坂本博之 「KO命」「殺気と拳の力は比例する」「俺は絶対に倒れないよっていう気迫を出せば倒れない」」逆境を信念で克服したKOキング

坂本博之 「KO命」「殺気と拳の力は比例する」「俺は絶対に倒れないよっていう気迫を出せば倒れない」」逆境を信念で克服したKOキング

ボクサーとして「KO命」「殺気と拳の力は比例する」とスポーツ化してしまったボクシングの原点回帰を体現、人としても「あきらめても仕方ない、熱を持って生きろ!」と訴える。後退せず前進、立ち向かうというシンプルだけど難しいことを教えてくれる。


無敗のまま日本チャンピオン、肩から骨の欠片が数十個

デビュー後、7連勝で全日本新人王獲得。
以後も連勝し12戦全勝(10KO)。
そして日本チャンピオン、リック吉村に挑戦した。
リック吉村は15勝(9KO)2敗、J・ウェルター級とライト級の2つの階級で日本チャンピオンになったテクニシャンだった。
8R、坂本の左フックがリックの顎に入ってダウン。
起き上がってきたリックを坂本は右ストレートで2度目のダウンを奪った。
9R、坂本はラッシュしレフリーが試合を止めた。
坂本博之は日本チャンピオンとなった。
試合後、リック吉村は病院で右肩の手術を受けた。
坂本のフックを受け砕けた肩から骨の欠片が30個出てきた。

KO命

「『効いたパンチは無かった。』
『今日は調子が悪かった、もう一度やりたい。』
自分が勝った相手にあれこれ言い訳されることほどムカつくことはない。
判定で下された勝ち負けは相手に負けた理由を正当化させてしまう余地ができてしまう。
圧倒的な勝ち方、完璧なKOで勝たなければ意味がない。
顎の骨でも肋の2、3本でもいい、骨を折るくらいのパンチを浴びせる。
大の字に寝かせ、自力では立てず、担架で運ばれ退場するような強烈なKOだ。
そういう倒され方をしたら完敗を認めるしかない。
心から敗北を認めるしかない。
坂本という名前を聞くだけで逃げたくなる。
雪辱なんてしたくない。
それくらい恐ろしいイメージを与えたい。
何の恨みがなくてもそういう気持ちでボクシングをしてきた。
KO命。
ボクシングはスポーツではなく勝負事なんだ。
勝者だけが光を浴び自らも輝き光放つ、敗者は暗黒のどん底に陥る。
そういう残酷なまでに道をはっきり分ける勝負。
それがボクシングの本質なのだ。
そういう勝負をして勝てば「どうだ!これがオレだ!坂本博之だ!」と見せつけることができる。
大差のポイントで勝っていても安全運転で勝ち逃げしようとしたり
逆転を恐れ倒せるチャンスを放棄したり
絶対しない。
チャンスと見たら一気に攻め立てる。
ボクサーにもそれぞれ考え方があるから
『内容はどうでもいい勝てばいい』
『判定勝ちも勝ちは勝ち』
っていうようなボクシング哲学も否定する気は全然ない。
でも1つだけ言える。
そういうボクサーはオレみたいな奴とやったら負けるよ。」
(坂本博之)

殺気と拳の力は比例する

「ハードヒッター、倒し屋、デビュー当時からKO率が高いオレはそう呼ばれた。
『僕はパンチがないから・・・』
『パンチがあっていいね・・・』
たまに他のボクサーから言われる。
確かに腕っ節には自身があるし、肉体的素質は恵まれているほうかもしれない。
でもオレは肉体的なパンチ力だけで倒してきたんじゃない。
オレは「殺気と拳の力は比例する」という考えを持っている。
殺気を出すことでパンチ力は増強するって信じている。
執着心、野望、集中力、危機感、勝利へのポジティブでl強烈な精神力が潜在能力を引き出す。
これが殺気を生む。
拳に力として伝わる。
相手は倒れる。
そういう強いココロの力を持つボクサーはハートのあるパンチを打つ。
肉体的なパンチングパワーが乏しくても殺気を出してハートで相手を倒すことはできる。
パンチがないから倒せないというのは言い訳だと思う。
逆に倒れるのその殺気に負けてしまっているのだ。
『顎が弱い』
『ボディがもろい』
『打たれ弱い』
見ている人はは簡単にそう評価する。
これもオレは「打たれ弱い体質なんていうものはない」と思っている
ボクサーが倒れるときは
肉体的なコンディショニングや強さを足りない、やる気が足りない、
相手の殺気や圧力に耐え切る精神力が足りないとか、
なにせ気が弱っているときなんだ。
「いくらパンチをもらっても俺は絶対に効かない、倒れない」
そう決めて戦えば絶対に効かないし倒れないと思っている。
俺は絶対に倒れないよっていう気迫を出せば倒れない。」
(坂本博之)

ファン・マルチン・コッジ、1階級上の元世界王者と対戦

17戦目で世界ランク入り(WBA11位)を果たした。
その後も2勝し19連勝。
そしてファン・マルチン・コッジとの試合が決まった。
コッジは
前WBAジュニアウェルター級の世界チャンピオンで
73戦68勝(41KO)2敗3分け、
2度世界チャンピオンになった実績を持っていた。
坂本博之は3Rにボディーにアッパーをもらって初めてダウンした。
立ち上がるもコッジのスパートに再びダウン。

しかし坂本博之は再び起き上がった。
「あきらめずに頑張れば必ずチャンスはある」
以後はダウンすることはなかった。
しかしKO負けこそしなかったものの完敗だった。
この年の坂本博之の成績は4勝1敗。
KO勝ちは1度もなかった。
何かおかしかった。
新人王、日本チャンピオンとなって立場が変わり
嫌なしがらみが増え、
人間関係も悪化し
人間不信に陥っていた。
何よりも大切な気力が薄れていた。
皮肉なことに「殺気とパンチ力は比例する」という自論を自ら敗北することで証明してしまった。

渡米、アメリカでの経験をきっかけに復活

「このまま気力がわかないままでは絶対ダメになる。
これまでと同じ練習をしたらオレは終わってしまう。
この環境を何とか変えないと・・・」
坂本博之はアメリカに渡った。
ラスベガスに到着するとすぐに市内のジムに直行した。

異国のボクシングの練習風景は坂本博之に初心を取り戻すきっかけとなった。
トレーナーは決して練習を押しつけない。
なにより選手の意志が尊重される。
みんな伸び伸びとボクシングをやっていた。
いつの間にか失っていたボクシングの楽しさがそこにはあった。
そして坂本博之はジェフ・メイウェザーとの試合で判定勝ちした。
10日間のラスベガス滞在を終え、帰りの飛行機の中で坂本博之はジムを変えることを決めた。

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