新谷かおるお得意のハードな戦場もの、、??
「戦場ロマン・シリーズ」で連載デビュー、「エリア88」など軍事ものに定評のある新谷かおるの85年から86年連載の「バランサー」、ご存知でしょうか?
全3巻と当時の新谷氏のキャリアからしては決して長くはないこの作品。想定外の横槍から、連載物の宿命(?)ともいえるような行く末を辿った、薄幸ともいえる作品でしたf^^;
短期間にがらっと、、
まずはオリジナルの最初の(って3巻完結ですけどねf^^;)1巻と、
最終巻(って3巻完結ですけどねf^^;)の3巻の表紙を見比べてみて下さい、、


、、ずいぶん雰囲気違うでしょう?^^; なんなら正反対。
表紙だけでなく内容もそうなんです、正反対。
短い間のこの変遷の理由の前に、
物語の紹介と、そしてほとんど連載が始まるなり訪れた不意打ち(?)のことを振り返ってみます。
主人公「××××」と物語の導入

物語最初の任務は、第二のシェバイツァーといわれる医学博士が、裏で中央アフリカのサビア国政府と行っているヘロイン密造工場の破壊と博士の抹殺。それも別段正義の味方やどこかの政府からの仕事ではなく、値崩れを恐れる麻薬同業者からの仕事であることが仄めかされます。少年誌らしからぬハードさですねえ、、
物語二つ目の任務では、刑期1000年のプリズナー(囚人)、コードネーム「P」が登場します。
彼の刑期は、ベトナム戦争下自分たちの部隊が助けた現地の村の人々を、解放戦線の仕業に偽装した米軍と南軍が虐殺したことに逆上し、彼らを血祭りに上げたことによるものです。
その人間性にふれたJは、彼に「他人に名のるのはこれが最初で最後だ!!」と、自らの南郷兵衛という名を告げます(ずいぶん古臭い名ですが、果たして、、)。
早くも、、なぜに?
三つ目の任務で早くも、、
敵の正体に気づいた南郷は、Pことカーツらに「ここでお別れだ/きみたちが相手にできる敵ではない…悪い予感があたった…」と告げ逃がした後、独り敵と対峙します。黒羽とか白羽とかいままでまったく出てこなかった場違いな台詞のあと、爆風のなかから南郷の腕時計だけが吹き飛ばされてきます。
!、、連載数週、早くも主人公が死んでしまうとわっ>_<
へなちょこ「××××」
ところで!
連載開始時、この作品のタイトルは「バランサー」ではありませんでした。
その名も「ジャップ」!
少年誌らしからぬハードな内容に、日本人の蔑称「ジャップ」!
少年誌だけど攻めて行くぜ!てな気概が感じられるじゃないですか!
いやあその心意気、たいしたものよっ。
、、と思っていたら、ですよ ?( ̄ω ̄;)
連載数週で即行、上記の南郷の死より前です、
ジャップは日本人の蔑称、差別的表現で、差し障りがあるのでタイトルを変えますとの告知、、
はあ?
善し悪しは別にして、そんなこと連載前から分かってることじゃん!なにをいまさら、、
筆者ら当時子どもだった読者も口をぽかんと呆れたものでした (ノ゚ο゚)

、、変えたタイトルは「バランサー」。
ああ。正義の味方でなく、義があるでなく、結果的に、ときに悪と悪のバランスを保って世界が崩れるのを防ぐ、バランサーね、、
びびって変えるくらいなら、最初から「ジャップ」とかせずに「バランサー」でいってくれれば、それはそれでよかったのに、、f^^:
と、気を取り直しかけたところへの、
早々突然の主人公の死なのでした。
ここまでハードな内容とわっ!主人公がこんなに早く呆気なく死んじゃって、どう展開するんだろう、、?などと驚愕と期待のなか、
タイトル問題のへなちょこさに、一抹の不安もあった当時の我々読者でした、、>_<
大胆な針路転換(!?)
とりあえず、悪い予感は当たりました、、

翌回登場したのは、鏡大吾という日本人の少年。
南郷を兄者と訪ねてアムステルダムにやってきますが、大佐の秘書クローネから南郷の死を告げられます。
ところが、この回から、、
大吾はちんちくりんの学ラン姿だし、クローネも日本語で喋るのですが、なぜかこれが京都弁と、
すっかりコメディかギャグ漫画の様相。
、、前回までハードな傭兵ものだったはずが>_<

、、しかも、南郷は白羽衆という忍者だというのですっ>_< はあ、、もう
大吾は赤羽衆というくのいち(女忍者)の一族にめったに産まれぬ男子だといいます。
さらに大吾を追ってきた赤羽衆総帥のおばばさま(150歳とか^^;)にいたっては、、


もう完全に漫画が変わってしまっていますね、、>_<
闘いは、、
その後、一行はハイジャック事件に巻き込まれますが、
実はこれは東西ベルリンに別れ別れになった家族らが再会するための偽装ハイジャックでした。
しかしこれに東西両陣営の策略が絡み、大佐指示のチームも任務につくことに。
そして敵方の東側にはまた黒羽衆がいるのでした。
銃撃に晒された子どもらの死を目の当たりにした大吾は暴走。

そして、ピンチに駆けつけた大吾の姉、紫織ら赤羽衆の結集した力の前には、黒羽衆など、、



で、しかも、南郷の死は偽装で、
彼がこのピンチを伝えて紫織らを向かわせたのでした、、はあ、、
よくあることよ、、?
結局、最後まで南郷は再び姿を現すことはありません。無難でしょう。せめてもの描き手の良心?
ハード傭兵漫画の南郷と、お気楽おバカ設定忍者活劇の大吾らが、同じ画面に入ったら台無しです>_<
とくに、消えたとはいえ、冒頭のハードな世界観の南郷には、、
ところで、
この「ジャップ/バランサー」の前の、掲載誌少年サンデーの新谷かおる作品は、長期におよんだヒット作「ふたり鷹」。
この作品もリアルなほぼシリアス一辺倒な作風で始まり、バイク漫画というジャンルは貫きつつも、どんどんやわらかくコメディ調が入ってきていました。
長い連載の間には、こういったコメディ化とでもいう現象はまま見かけますね。
でも、こんな「ジャップ/バランサー」みたいな急な方向転換は、これとはハナシが違いますね、、
当時はここまで知らなかったのですが、
今回こんな記述を見つけました。
やっぱ、編集部側がへたれやったんですねえ、、
んで、新谷氏怒ってはったんや。「紅たん碧たん」のコミック、上記の通りのヘンなことになってたもんなあ、、
そんな訳で、ハード傭兵漫画の「バランサー(ジャップ)」は最初だけの尻なしトンボとなってしまいました、、残念な気もします^^;
ただ、冷戦や傭兵の世界は、その後、同じ新谷氏の作品「クレオパトラD.C.」「砂の薔薇」で綿密に描かれているそうです。
今回この記事で興味を持たれた方、こちらものぞいてみてはいかがでしょう^^ (筆者もどっちもちゃんとは未読ですf^^;)