きっとアニメより「ハード」なSF〜 漫画「ミクロイドS」

きっとアニメより「ハード」なSF〜 漫画「ミクロイドS」

同名のアニメを原作の手塚治虫自ら漫画化した「ミクロイドS」。アニメ版は未観の筆者ではありますが、漫画版の方がずっとハードで、手塚氏のメッセージが直截に出ているのではないかと思います。ぜひご一読を^^


第1巻、表紙

戦闘服のヤンマ(左)と
アゲハ(右)

きっとアニメより「ハード」な漫画化

へえ、、アニメ版の企画が先で、原作者自らの漫画化だったんですね、、
幼すぎたか田舎で放送がなかったか、筆者にはアニメ版の記憶はありません。放送の後年、コミックスで読んだくちです。

ちなみに、

とのこと、、^^;

ほんとだ、、「Z」ですね^^;

ところで、原作本人による漫画化ですけど、どうもおハナシはぜんぜん違うようですね、、
当時とはいえ、TVアニメ版で漫画版のあの「ハード」さが放送されたとはとても思えないですね、、
それほど漫画版は、少年誌掲載とは思えないほど「ハード」でした。どう「ハード」だったか、、まずは描写、雰囲気のハードさ、、

導入から、ハード

上に挙げた扉絵以上に吹き荒ぶ砂漠を三人が歩いています。ヤンマ、アゲハ、マメゾウの三人です。
いまにも倒れそうに疲労困憊。水の匂いがするというマメゾウですが、ヤンマは勝手な行動はせず歩けと命じます。それを振り払ってマメゾウの言う段丘へ這い上がるアゲハ。

しかし、案の定、ヤンマの警告通り、、

コヨーテが待ち受けていました、、!

頭頂から突き出した角で、コヨーテの喉笛を突き、アゲハを助けるヤンマ(右ページ)。

「おれの命令に従う約束だったはずだなアゲハ」。
女相手とはいえ、容赦なく平手でアゲハを打ち据えるヤンマ(左ページ)。

、、左下のコマを見て下さい。
コヨーテの喉から流れた血の川を渡るアゲハ。
そう、彼らはふつうの人間ではなさそうですし、サイズも虫くらいのようです。

(右のページは、ヤンマとアゲハ。)

すると、そこへ追っ手が。小さいながら機械のようです。


今度はマメゾウが角から光線を出してこれを破壊し、三人は逃走します。

ギドロンという存在に従わさせられている彼らミクロイド—。アゲハとマメゾウはギドロンから処刑されるところを、ヤンマに救われ、一緒に逃げてきたのでした。
人間を滅ぼそうとしているギドロン。ヤンマはそのことを「ミクロイドとは血のつながりのあるしんせき」の人類に伝えようと追っ手から逃げ、人間のまちへと向かっているのです。

そしてようやく辿り着いた、人間の町。しかしそこは町中に死体が横たわる死の町と化していました。

死体の口からは人虫(ひとむし)と呼ばれるギドロンのロボット昆虫が這い出してきます。
すでに町はギドロンによって先回りされていたのでした。

マメゾウの機転で、人虫の群れはガソリンで焼き払われ、町ごと炎に包まれます、、

「ハード」なSF設定

なんとか難を逃れた三人。ヤンマがギドロンの巣から脱走した経緯が、彼から語られます。
アゲハの恋人であるジガーとヤンマの兄弟は、ある日父に告げられます。
どちらかがギドロンの巣を去り、人間にギドロンの計画を伝えるようにと。
彼らの父が語るには(ギドロンは大昔に昆虫から分かれて進化し、世界中の砂漠に潜んでいるといい)、何百年か前にギドロンが人間の赤ん坊何十人かを攫い、彼らの特別なゼリーで育てて、奴隷としてミクロイドをつくったというのです。そしていま、ミクロイドを解放するために、人間と手を結ばなければならない。
ギドロンの支配のままでよいという兄ジガーに対し、弟ヤンマは父の命に従うことにします。

そして、ヤンマが脱走したため、見せしめにギドロンは一部のミクロイドを処刑に。

上のコマはマメゾウ。

ハードな人間観察眼 〜人間の愚かしさ その1

死の町を離れニューヨークに辿り着き、ヤンマたちを見せ物にしようとする人間やらを撒いて国連に乗り込み、各国代表を前に危機を告発するヤンマですが、各国とも自らの利害にとらわれて紛糾するばかり。追っ手の人虫から逃れようとして飛行機に紛れ込むことになり、期せずして日本に渡ります。
しかし人虫は日本へも。実はアゲハは恋人ジガーの指示で処刑されなんとするところを演じ、ヤンマの行く先を報告していたのでした。とはいえ、人虫はアゲハも見分けなく襲ってきます。彼女も助けて連れて逃げ、許すというヤンマとマメゾウ。ピンポン球のなかに隠れますが、そのままコンクリート道路の地中に埋められるはめに。三人は“冬眠”状態になり、救難信号を出し続けてキャッチしてくれる人間がいることに賭けることにします、、

ミクロイドたちのはじめての味方

、、やがて。件の場所を通りかかる男子中学生二人、美土路(みどろ)マナブと友人の小山田。小山田はヤンマたちの信号をキャッチします。ところが道路に耳をつけ信号を聞いているときに車にはねられ入院してしまうことに。マナブは小山田のために道路を掘り返し、ピンポン球のなかに眠るヤンマたちを見つけ出します。

美土路マナブ
本作の、いわば人間の主人公。
中学生。成績は悪いが、剣道部員で腕っ節は強い。
度胸があり、大人相手でもギドロン相手でも立ち向かう。

ヤンマたちのことを秘密にして口外していないマナブですが、彼からギドロンの話を聞いても信じず相手にしません。しかし、入院していた小山田が人虫に殺されてしまい信じざるを得なくなり、高名な生物学者である父美土路博士に引き合わせることに。

美土路博士
妻とは別れていて、男手ひとつでマナブを育てた。
高名な科学者を父に持つマナブの屈折から、親子仲はよくない。

ヤンマの警告を真摯に受けとめ、彼らの理解者となるが、、

ギドロンの死の尖兵

ヤンマの兄、ジガー

ジガーは、ギドロンの最高指導者ゼルギからヤンマらの抹殺を命じられます。

抹殺遂行に、彼には5人の部下が与えられます。
(左下から)
ランパー:姿を消したり、強い光の玉になる
マンチス:0.3秒で攻撃、500m先の気配を察知
戦闘服姿のジガー
タバヌス:追跡、尾行、忍び込みや盗みは一流
マイマイ:7種の毒の粉を出し、人間大にもなる
(後)
ゴライアス:人間や獣も一打で殺す

部下を引き連れ、小山田を殺し、アゲハとマメゾウを人質にヤンマをおびき寄せたジガーでしたが、ガス管を破ってガスを充満させるというヤンマの捨て身の咄嗟の策と、マナブの活躍で難を逃れます。

ジガーの仕打ちにアゲハも長い髪をバッサリと切り、ヤンマたちと闘うことを決意します。

アゲハ、マメゾウの分も設え、戦闘服姿の三人

ハードな描写 〜人間の愚かしさ その2

大襲来

季節外れの虫や静まり返る動物たち—。ヤンマたちは不気味な気配、ギドロンの大攻勢の予兆を感じますが、それを美土路博士が方々に警告しても、皆聞く耳を持ちません。
とうとう虫たちの大襲来が迫りますが、落第したマナブは会わす顔がないと家に戻りません。心配して捜しに出かける美土路博士。しかし既に大襲来がはじまってしまいました—

マナブを捜しに車でまちを行く美土路博士。すでに道々に死体が、、

今作は少年誌掲載ながら、こういった描写も容赦がありません。

ガソリン切れの前にモーテルに逃げ込んだ博士。そこには生き延びた宿泊客らが避難してましたが、銃を手に頭がおかしくなった者、金にモノを言わせてせっかく出てきた一着だけの防火服を無理矢理着て破いてしまう者、、

一方マナブは命からがらの逃避行の末、ヤンマらと合流、雨で一時ダムに集まった何億もの虫たちを焼き払ってしまうことに成功し、なんとかこの大襲来から人間を救います。

なんとか生き延びた美土路博士を迎えに出たマナブ。

地下鉄構内ではアリたちが人間の死体を切り刻んで巣に運んでいた。

博士の髪は一夜の恐怖と辛苦で真っ白に。

ジガーとの対話を求め、まちを叫びながら彷徨う博士。すると地中へと引きづり込まれ、二人の対面がなされます。ジガーは5日後の再びの大攻勢—今度は日本の人間をほぼ全滅させる虫たちの大襲来があることを告げます。裏切り者ヤンマを匿まい、最も公害のひどい日本を見せしめに。動物や植物は殺さず、人間のみを殺すというのです。

ようやく美土路博士の言うことを信じざるを得なくなった政府ですが、パニックを恐れて公表はせず秘密裏に準備を進めます—。そして、とうとうその日がきました。

最後の大来襲、パニックに陥る日本

日本中に虫の大群が押し寄せます。自衛隊機も襲われ、すべて墜落して火の玉と化します。

政府は戒厳令を敷き、
従わない人間には自衛隊が銃弾を浴びせる—
まちには暴徒と化した人間たちが

ヤンマたちが隠れている研究小屋を目指すマナブたちの車に、ジガーがヤンマたちの居所を教えるよう、取引を持ちかけます。
アゲハへの想いとヤンマへの憎悪に駆られたジガーは、アゲハを連れギドロンを裏切り二人で逃げるのだといいます。
マナブによって瓶に潜んだジガーを始末しようと、同乗の女たちが焼こうとし、逆に無惨に死んでしまう嵌めに。

ハッピーでない結末 〜人間は学ぶか

ヤンマたちの隠れ家に辿り着き、アゲハとの対面を果たしたジガーですが、アゲハはマメゾウとともに重体の床にありました。

三人は地虫の群れに踏みにじられ、アゲハとマメゾウは大けがを

虫たちの大群の描写も容赦なく圧巻で、虫好きでない筆者などは震え上がります、、

マメゾウは一命を取り留めますが、アゲハは死の淵に。彼女はヤンマが正しいから仲間になったので、ジガーのことをいまも愛していると言います。胸のペンダントにはいまもジガーの写真が。指には彼が送った指輪が。
己の愚かさを悔いるジガーに愛の言葉を告げて、アゲハは亡くなります。
しかし命令は命令と、ヤンマとサシの勝負を挑んだジガーは態とヤンマに敗れ、アゲハのあとを追い死んでいきます。自分のヘルメットで虫たちを操り、撤退させることができると教えて。

ジガーのヘルメットで虫たちを日本から去らせるヤンマ

「日本は助かったんかえ先生」
美土路博士「まだわからん」

ヤンマ「そいつは人間しだいというところですよ つまり—/いまは救われたが 永久にぶじとはいえない…/—それはこの地球の自然を人間が荒らすかどうかにかかっています」

ヤンマとマメゾウは、ジガーとアゲハのからだを父のところへ届けにギドロンの巣へと旅立ちます。
ヤンマ「そうカンタンには殺されないよ/マナブさようなら またあおう」

美土路「マナブ わしはまだなにか不吉な予感がするよ ギドロンはどうせまたつづけるんだ 人間が滅びるまで…」

〈それが虫と人間の宿命かもしれん いいかえれば人間がそれに気づかなかったことは あまりにもおろかだったのだ…〉

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