを出したり、単独で「USA for Africa」に参加したり、ニール・ショーンもソロプロジェクトを始めたりして、それぞれが好きなことを始めだしました。
もう成功も名誉も手に入れ、メンバー全員が経済的にも充分潤ったので、次の段階へ入ったのです。
そうして、その3年後の1986年5月に、久々にリリースされたアルバム『Raised On Radio』の制作に集結したメンバーはスティーヴ・ペリー、ニール・ショーン、ジョナサン・ケインの3人だけであり、他の2人は自分の好きなスタイルの音楽をやるために自然に脱退していました。
そして、この『Raised On Radio』が結果的に、黄金期のジャーニー最後のアルバムとなりました。
(黄金時代のメンバーはこのアルバムで一旦解散)
『Raised On Radio』は全米アルバムチャートで4位、全英で22位とまずまずの商業的成功は収めましたが、もう絶頂を極めたメンバーにジャーニーで一緒にやり続けるモチベーションは残っていませんでした。
現在でもジャーニーは、オリジナルメンバーで核のギタリスト、ニール・ショーン以外はほとんどのメンバーが変わりました。
ボーカルもフィリピン人のアーネル・ピネダが現在は務めて、スティーヴ・ペリーばりの声量で、往年のヒットナンバーの数々も歌い上げています。