作品紹介
1986年7月公開。
時代は戦争の真最中。軍部と動物たち(動物園)と飼育員たち、そしてそこに関わる人々の生き様、ゾウを中心とした悲惨な運命をたどる動物たちを描いた作品。
第2次世界大戦中、上野動物園で実際にあった出来事を描いた「かわいそうなぞう」が元になっていると言われています。
この作品はビデオでのみ現存しており、DVD化はされていません。動物虐待法などの関係上地上波でも放映が控えられてますので幻の名作と言われています。
子象物語 地上に降りた天使 | Movie Walker
サクラと正太
ハナ子と正太
全編において涙なくして見られない物語です。
軍の命令で飼育員たちが涙ながらに動物を殺処分しようとするシーン。
生まれた時から正太が手塩にかけて育ててきたハナ子と母象のサクラを、軍部があの手この手で殺そうとするシーン。
空腹と病気で死んだサクラにハナ子が体をすりよせ、ハナで撫でてあげるシーン。
秋元少佐がハナ子を銃殺するため、正太に急所である眉間に記しをつけさせるシーン。
正太と節子が慰霊碑にいつまでも手を合わせ頭を下げるラストシーン。
動物園の動物たちの殺処分が戦時中実際に行われていたことかと思うと、何ともいたたまれない気持ちになります。。。
プロモーションビデオ
主題歌
象の国
劇中のサクラとハナ子は当時の湘南動物プロダクション(旧;山小川ファーム、現;市原ぞうの国 現在の湘南動物プロダクションとは業務関係はない)が1984年にプロデュース依頼され、出演させたものです。その時に番組とのタイアップもあり、代表者;坂本小百合氏の息子で故哲夢氏が小学生ながら象使いを目指し、中学生で単身タイへ渡り修行をして1人前の象使いになった。というエピソードがあります。
残念ながら哲夢さんは、1992年11月10日、猫を連れてCM撮影の現場に向かう途中に交通事故で亡くなられてしまいました。20歳という若さでした。
後に「星になった少年」で映画化され、劇中のゾウ「ランディ」が有名になりました。
市原ぞうの国
主な出演者
武田鉄矢(田辺正太)
萩尾みどり(田辺節子)
名古屋章 (富士見動物園 高橋園長)
大滝秀治 (長野動物園 栗田園長)
遥くらら(木暮幸子)
永島敏行(秋元圭司)
その他にも、大山のぶよ、三谷昇、神山繁、河原崎長一郎等々豪華俳優陣が脇をしめてスクリーンを盛り上げています。
戦争と動物たち
昭和10年代(1935年~)の日本は戦争に明け暮れていました。
そして、昭和16年(1941年)に勃発した太平洋戦争によって、動物園の動物たちが犠牲になっていきます。
「戦時猛獣処分」。戦争中に動物園などが爆撃され、猛獣が逃げだして一般人に被害が及ばないよう殺処分する、というもの。しかし、実際のところ、食糧難や戦争に対する国民の士気高揚を意図したところが大きいとも言われています。行政や軍の命令下で実行されました。
最初に犠牲になったのは、上野動物園。27頭の猛獣たち(ゾウ、クマ、ライオン、ヒョウ等々)が次々と殺処分されました。大阪の天王寺動物園や名古屋の東山動物園(現東山動植物園)仙台・京都・福岡等々でも同じような悲惨な出来事が起きていました。
人間の都合で勝手に連れてこられ、人間の都合で勝手に命を奪われた動物たち。
あまりにも残酷すぎる所業ではありませんか。
このような状況下でも、名古屋の東山動物園では戦中から戦後、国内で唯一2頭のゾウが生きのびました。エルドとマカニーです。
他の動物園や子供たちから来園依頼があったのですが、年齢・2匹の精神状態等の関係で依頼に答えることができずにいました。そこで国鉄の協力の元できたのが「ゾウ列車」。
運ぶのはゾウではなく子供たちです。日本各地から名古屋に向けて、ゾウを見たい子供たちに来てもらおうというものです。
昭和24年(1949年)に実施され、のべ6万人以上の子供たちを運んだとされています。
ちなみに列車の運行時間ですが、東京駅21:50発、名古屋駅7:47着。なんと東京⇔名古屋駅間だけで10時間もかかったのです。
子供たちのゾウに対する情熱は、それはそれは大きなものだったのですねぇ。
2015年 中日新聞の掲載記事
東山動植物園 ゾージアム内掲載
名古屋東山動植物園
大阪市天王寺動物園
動物たちを慈しんで
上野動物園には亡くなった動物たちの慰霊碑が建立されています。
ここには戦争の犠牲になった動物たちも慰霊されていて千羽鶴や花が供えられてます。
慰霊碑には「動物よ安らかに」と書かれており、人々の祈りの気持ちがこめられています。
上野動物園 慰霊碑
餓死したジョン(上野動物園)
3頭のゾウたち
ジョン
トンキー
花子(ワンリー)