「緋の稜線(ひのりょうせん)」昭和激動時代を生き抜いた女性の物語

「緋の稜線(ひのりょうせん)」昭和激動時代を生き抜いた女性の物語

1998年にTVドラマ化された「緋の稜線」は昭和元年に生まれた瞳子(とうこ)とその家族たちの激動の物語です。戦前・戦中・戦後に生きた女性たちの強さと弱さが余すところなく描かれています。登場人物たちのセリフには、読み手が「ハッ」とさせられる深い言葉がたくさん出てきます。人生の半ばを迎えたミドルエッジにぜひ読んでほしい作品なので、ご紹介したいと思います。


「緋の稜線(ひのりょうせん)」とは?

「緋の稜線」は1986年7月から1999年6月まで「Eleganceイブ」に掲載された少女漫画です。作者は人気漫画家の佐伯かよの先生です。その重厚なストーリーや緻密な人物描写から1994年に日本漫画家協会賞優秀賞を受賞しています。単行本は全25巻、文庫版は全16巻発刊されました。

また1998年には東海テレビ開局40周年記念番組として昼ドラになっています。原作がまだ終わっていない中での放送だったため、テレビ版と漫画原作では設定やラストが違うお話となっています。

佐伯かよの先生とは?

1952年山口県生まれで、夫は同じく漫画家の新谷かおる先生です。1972年に「りぼん増刊号」に掲載された「世界一幸福な男の話」でデビューしました。

代表作には「スマッシュ!メグ」「口紅コンバット」「燁姫(あきひ)」「星恋華(ほしれんげ)」などがあります。

佐伯かよの先生の描く女性はとても美しく、SFやサイコホラーなどのストーリーからスポーツ物、また芸能界にスポットをあてたストーリーなど多種多彩なラインナップとなっています。

「緋の稜線(ひのりょうせん)」あらすじ

昭和元年から終戦まで

昭和元年、胡桃沢家に三女として生まれた瞳子(とうこ)は、「その大きな瞳で世の中をよく見るように」と名づけられました。お茶やお花などお稽古ごとを嫌い、幼馴染で病弱な新之助、ガキ大将の龍一とともに野山を駆け回る少女でしたが、やがて成長し各務(かがみ)家へ嫁ぐことになります。

夫となった各務昇吾(かがみしょうご)とは一夜を共にしただけで、彼は戦地へと出征します。各務家に残された瞳子は義両親、義妹とともに暮らしていましたが、昭和20年3月の東京大空襲で焼け野原となり義父を亡くします。そんな中、途方に暮れる各務家を救ったのは瞳子でした。

菱屋(ひしや)百貨店の再建と再会

各務家の経営していた「菱屋(ひしや)百貨店」を再建することを誓った瞳子は、持ち前の明るさと勝負強さで男たちの中で才覚を現し、戦後復興の波に乗って百貨店を再建します。

そして戦争で死んだと思われていた夫・昇吾と再会するも離婚を決意していた瞳子ですが、昇吾に誘われて2人で山登りに行きます。その時、日の沈む山の稜線を見ながら昇吾が語ります。

そして通り過ぎた後をいつか振り返ったときに隣にいてほしい!
と、瞳子に想いを伝えます。

昇吾にどれだけ愛されていたかを知った瞳子は、改めて夫婦として生きていくことを誓うのでした。

三人の子の母となる瞳子

夫、昇吾と幸せに暮らしていた瞳子でしたが、昔から瞳子に想いを寄せていた新之助のお見舞いをした際、彼に無理やり暴行されてしまいます。新之助は重い結核でもう長くはなかったのです。身ごもった瞳子は産むべきか悩みますが、共に育てることを決心した昇吾に支えられ長男健吾を出産します。実の父である新之助は健吾が生まれる前に亡くなりました。

その後、昇吾の子である二男・昇平を出産し、瞳子は百貨店、昇吾は鉄道と事業をどんどん広げ仕事に没頭していく中で、昇吾は若き日の瞳子にそっくりの芸者、芙美香(ふみか)と出会います。芙美香(ふみか)に癒され心ひかれた昇吾は彼女を身請けし、やがて芙美香(ふみか)は昇吾の子どもを身ごもりますが、結核にかかり長くはない命だと知ります。

一方瞳子は昇吾の様子からやがて芙美香(ふみか)の存在と彼女の命が長くないこと、身ごもっていることを知ります。再び悩む瞳子ですが、芙美香(ふみか)が命に代えて産もうとしている子供を自分の子として育てることを約束し、芙美香(ふみか)の妊娠月にあわせてお腹に座布団を詰め妊婦を装います。

長女・望恵を出産すると同時に芙美香(ふみか)は他界しました。

成長した子供たちの苦悩と昇吾の飛行機事故

健吾、昇平、望恵(もえ)たちはそれぞれの生い立ちや環境に悩みながらも成長していきます。そんな中昇吾乗った飛行機が行方不明となり、昇吾の生死も不明となってしまいました。昇吾は生きていると信じながら瞳子は菱屋の社長代行を務め、さらに会長となって菱屋を盛りたててゆきます。

長男の健吾は他の百貨店で修業した後、その時に出来た仲間と独立し商社を立ち上げます。二男の昇平は大学受験に失敗した後に海外に渡り人脈を広げ、マルセル財閥の令嬢と親交を深めます。長女の望恵は海外留学の後、菱屋を支えることとなります。

昭和の終わりへ

瞳子の心の奥底にずっとあった愛人の子である望恵への溝を埋められないまま、望恵は交通事故で生死を彷徨うことになります。その時になってやっと芙美香(ふみか)との心の中での決着を付け心の底から望恵の母親でありたいと願う瞳子の祈りが通じたのか、望恵は奇跡的に一命を取りとめました。そしてその後、15年間行方不明だった昇吾の乗った飛行機が森林で見つかるのでした。

それから数年後、各務家の人々が集まるその日に昭和という時代が終わります。健吾、昇平、望恵にもそれぞれ子供が生まれていて、瞳子は空港に望恵を迎えに行く車窓を眺めながら、昭和の終わりを実感していくというラストでした。

「緋の稜線(ひのりょうせん)」最大の魅力

「緋の稜線(ひのりょうせん)」最大の魅力は、登場人物ひとりひとりの苦悩とその乗り越える心の過程が、時間の経過とともに詳しく描かれていることだと思います。

あまりにも登場人物が多いので、一人一人については詳しく書きませんが、たとえば主人公の瞳子は夫の愛人である芙美香の赤ちゃんを、自分が妊婦のフリをしてまで自分の子であるように見せかけて育てます。深い愛情を持って育てていきますが、けれど年を重ねるごとに芙美香に似てくる望恵をだんだん直視できなくなってきます。

そもそも芙美香が瞳子に似ていたので、周りから見れば自分にそっくりなのですが瞳子の心の中では違っていました。そしてその自分の心の闇に望恵を失いそうになって初めてきちんと向き合い、女として母として芙美香に負けていたと悟った上で望恵を自分の子供と出来たことに「これ以上のものはない」と涙するシーンがあるのですが、同じ女性として母としてすごく考えさせられる場面でした。

血のつながりより大切なもの

「緋の稜線(ひのりょうせん)」では血が繋がっていない子供たちが多数登場します。瞳子のところでは長男の健吾は父の昇吾と血のつながりはありませんが、誰よりも昇吾に似ていると言われます。

二男の昇平は唯一瞳子と昇吾の子供ですが、あまりに2人に似ていないので幼少時代は自分が貰われっ子だと疑っていました。成人してから父の昇吾に似てきます。

望恵は瞳子と血の繋がりはありませんが、実母の芙美香が瞳子の若い頃にそっくりだったので周囲から見れば見た目もそっくりと言われますが、一番似ているのは瞳子の人を惹きつけるところだと菱屋百貨店で言われています。

また瞳子の姉の寿々子は戦争孤児を引き取って養子にしているのですが、全く血の繋がりのない市子(いちこ)は誰よりも寿々子に似ていて、同じ新聞社に勤め、後に小説家になっています。

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