【アドベンチャーゲームの歴史】1980年代前半に黄金期を迎えたとされるアドベンチャーゲーム、その歴史を振り返ろう。

【アドベンチャーゲームの歴史】1980年代前半に黄金期を迎えたとされるアドベンチャーゲーム、その歴史を振り返ろう。

「アドベンチャーゲーム」と聞いて思い出すゲームはなんですか?「ポートピア連続殺人事件」や「オホーツクに消ゆ」などの有名な「堀井ミステリー三部作」や「弟切草」「同級生」など、様々なゲームがありましたよね。「コマンド?」なんて言葉も流行ったことを憶えています。そんなアドベンチャーゲームの歴史を振り返ってみましょう。


アドベンチャーゲーム

アドベンチャーゲームは、コンピュータゲームのジャンルの一つ。AVGないしADVと略記される。

テキストやグラフィックによって現在プレイヤーの置かれている状況が提示され、プレイヤーが行動を入力すると行動の結果が提示されるので、さらにその状況に対する行動を入力……という操作を繰り返して進めていく、コンピューターとプレイヤーとの対話形式で構成される。

反射神経を必要とせず、提示される様々な情報から的確な行動を推理・選択することが求められる、思考型のゲームである。同じ思考型のシミュレーションゲームやロールプレイングゲームなどとは、「複数の項目からなる主人公の能力等を表す数値」が存在しない点で区別される。

シミュレーションゲームやロールプレイングゲームと同様、反射神経を必要としない思考型のゲーム

アドベンチャーゲームの歴史-① テキストアドベンチャー

アドベンチャーゲームの始祖は、コロッサル・ケーブ・アドベンチャー(Colossal Cave Adventure)で、1975年頃から米国の研究機関ネットワーク上で広まった。

これは洞窟探検を題材に作成したゲームで、当時は "Adventure" 、または端末に入力するコマンド文字列に由来する "ADVENT" とも呼ばれたが、これが“アドベンチャーゲーム”というジャンル名の由来となる。

画面に表示されるメッセージを頼りに、簡単な英語でコマンドを打ち込むもので、画像を伴わず(そもそも当時、画像を表示できるコンピュータや表示装置は研究用など、ごく限られたものだった)文字だけで進行する。

このような形式は、後にテキスト・アドベンチャーと呼ばれることになる。

画像を使わずに文字だけで進行

当時の主要メーカーには、Infocomが挙げられる。

Infocom社のアドベンチャーゲームのパッケージには、ゲーム中に出てくるアイテムの実物(レシートの切れ端、マッチ、名刺、雑誌など様々な小道具)が同封されており、文字だけのゲーム世界に彩りを添える工夫がなされていた。

表参道アドベンチャーは、『月刊アスキー』1982年4月号綴じ込み付録である『年刊AhSKI!』2号に掲載されたアドベンチャーゲーム。

アスキー誌初のアドベンチャーゲームで、国産アドベンチャーゲームの草分け的存在。

表参道アドベンチャー

1986年にハドソンよりリリース。
日本語入力に対応したアドベンチャーだが、当時はすでにグラフィックアドベンチャーも登場しており、アドベンチャーゲームとしての方向性に欠けたものに。

暗闇の視点 バニーガール殺人事件

テキストアドベンチャーゲームは、日本ではほとんど受け入れられなかった。
開発に際しても、パソコン雑誌の編集者が余暇に作ったものが多く、米国のように企業が組織立って開発した例はほとんどない。

理由として、この時期の日本のコンピュータにおける日本語処理の問題が挙げられる。当時の家庭用パソコンでは画面解像度の問題から漢字表示が困難であり、自然な日本語表現が不可能であった。また日本国外のテキストアドベンチャー作品は、難解な文学的表現や古英語を用いている場合が多かった。

グラフィックアドベンチャーの登場

テキストアドベンチャーからの発展として、ひとつには文字による擬似グラフィックの利用やコンピュータRPGへといった分化があった。
一方Apple IIなどはこういったゲームでの利用にもってこいの、テキストとグラフィックを同時表示するモードを備えており、それを利用したゲームが開発された。

米国では『ミステリーハウス』を皮切りにグラフィックスを伴ったゲームが開発された。ミステリーハウスの開発者は、シエラオンライン社を興し、『ウィザード&プリンセス』や『タイムゾーン』などの作品を次々に発表した。ペンギンソフトウェア社の『トランシルバニア』もこの時期を代表する作品として挙げられる。

これら最初期のグラフィック表示つきアドベンチャーは、Apple IIを主要ハードとしていた。ただし米国ではテキストアドベンチャーも根強い人気を持っており、グラフィックアドベンチャーとテキストアドベンチャーはしばらく共存する状態が続いた。

『ミステリーハウス』は、1980年代に登場したアドベンチャーゲームのタイトル。日本では同名の2本のソフトが存在する。

1980年、アメリカのシエラオンライン(Sierra On-Line)からApple II用に発売されたソフト。世界初のグラフィックアドベンチャーゲーム。日本では1983年にスタークラフトからFM-7などの機種への和訳移植版が発売。

1982年、日本でマイクロキャビンからMZ-2000用に発売されたソフト。

ミステリーハウス

グラフィックアドベンチャーは、日本国内でも数多くの作品が発表された。この時期の代表的作品に、マイクロキャビンの『ミステリーハウス』、T&E SOFT『スターアーサー伝説』三部作、ハドソンの『デゼニランド』『サラダの国のトマト姫』、エニックス『ポートピア連続殺人事件』などが挙げられる。

これら国産アドベンチャーゲームも、米国のテキストアドベンチャーゲーム同様、基本的にキーボードから単語をコマンドとして直接入力する方式であった。ストーリーの大半は、一般的な単語や事前にヒントのある単語で進めることが出来たが、ラスト近くなど特定の場面では、事前のヒントが全くないまま、思いも寄らない単語の入力が必要な場合もあり、これはゲームの難度を極度に高める結果となった。

当時のアドベンチャーゲームは、概して高度にマニアックなゲームジャンルであった。

T&E SOFTによるアドベンチャーゲーム三部作。

スターアーサー伝説 惑星メフィウス

デゼニランドは、1983年にハドソンが発売したパソコン向けアドベンチャーゲーム。続編にデゼニワールドがある。

デゼニランド

『ポートピア連続殺人事件』は、堀井雄二がデザインしたアドベンチャーゲーム。

当時のゲーム業界は個人による開発が主流で分業がほとんどされておらず、本作もオリジナル版のプログラム・シナリオ・グラフィック等の全ての作業を堀井が1人でこなしている(PC-6001、PC-8801版のみ)。

ポートピア連続殺人事件

キーボードから単語をコマンドとして直接入力する「コマンド入力方式」を採用しているアドベンチャーの後期の作品の中には、「単なることば探し」になってしまうことを避けるためにファンクション・キーによく使う単語を事前に用意しておき、プレイヤーの負担を緩和しているものが出てきた。そして後述の「コマンド選択方式」へと発展することになる。

また日本市場におけるグラフィックアドベンチャーでは、後期の作品の一部に、アニメーションの技法が取り入れられた。これには、画面上の登場人物が振り向いたり、ロボットが変形するなどのフルアニメーションに近いものから、登場人物の目が時々瞬きするといった限定的なものまで、様々な形態があった。

コマンド選択方式の登場とRPGへの融合

アドベンチャーゲームは日本のパソコンで進化した! - Middle Edge(ミドルエッジ)

アメリカでは、大作『Time Zone』に見られるように、コマンド入力方式のゲームは成熟を迎えた。コマンド入力方式の次に開発されたものは、『King's Quest』を始めとする二次元画面内でキャラクタを移動させつつゲームを進行させる方式であった。

この方式はアメリカでは複数のソフトが開発されたが、日本では『ハイドライド』に代表されるアクションRPGが独自の発展を遂げており、キャラクター移動方式はこれに準じた形で発展していった。

日本ではコマンド入力方式の限界が、キャラクター移動方式とは異なるアプローチからも打ち破られた。それはコマンドを単語として入力する代わりに、事前に用意されたコマンドを画面に提示してユーザーに選択させるもので、コマンド選択方式と呼ばれる。

これを最初に採用したソフトは『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』である。コマンド選択方式は広く受け入れられ、コマンド入力方式を瞬く間に駆逐していった。またコマンド選択方式では、キーボードを持たないコンシューマー機への移植も容易となる。『ポートピア~』はコマンド選択方式へと作り直され、ファミコンにも移植された(1985年)。これは初の家庭用ゲーム機用アドベンチャーゲームである。

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