ロス疑惑
私たちの世代、ワイドショーで大きく取り上げられたこの事件のことを憶えている人は多いのではないでしょうか。
1981年から1982年にわたり、アメリカ・ロサンゼルスで起こった銃殺・傷害事件に関して、元実業家、随筆家、タレント、俳優である三浦和義氏にかけられた一連の疑惑、それが『ロス疑惑』でした。
ロス事件、三浦和義事件、疑惑の銃弾事件などと呼ばれることもあります。
その「疑惑」は保険金目当ての殺人でした
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1981年、ロサンゼルスで起こった殺人事件に関して、当初被害者の夫と見られていた三浦和義氏が「保険金殺人の犯人」なのではないかと日本のマスコミによって嫌疑がかけられ、過熱した報道合戦となり、事件に対する科学的な考察よりも三浦氏にまつわる疑惑について盛んに報じられていました。
三浦氏は、日本で行われた裁判で2003年、無期懲役から一転して無罪が決まりましたが、2008年、米国領土内において共謀罪容疑で捜査当局に逮捕され、ロスに移送後自殺、遺体として発見されたのです。
三浦和義氏を振り返る
一時はバラエティ番組に出演することも
ニュースとワイドショーが別枠だった時代に、この事件はどちらでも報道されていたことが印象的でした。
生い立ち
父親は建築会社に勤める土木技師、母親は料亭の娘で、山梨県で生まれ、幼少期を北海道で過ごしたのち千葉県で育ちます。
小学生だったころ、映画プロデューサーだった叔母、水の江瀧子の家へ遊びに行くと沢山の俳優たちからお年玉をもらい、その額はなんと30万~40万円に達していたそうです。このことについては「嬉しかったけど、大人を見くびることにはなった。どうしても歪むだろう」と語っています。
子役時代
水の江瀧子から俳優にならないかと勧められ、彼女のプロデュースする映画で石原裕次郎の少年時代を演じる子役として出演したことがあります。
当時、瀧子さんの実子説というものがあり、撮影所のスチール担当者から「水の江さんの子供なんだから、やっぱり大きくなったら役者になるんだろう」と話しかけられ、三浦氏自身もこの実子説を信じていたらしい、という時期がありましたが、1985年には「水の江滝子の実子説というのはなんの根拠もありません」と否定するようになりました。
その後、日立市へロケに行ったときに芸能界というものに愛想が尽きて勝手に帰宅、そのまま芸能界からは引退しました。
青年時代
中学校在学中は複数回の家出を経験。教師と喧嘩して窓から飛び出したりと、とにかく破天荒で家から数十万円を持ち出して大阪に行ったこともあったそうです。このころ、精神病院に入れられていたこともあるとか。
その後、様々なものに影響を受け、海外に出ることを志したり、陸上自衛隊少年工科学校を受験して失敗したり、なんだかんだあって整備工になります。
やがて学歴の必要性を感じ、高校に進学。しかし、生徒会長でありながら女子生徒と授業をサボって箱根で一泊し停学処分を受けたり、強盗傷害やバイク泥棒、日本刀不法所持で逮捕されるなどの問題行動を度々起こしていたそうです。
1966年には放火などの容疑で逮捕され少年刑務所で7年間の服役を経験しています。鑑別所からの脱走歴なども…。
実業家
実業家としての顔も
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出所後は『土曜漫画』編集部に入り、高井研一郎やはらたいらといった漫画家の原稿を取りに行き、家に泊まりこむといった生活を送っていました。1974年には『週刊漫画』の編集部に入り、雑用係を務めていたそうです。
その後、ロサンゼルスのカルチャー誌『WET』の日本駐在員を経て、1976年には雑貨輸入会社「フルハムロード」を設立しました。
「ロス疑惑」
当初は「悲劇の夫」とされていましたが…?
三浦和義 - Wikipedia
銃撃事件の無罪判決
有罪から一転、無罪が確定
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三浦和義 - Wikipedia
アメリカ捜査当局に逮捕
アメリカ当局による逮捕
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2008年2月に、旅行中だった三浦がアメリカ捜査当局に殺人罪及び殺人共謀罪の容疑で逮捕されました。
弁護側は一事不再理を根拠に逮捕状の無効を主張していましたが、ロサンゼルス郡上級裁判所が共謀罪を有効とする判決を下しました。その後はサイパン・北マリアナ上級裁判所により身柄をロサンゼルスに移送することが決まりました。
死亡
ロスに到着した2008年10月、三浦はロス市警の留置施設内で、シャツで首を吊って自殺しました。
彼の死亡が確認された搬送先の病院は偶然にも、1981年の銃撃事件で妻が搬送された病院と同じだったそうです。
遺体はロサンゼルスで荼毘に付され、同年10月25日、妻とともに日本に”帰国”しました。
いまも残る様々な事件・人物検証
<2019年4月1日追記>
3月31日に放送されたフジテレビ開局60周年特別企画「報道スクープ映像 昭和・平成の衝撃事件!大追跡SP」にて、ロス疑惑が取り上げられました。
番組内、当時を再現したドラマで、俳優の要潤が三浦和義を好演。日本への帰国前日の取り調べでポリグラフ(嘘発見器)にかけられる事になった際の、刑事との舌戦は非常にリアリティがあり、惹きつけられました。
それもそのはず、同特集は元ロス市警のジミー佐古田氏の証言をもとに制作されていました。当時、なんとしてもアメリカ領内での逮捕を狙っていたという彼の証言が反映されているので、リアリティがあるのも当然で、非常に優れた再現ドラマになっておりました。