【トロイ・ニール】永遠に語り継がれるべき、彼の感動的なスピーチを紹介する

【トロイ・ニール】永遠に語り継がれるべき、彼の感動的なスピーチを紹介する

「トロイ・ニール」1996年の日本シリーズ中、わずか3安打でシリーズMVPを獲得した男。日本一が決定した試合後のインタビューは今もオリックスファンの心を捉えて離さない。「彼はその時、ファンに何を語ったのか?」


震災とオリックス

毎年日本にやってくる外国人助っ人。彼はよほどの好成績を残すか、またよっぽどの問題を起こすかのどちらかではない限り、何年かすれば「ああいたな、そんな選手」と思われてしまうことになります。
もしかしたら、このトロイ・ニールという選手のことを覚えてよく覚えていないという人も多いのではないでしょうか?筆者は、数多いる外国人助っ人選手の中でも特にこのニール選手に特に思い入れがあるのです。それは、私が兵庫県出身者であり、高校生時代に「あの震災」を経験したから…。

黒煙が上がる神戸

1995年(平成7年)1月17日5時46分、淡路島北部を震源として、兵庫県南部地震が発生。神戸の被害は甚大なもので、神戸を本拠地にもつオリックスは後に「復興の象徴」などと呼ばれる事になるのですが、震災直後は熱烈な野球ファンの筆者でさえ「こんな時に野球・・・」と思ったもの。前段が長くなりましたが、「アスレチックスの4番打者」というふれこみでトロイ・ニールが来日したのは、正にそんな時だったのです。

ただの「助っ人」という存在ではない

この震災が起こる一年前、イチロー選手がシーズン200本安打を達成。オリックスは一挙に注目されるチームになっていた。だが、この年の成績は、優勝した西武ライオンズと7.5ゲームという大差をつけられての2位。【優勝候補】には違いないのですが、常勝・西武ライオンズを打ち倒すには、高い出塁率を誇るイチローを本塁に返してくれる勝負強い4番バッターがオリックスにはどうしても必要でした。
ニール選手は正にその役割を期待されていたのです。

自分の打球を見守るニール選手

さて、ニール選手とはどういう選手だったか?というと、「本塁打か三振か」というバッティング。普段は紳士的で真面目に野球に取り組んでいるのですが、時に激高する時があり、退場処分や乱闘騒ぎを起こした事も数多い・・・。とくれば、「典型的な外国人助っ人野手」という表現にあてはまります。ただ、オリックスや神戸市民にとって彼の存在はただの「助っ人野手」という存在ではなかったのです。

震災の後遺症か、スタートダッシュに失敗。チーム成績も5割前後をうろうろしていたところ、6月のチーム成績は19勝4敗という驚異的な勝率を挙げ、オリックスは一気に首位を独走。7月にはニール選手が月間12本と打ちまくり、早くも優勝マジックが点灯しました。オリックスの快進撃にはニール選手の活躍が欠かせなかったのです。

二ール選手は1995年7月、月間本塁打12本と打ちまくりました。

サヨナラ本塁打(1995.7.13)

1995年のニール選手の成績は、福岡ダイエーホークスの小久保選手と1本差の27本で本塁打王を逃すものの、指名打者としてベストナインに選出。と同時に130三振を喫し、リーグの三振王にもなっています。

大きな「宿題」を残したリーグ優勝

この様に首位を独走したオリックス。震災を経験した野球ファンの筆者が当時、この快進撃をどう見ていたかと言うと・・・、正直、どんなにオリックスが勝ったところで目の前に起きている様々な問題が解決されるわけではありません。ですが、野球というスポーツには不思議な力があるのです。イチロー選手がヒットを量産し、ニール選手が大きな本塁打を打ち、最後は平井選手の剛速球で試合をしめる…躍動するオリックス選手達の姿を見ていると、自然と涙が流れ、勇気が沸いてきたものです。

そんな、ファンにとっての悲願は「地元・神戸での胴上げ」でした。そのファンの期待がプレッシャーとなったのでしょうか、マジック1で迎えた本拠地でまさかの4連敗。神戸でリーグ優勝を決める事は出来ませんでしたが、本拠地のファンからは試合後に大きな拍手と歓声が上がったのです。

日本シリーズでは、智将・野村監督率いるヤクルトがイチロー選手、ニール選手を完璧に抑え、1勝4敗で敗れました。本拠地での優勝、そして日本一はオリックスの大きな宿題となったのです。

1995年のリーグ優勝は西武球場で決まりました。

1995年リーグ優勝

中央にいる16番がニール選手です。

壮絶な優勝争い、そして連覇

本拠地・神戸でリーグ優勝を達成し、雄叫びをあげるイチロー選手

1996年のペナントレース。オリックスは、日本ハムとの壮絶な首位争いを展開します。夏場の7月に投手陣が打ち込まれて負け越し、最大5ゲーム差をつけられましたが、シーズン終盤の9月、10月に22戦15勝6敗1分と脅威の快進撃を見せ、日ハムを捉えると一気に逆転。9月23日に本拠地で行われた日本ハムとの直接対決でイチローのサヨナラ安打で優勝が決定。クールだと言われていたイチロー選手が2塁ベース上で雄叫びをあげたのです。

ニール選手はこの年、32本塁打・111打点を挙げて2冠王。オリックスの連覇に大きく貢献したのです。
本拠地でリーグ優勝を果たしたオリックスは、この年最大11.5ゲーム差からの逆転「メークドラマ」を果たした巨人と日本シリーズで対決する事になりました。

この年の日本シリーズは、オリックスのイチロー選手と、巨人・松井秀喜が「対決」した唯一の日本シリーズになるのですが・・・第1戦で逆転本塁打を放ったのをきっかけにその後打ちまくり、優秀選手になったイチロー選手とは対照的に松井選手20打数4安打0打点と抑え込まれました。

さて、ニール選手の成績は17打数3安打。この成績だけみれば、巨人バッテリーとしては抑え込んだと言ってもいいのですが、その3安打が全て2点タイムリーという勝負強さを見せ、ニール選手はシリーズMVPに輝くのです。ちなみに日本シリーズのMVPになった野手のうち、3安打・4塁打・打率.176・長打率.235という成績は、現在でも最も低い成績。

※元々ニール選手はシーズン中の打率も244(95年)、.274(96年)とそれほど高くない代わりにここぞの場面で打つというタイプの選手でした。

打たれてもいい場面でしか松井選手に打たせなかったオリックスバッテリーと、打たせてはいけない場面でイチロー選手とニール選手に打たれた巨人バッテリー。この差が最後まで響いたのです。

さて、そのオリックスの日本一を決めた日本シリーズ第5戦終了後、MVPのお立ち台に呼ばれたニール選手は球場に詰め掛けたファンに向けて心を揺さぶるメッセージを送ります。

外国人助っ人あるある」なのですが、日本語で聞いたインタビュアーの言葉を通訳さんが話し、それを受けた選手がコメントを出して、それを通訳さんが・・・という様に「間」が空くものです。
何年も日本にいる外国人選手の中にはまれに、日本語でインタビューを受ける選手もいますが、来日2年目のニール選手では、インタビューで間が空いてしまうのも仕方が無い話。
その「間」を球場にいるファンも楽しんでいたのですが・・・インタビューの最後に、「がんばろう、神戸!」とニール選手が絶叫。震災後この言葉をユニフォームに縫いこんだオリックスの選手達の活躍に励まされ続けてきたファンは「外国人助っ人」であるニール選手からもこの言葉が出た事に感動したのです。

がんばろう神戸

再び主砲へ

2連覇を果たし、西武の様な黄金時代を築くかと思われたオリックスですが、96年以降、急速にチーム成績を落としていきます。その原因として若返りの為に経験あるベテランを放出した事などが挙げられています。そんな中、勝負強い打撃を見せていたニール選手もその三振の多さなどが問題になり、1997年オフに一度解雇されるものの、代わりに獲得した外国人助っ人の不振により1998年シーズン途中に復帰(背番号は99番)。2000年までチームに所属しました。

99番時代のニール

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