多くの子供たちに影響を与えた剣道マンガの名作
六三四の剣: 感想(評価/レビュー)[漫画]
「六三四の剣」のあらすじ
岩手県警機動隊員で「岩手の虎」と言われた剣道の達人の夏木栄一郎と、小学校教諭で剣道の全日本女子選手権優勝を果たし「東北の鬼ユリ」と呼ばれた夏木佳代の間に、男の子が生まれました。
6月3日午後4時生まれ、現代の宮本武蔵となれという思いから、「六三四」と名付けられました。

六三四の幼少時代
3歳の頃から父に剣道の手ほどきを受けるようになる六三四ですが、やんちゃで暴れん坊ですが、弱いものいじめはしない、元気な子供に育っていきます。まだ精神的に未熟な、子供の頃の六三四は、町道場に通うようになっても、ただ強い相手と戦うことを望み、昇級審査に対する不満を口にして、母に厳しくたしなめられたりします。

六三四の幼少期
六三四の剣 2巻 村上もとか - コミック小学館ブックス 公式配信
六三四が小学校1年生の時、全日本選手権準決勝で父栄一郎と、栄一郎の先輩で「天才剣士」とも言われる東堂国彦が対決し、東堂の鋭い突きを受けた栄一郎は、場外に転落しても何とか勝利し、決勝でも勝ったことで二連覇を達成しますがその直後突然倒れ、そのまま亡くなってしまいます。
父が東堂から受けた突きが原因でなくなったことで、東堂に恨みを持つようになり、一時は剣道を忘れたようにスキーに熱中する六三四でした。
六三四の小学生時代
父の死後、六三四は剣道をしようとせず、スキーに転向したように見えましたが、ひそかに「突き」の練習をしていました。4年生になった六三四は、父のかたきうちとばかりに、一人で東堂国彦を訪ね、対戦を申し込み、東堂はあえて対戦を承諾します。3年間練習した「突き」で東堂を倒そうとする六三四ですが、対峙した東堂に対して、打ち込むことができません。

父のかたきと憎む東堂国彦との対決
最大の復讐|グローバルな女になる!セルマ(Selma)のブログ
東堂国彦の言葉は、栄一郎と東堂の戦いは、ただの勝ち負けを決める勝負ではなく、剣士同士の戦いだったことを伝えています。さらに、修羅にも「突き」が通じなかったことで、つかみかかります。
その後、地元の剣道クラブに入会して、轟嵐子たちと共に全国大会に出場するまでになります。

小学生の六三四と修羅
「 長く愛する漫画」について ぐぅ〜たら日記/ウェブリブログ
そして高校生に成長した六三四たち
父が在籍した岩手県警の剣道場、父の大学の剣道部など、いろいろな場所でいろいろな人物に出会い、成長していきます。そうするうちに幼いころのやんちゃぶりも消え、礼儀も身につけます。

高校時代の六三四と修羅
「 長く愛する漫画」について ぐぅ〜たら日記/ウェブリブログ
父栄一郎の教え
そもそも六三四の父、栄一郎は六三四に「強くなれ」とは言いませんでした。「大きくなれ、岩手山のような大きな人間になれ」と伝えています。
自分の好きな岩手山のように、どっしりと大きな人間になってほしいという父の願い、信じて見守る母の思いを受け、剣友たちと切磋琢磨しながら、心も体も剣道も強くなっていきます。

父と見た岩手山のシーン
六三四たちのその後
マンガでは、高校3年生の全国大会までが描かれています。その後、六三四は教師を、修羅は医師を目指すことを手紙で伝え合うところで完結します。
それぞれの登場人物が、それぞれの人生と理想を求めてまっすぐに努力をしていく姿は、子供の頃には分からなかった深い部分で、大人になって改めて感動することができる、とても魅力的な作品です。
「六三四の剣」の主な登場人物
夏木 六三四(なつき むさし)
剣道一家に生まれた「剣道のサラブレット」として、幼少期から剣道を始めます。腕白な暴れん坊でしたが、父栄一郎を尊敬する指導者「大石巌」と出会い、人間的にも剣道の実力的にも成長していきます。
夏木 佳代(なつき かよ)
六三四の母で、全日本女子選手権優勝を経験し、「東北の鬼ユリ」の異名を持ちます。小学校教諭として、栄一郎が警察を退職した後も家計を支えます。六三四の高校時代に剣道を再開し、全国大会に出場して準決勝まで進みます。全国大会後、同僚の八重樫と再婚します。
夏木 栄一郎(なつき えいいちろう)
六三四の父で、「岩手の虎」と呼ばれる剣道の達人。全日本選手権で先輩の東堂から受けた突きが原因で亡くなりますが、六三四にはただ強いだけではなく、人間的にも大きな人物になってほしいと思っています。
亡くなった後も、岩手県警の警察学校の剣道場には、上段の構えの写真が飾られています。
東堂 修羅(とうどう しゅら)
六三四の親友であり、最大のライバルです。興福寺の阿修羅像から名づけられました。礼儀正しく心優しい人物ですが、剣道になると一転、激しい剣さばきを見せます。
父東堂国彦には、その厳しさから反感を持ちます。母の死に際して、強くなることを誓います。
東堂 国彦(とうどう くにひこ)
六三四の父栄一郎の先輩で、最大のライバルです。冷静かつ正確無比な剣を使います。息子の修羅や妻の朝香にきつくあたったため、修羅から憎まれたこともあります。六三四も、父のかたきと憎みますが、対戦を申し出た六三四に、自分の剣の道を歩めと諭します。
轟 嵐子(とどろき らんこ)
六三四の幼いころからの剣友で、親友です。嵐の日に生まれたので嵐子と名付けられました。負けず嫌いで才能に恵まれていますが、やや怠け癖があります。

六三四の小学時代
[PR]心に火をつける名言マンガ(7)『六三四の剣』 - コミスン(comic soon)
剣道を知らない子供たちを夢中にさせた「六三四の剣」の魅力
武道の「道」を究めること
剣道、柔道など、日本発祥のスポーツは「道」という文字がついています。相撲でも横綱などがよく「相撲道」という言葉を口にします。
勝ち負けよりも、その精神性を尊ぶということでしょうか。単なる根性論ではなく、努力する姿や相手を敬う心、勇気や年長者に対する尊敬など、いわゆる礼節と言われる部分が重視されているように感じます。
柔道や相撲など、海外に広がると同時に、その根本的な部分が変わってきているのが現実ですが、剣道に関してはまだ礼節の部分が残されていると思います。
「六三四の剣」の作者、「村上もとか」について
その後、「六三四の剣」の大ヒットがあり、「龍-RON-」の連載を開始、小学館漫画賞-青年一般部門を受賞して代表作となります。
2000年から連載を開始した「JIN-仁-」は、ドラマ化もされ、高視聴率を記録しました。
村上もとかの代表的な作品

赤いペガサス
赤いペガサス(3) - 村上もとか - 漫画(マンガ)・電子書籍| BookLive!

龍-RON-
龍-RON- [文庫版] (1-21巻 全巻) /漫画全巻ドットコム

JIN-仁-
JIN―仁 (第1巻) (ジャンプ・コミックスデラックス) | 村上 もとか, 酒井 シヅ, 富田 泰彦, 大庭 邦彦 | 本 | Amazon.co.jp
村上作品は、一貫してどう生きるか、自分に何ができるかが描かれていると感じます。「JIN-仁-」では、歴史を変えてしまうと分かっていても、医師として目の前で苦しんでいる人たちをそのままにはできず、江戸の人々を治療していきます。SFの世界では、死ぬはずだった人は、一度は助かったとしても、帳尻を合わせるように別の原因で死んでしまったりします。それでも、今自分に何ができるかを実行していく主人公に共感を持つ人が多いのでしょう。
「六三四の剣」を題材にしたゲームやパチンコなど
「六三四の剣」が大ヒットしたことで、アニメ化、ゲーム化のほか、タイピングソフトやパチンコ台まで登場しています。
ファミリーコンピュータ用ゲームソフト「六三四の剣ただ今修行中」
プレイステーション2用タイピング練習ソフト「タイピング真剣勝負 六三四の剣」
父と子、母と子、仲間たち、ライバルと自分など、いろいろな要素が盛り込まれ、大人になって読み返して、子供の頃には気付かなかった深い部分での感動を味わうことができる、そんな「六三四の剣」をもう一度味わってみませんか?