Elvis Costello

Elvis Costello
イギリスが生んだ偉大なるメロディメーカーというと、60年代を代表してポール・マッカートニー、次いで70年代を代表するとなるとエルトン・ジョンでしょうか。そして続く80年代となると、それはもうエルビス・コステロ。
日本においてはエルビス・コステロの知名度こそポール・マッカートニー、エルトン・ジョンには劣るかと思いますが、メロディメーカーとしての才能は二人と肩を並べる存在です。
因みにイギリスでは“キング・エルビス”というとプレスリーではなく、コステロを指すほどです。
そのエルビス・コステロは1954年8月25日にロンドンに生まれました。本名をデクラン・パトリック・アロイシャス・マクマナスと言います。
パンクムーブメント真っただ中の1977年にニック・ロウのプロデュースでシングル「レス・ザン・ゼロ(Less Than Zero)」でデビューしています。
本人はパンクとは一線を引いているといった発言をしていますが、当時を知る人によればエルビス・コステロはパンクそのものだったようです。
それではエルビス・コステロが大御所と呼ばれるようになる前、パンクの香り漂う初期を見ていきましょう。
My Aim Is True
全英14位となったエルビス・コステロのデビューアルバム「マイ・エイム・イズ・トゥルー」です。スティッフ・レコード から発売されました。
バック演奏は後にヒューイ・ルイス&ザ・ニュースとなるクローバーが担当しています。
パンクの時代とはいえ、粗削りでありアルバムとしての統一感もまだまだといえますが、初期衝動に貫かれた素晴らしいデビュー・アルバムです。
ニック・ロウのプロデュースもよかったのでしょう。
パンクを感じさせる勢いのある曲がある一方で、リンダ・ロンシュタット等にカヴァーされたエルビス・コステロを代表するバラード「アリスン」が収録されており、早くもメロディメーカーとしての片りんをのぞかせています。

マイ・エイム・イズ・トゥルー
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天使が俺の赤い靴を持って行ってしまうと歌われる「レッド・シューズ」。バックコーラスとの掛け合いも楽しい軽快な曲ですが、歌詞は政治的なことを皮肉っているそうです。
一聴しただけではよくわからないシニカルなところが、いかにもエルビス・コステロといえます。
そして一般にはこの曲があるがためにこのアルバムは売れ続けているともいえます。大名曲と言ってもよいでしょう。「アリスン」です。
因みに本作のオリジナル・レコードの裏ジャケットは色違いが何種類もあります。まさにコレクターズ・アイテムですが、集めてみるのも楽しそうです。

裏ジャケット
This Year's Model
全英4位を記録した1978年発表のエルヴィス・コステロ&ジ・アトラクションズのアルバム「ディス・イヤーズ・モデル」です。
レコード会社を移籍し、RADERSCOPEからのリリースとなっています。
このアルバムで特筆すべきことは、この後くっ付いたり離れたりしながらも長い付き合いとなるジ・アトラクションズとの初共演ということです。
ジ・アトラクションズのメンバーはピート・トーマス(ドラム)、ブルース・トーマス(ベース)、スティーヴ・ナイーヴ(キーボード)の3人です。
先行シングルは「(I Don't Want to Go to) Chelsea」、2ndシングルは「Pump It Up」。そしてイギリス盤のアルバムには未収録だった「Radio Radio」がそれぞれヒットしました。

ディス・イヤーズ・モデル
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曲はもちろんカッコいいですが、ジ・アトラクションズのタイトな演奏は素晴らしいですね。エルビス・コステロとの相性バッチリでしょう。
そして第2弾シングル「パンプ・イット・アップ」です。なんと強力なビートなんでしょう!
カッコよすぎます。
因みにプロモーション・ビデオのエルビス・コステロの奇妙な動きは身障者のマネだそうです。
後にシングルとして日の目を見たとはいえ、何故この曲をイギリスのオリジナル盤に収録しなかったのか不思議でなりません。「レイディオ、レイディオ」いい曲です。
Armed Forces
1979年発売のアルバム「アームド・フォーセス」ですが、原題は「エモーショナル・ファシズム」だったとか(コラコラ)。
また、オリジナルの初回版には"Live At Hollywood High"という3曲入りのEPが付属していて「このシングルにはアルバムがおまけとして付いています」の注意書きがされていました。
しかし、このアルバムは実にポップで聴きやすいです。歌詞の方は相変わらず辛辣ですが。。。
シングルカットされた「オリヴァーズ・アーミー」は全英2位となる大ヒットを記録しています。

アームド・フォーセス
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Get Happy!!
1980年発売のアルバム「ゲット・ハッピー」には20曲も収録されているにも関わらず2枚組というわけではありません。通常の1枚ものです。にも拘わらず20曲も収録されているのは各曲が2分前後という異常にコンパクトな楽曲となっているからです。
80年代に入り最初のアルバムということでいつも以上に力が入ったのか、いつにも増してスピード感があります。
飽きさせません、楽しめます。ポップな曲のオンパレードで、まさにゲット・ハッピーです。
実は本作発売の前年にエルビス・コステロは「人種差別的発言」を発するというスキャンダルな事件を起こしています。酒の席でのことであり真意とは違うとして人種差別発言を否定していますが、本作はその回答とされています。
本作はモータウンやスタックスなどのR&Bスタイルが前面にでていますが、つまり黒人に対する深い尊敬の念を持っているというわけです。
その一環でしょうアルバム・ジャケットも凝ったものになっています。
ジャケットの真ん中にある白い円は、オリジナル・レコードでは印刷されているものではありませんでした。古いR&Bのジャケットの雰囲気を出すため、一枚ずつわざと傷を付けたのだそうです。

ゲット・ハッピー
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このアルバムからは3曲がシングルになっています。まずは名曲の誉れ高い「ニュー・アムステルダム」です。
全英4位の大ヒットとなった「フォーリング・ダウン」は、サム&デイヴの曲のカバーです。オリジナルはスローなバラードですが、アップテンポにアレンジしてあります。
そして最後に「ハイ・フィデリティ」です。
聴きやすくポップな曲がこれでもかと詰め込まれたアルバム「ゲット・ハッピー」ですから全英2位はともかくとして、全米でも11位とヒットしたことも頷けます。
そして80年代、鍛え上げられ練り上げられたエルビス・コステロのソングライターとしての才能が開花するわけですが、それはまた別の機会に!