高校野球史に残る大逆転試合~昭和59年・夏~金足農業対PL学園

高校野球史に残る大逆転試合~昭和59年・夏~金足農業対PL学園

高校野球史に残る大逆転試合をいくつか紹介しています。ここでは、昭和59年・夏の大会準決勝。金足農業対PL学園戦をとりあげます。桑田・清原(当時高校2年生)擁する優勝候補大本命のPL学園に挑んだ「雑草軍団」の戦いの結末は…。


・「KKコンビ」2年生の夏

桑田真澄・清原和博が春夏連覇をかけて出場した第56回選抜高校野球大会(1984年)で準優勝(岩倉高校に0-1で敗戦)したPL学園は、同年夏の第66回全国高等学校野球選手権大会に出場します。優勝候補の最右翼のPL学園を一体どのチームが倒すのか?という事に注目が集まっていました。

PL学園、清原和博・1試合3ホームラン

この大会、PL学園が初めて登場したのは、8月10日の第4試合。対戦相手は「野球ドコロ」として有名な愛知県代表の享栄高校でした。「一回戦屈指の好カード」と言われたこの試合、PL学園の清原選手が1試合に3本のホームランを放つなどPL学園打線が大爆発。14対1と圧勝します。

優勝候補と言われる学校にとって鬼門とよく言われる初戦に圧勝し、PL学園はまさに前評判通りの力を見せつけたのです。

対決までの両校の歩み

清原選手の1試合3本塁打が生れた同じ8月10日の第一試合。広島県代表の名門・広島商業高校が、夏初出場の金足農業高校(秋田)に3-6で敗れるという「波乱」が起こりました。金足農業高校は同年の春の選抜大会にも出場していて、見事に初戦を突破。2回戦で敗れるものの、優勝した岩倉高校相手に健闘を見せていた(4-6で敗戦)…とはいえ、全国的にはまだまだ無名の金足農業高校が、その後、甲子園に旋風を巻き起こしていきます。

水沢博文投手

2回戦の対明石学園高校を9-1、都城高校を9-1と3戦続けて相手を圧倒して勝ち上がってきたPL学園ですが、準々決勝で名門・松山商業との対戦では初回に先制を許す苦しい展開。それでも7回に勝ち越すと、桑田投手がその後反撃を退けて2-1と辛勝。準決勝に駒を進めます。PL学園に対するは、2回戦で別府商(5-3)、3回戦で唐津商(6-4)、準々決勝で新潟南(6-0)と、戦うたびに自信を深めて強くなっていった感のある金足農業でした。この快進撃を支えたのはエースの水沢博文投手。最速141キロの速球に変化球を交え、準々決勝までの4試合で39個の三振を奪う好投を見せていました。

王者PL学園に挑んだ「雑草軍団」

試合は一回表から動きます。2アウト2塁の場面。打ち取られたかと思われた長谷川選手の打球がショートの前で大きく跳ねて、金足農業が先制。水沢投手相手に五回まで1安打と完璧に封じられていたPL学園は6回裏、エラーなど含めて1死1、2塁とチャンスを掴み、6番打者の北口選手が外角の球をうまくおっつけて、ライト線へタイムリーツーベースを放って同点に追いつきます。
この同点劇で金足農業もここまでか…と思われたのですが、直後の7回表、2死2塁から、7番打者の原田選手が放ったピッチャー返しの打球を、フィールディングに定評があった桑田選手が捕れず、無人の三遊間に転がる間に走者が生還し勝ち越しに成功。そして、次第に「PL学園が負けるのか…」というざわめきと、金足農業に対する声援が球場全体に広がっていきます。

金足農業が1つのアウトを取る度に大歓声が上がっていき、八回裏2アウト。あと4つのアウトで勝利が確定…と勝ちを意識したのか、それとも慎重になりすぎたのでしょうか、清原選手に四球を出し2アウト1塁。ここで迎えるのは、バッティングにも定評のあった桑田選手でした。
「ここはヒットを打ってもしょうがない。一振りにかけよう」と打席に入った桑田選手。
外角低めを狙った水沢投手のカーブが吸い寄せられるように、桑田選手の方に向かっていきました。
この失投を見逃さず、フルスイングした桑田の打球は左翼ポール際へ飛び込む逆転2ランとなり、結局そのまま3-2でPL学園は勝利します。

激闘を終えて

当時の記事

「大金星」まであと一歩のところまでPL学園を追いつめた金足農業のエース水沢投手に涙はなく、金足農業の選手たちに対する拍手は試合が終了しても暫く鳴り止みませんでした。

準優勝し、取手二高の選手と肩を組むKKコンビ

さて、決勝に進んだPL学園は、木内監督率いる取手二高と対戦。桑田選手は松山商業、金足農業との激闘の疲れが残っていたのか、序盤から取手二高打線につかまります。それでも、PL学園は八回・九回に3点差を追いつく粘りを見せ、準決勝に続いてまたも「逆転のPL」か?と思われたものの、延長十回に3ラン本塁打を打たれて万事休す。PL学園はこの年春の選抜に続いて準優勝に終わったのです。

「PL学園戦での歓声は忘れられない」と語る嶋崎久美監督は、春3回、夏4回で通算7回チームを甲子園に導き、95年夏の甲子園ではベスト8に進出。KKコンビと対戦した頃は「無名高」だったチームを強豪校に育て上げました。
嶋崎監督は2012年4月からノースアジア大学硬式野球部監督に就任し、神宮を目指す学生を指導しています。

嶋崎久美監督

この記事内で「波乱」とか「雑草」とか「王者」という表現を使っていますが、プレーするのは同じ高校生同士。考えられないような事が起こるというのが高校野球の魅力だと筆者は思うのです。

関連する投稿


【訃報】巨人軍終身名誉監督・長嶋茂雄さん死去。3月には大谷翔平との“対決”が話題に

【訃報】巨人軍終身名誉監督・長嶋茂雄さん死去。3月には大谷翔平との“対決”が話題に

プロ野球界における伝説的存在“ミスタープロ野球”こと長嶋茂雄(ながしま しげお)さんが3日、肺炎のため東京都内の病院で亡くなっていたことが明らかとなりました。89歳でした。


【藤川球児】広末涼子と同級生!? 火の玉ストレート誕生前の球児の球歴

【藤川球児】広末涼子と同級生!? 火の玉ストレート誕生前の球児の球歴

2025年より阪神タイガースの監督に就任した藤川球児。現役時代は、"火の玉ストレート" と呼ばれる "魔球" で活躍した名投手ですが、魔球誕生以前にもたびたび話題になっていた選手でした。球児という名前、ドラフト1位、広末涼子と同級生など、火の玉ストレート誕生前の藤川球児のエピソードを振り返ります。


昭和100年に甦る「昭和野球」の魂!江本孟紀が令和のプロ野球に喝を入れる新刊『昭和な野球がオモロい!』が発売決定!!

昭和100年に甦る「昭和野球」の魂!江本孟紀が令和のプロ野球に喝を入れる新刊『昭和な野球がオモロい!』が発売決定!!

マガジンハウスより、日本プロ野球界のご意見番・エモやんこと江本孟紀が、昭和100年の節目に「令和のプロ野球」に痛烈なメッセージを投げかける新刊『昭和な野球がオモロい!』が発売されます。


【高校野球】40年前の選抜!プロ野球の名選手が出場していた歴史的大会!

【高校野球】40年前の選抜!プロ野球の名選手が出場していた歴史的大会!

今から40年前、1985年の春に開催された「第57回選抜高等学校野球大会」には、後のプロ野球選手が大勢出場していました。桑田真澄、清原和博、佐々木主浩、長谷川滋利、奈良原浩、葛西稔、渡辺智男・・・。他にはどんな選手がいたのでしょうか?40年前の選抜に出場していた、後のプロ野球選手を振り返ります。


“松坂世代”最後の一人、ソフトバンクの和田毅投手が引退。松坂世代のプロ野球選手を振り返る!!

“松坂世代”最後の一人、ソフトバンクの和田毅投手が引退。松坂世代のプロ野球選手を振り返る!!

ソフトバンクの和田毅投手(43)が今季限りでの現役引退を発表し、11月5日に福岡市内で記者会見を行いました。


最新の投稿


福岡の食のテーマパーク「直方がんだ びっくり市」が50周年!大盛況で幕を閉じた「半世紀祭」をレポ

福岡の食のテーマパーク「直方がんだ びっくり市」が50周年!大盛況で幕を閉じた「半世紀祭」をレポ

1976年の創業から50周年を迎えた福岡県直方市の「直方がんだ びっくり市」にて、2026年4月17日から19日までアニバーサリーイベント「半世紀祭」が開催された。銘柄牛が50%OFFになる「肉袋」や名物セールの復活、地元ヒーローの参戦など、半世紀の感謝を込めた熱気あふれる3日間の模様を振り返る。


『メタルスラッグ』シリーズ30周年記念プロジェクト始動!新作開発や特設サイト、記念映像が一挙公開

『メタルスラッグ』シリーズ30周年記念プロジェクト始動!新作開発や特設サイト、記念映像が一挙公開

アクションゲームの金字塔『メタルスラッグ』が2026年4月19日に誕生30周年を迎えた。株式会社SNKはこれを記念し、シリーズの再燃・リブートを掲げた記念プロジェクトを始動。新作ゲームの開発を含む多彩な企画の推進や、歴史を振り返る記念映像の公開、特設サイトの開設など、世界中のファンへ向けた展開が始まる。


山下達郎ソロ・デビュー50周年記念!JOURNAL STANDARDとコラボした限定Tシャツが発売

山下達郎ソロ・デビュー50周年記念!JOURNAL STANDARDとコラボした限定Tシャツが発売

ソロ・デビュー50周年を迎えた音楽界のレジェンド・山下達郎とJOURNAL STANDARDが特別なコラボレーションを実現。1stアルバム『CIRCUS TOWN』収録の名曲「WINDY LADY」をテーマにしたTEEがリリースされる。音楽史に刻まれた名盤の空気感を纏える、ファン垂涎の記念アイテムが登場だ。


中山美穂の伝説が蘇る!全175曲収録の完全保存版Blu-ray BOXが6月17日発売決定

中山美穂の伝説が蘇る!全175曲収録の完全保存版Blu-ray BOXが6月17日発売決定

中山美穂のコンサート史を凝縮した5枚組Blu-ray BOX『Miho Nakayama Complete Blu-ray BOX~Forever』が2026年6月17日に発売される。1986年の初公演から98年までを網羅し、全編HD・オーディオリマスタリングを敢行。未発表ライブ映像やMVも初収録した、ファン必携の記念碑的作品だ。


俳優・水谷豊の真実に迫る著作『YUTAKA MIZUTANI』発売!監督としての人生と秘められた過去を解禁

俳優・水谷豊の真実に迫る著作『YUTAKA MIZUTANI』発売!監督としての人生と秘められた過去を解禁

俳優・水谷豊の著作『YUTAKA MIZUTANI』が発売される。「傷だらけの天使」や「熱中時代」、そして「相棒」と、各時代でトップを走り続ける彼が、自らの監督作品を通じて「誰も知らない本当の水谷豊」を明かす。サイン本お渡し会や、代表作『青春の殺人者』の50周年記念Tシャツ発売など、ファン必見の情報が満載だ。