「みんななかよく」。この企業理念を掲げて歩み続けてきたサンリオの歴史には、ある一人の偉大なクリエイターとの深い絆がありました。そのクリエイターとは、のちに「アンパンマン」で国民的人気を博すことになる、やなせたかし氏です。
株式会社サンリオは、同社の出版事業の原点であり、やなせたかし氏にとっても初めて市販された記念すべき一冊である『詩集 愛する歌』の初版本を復刻し、2026年4月1日(水)に発売することを発表しました。1966年の刊行からちょうど60年の節目を前に、多くのファンから寄せられた熱い要望に応える形で実現したプロジェクトです。
やなせたかしとサンリオ創業者が描いた「夢の始まり」
本作が誕生した背景には、サンリオの創業者であり現名誉会長の辻󠄀 信太郎氏と、やなせ氏との運命的な出会いがありました。1960年にサンリオの前身である山梨シルクセンターを起業した辻󠄀氏が、やなせ氏との交流をきっかけに出版事業への参入を決意。その第一弾として世に送り出されたのが、この『詩集 愛する歌』でした。
当時、まだ代表作に恵まれず悩んでいたというやなせ氏ですが、この詩集は続編も刊行されると、シリーズ全体で10万部を売り上げるという詩集としては異例の大ヒットを記録。やなせ氏の初期の代表作のひとつとなりました。この成功が、のちにやなせ氏が「編集するためにこの世に生まれた」とまで語り、30年間にわたり全身全霊を傾けた文芸誌『詩とメルヘン』の創刊へと繋がっていくことになります。
今回の復刻に際し、辻󠄀名誉会長は「無名だった僕たちが手探りで出版したこの詩集がなんと60年ぶりに復刻することになったよ、あの頃の僕たちには信じられない話だね。人生って面白いね」と天国のやなせ氏へ向けたメッセージを寄せており、二人の友情と挑戦の歴史が改めて脚光を浴びています。
辻󠄀 信太郎氏
世代を超えて心に響く「愛」と「ユーモア」の言葉たち
本書には、誰もが一度は口ずさんだことがある「てのひらを太陽に」からはじまる、あたたかみのある詩が多数収められています。やなせ氏が自らあとがきで「子供の歌と大人の歌、あるいはラブソングがいっしょくたになっています」と語る通り、その内容は実に多岐にわたります。
童謡のような純真なメルヘンの世界観から、人生を深く見つめる普遍的なテーマまで。やなせ氏独特のユーモアと正直な感性で綴られた言葉たちは、読む者の心を時にくすっと笑わせ、時にホロッと泣かせてくれます。
戦後80年を迎える2025年、やなせ氏の妻が主人公のモデルとなったNHK連続テレビ小説「あんぱん」が放送され、劇中にこの『詩集 愛する歌』が登場したことも、今回の復刻を後押しする大きなきっかけとなりました。ドラマを通じて初めて本作を知り、「読んでみたい」という問い合わせが急増したことから、今回の60年ぶりの復刻が決定しました。
やなせたかし氏
初版本の風合いを再現したプレミアムな一冊
今回の復刻版は、A5変形サイズの上製本として丁寧に制作されます。1966年9月に刊行された当時の初版本が持っていた風合いを大切にしながら、現代の読者へ届けるための工夫が凝らされています。
販売ルートも、やなせ氏とサンリオにゆかりのある特別な場所が選ばれました。サンリオオンラインショップ本店のほか、2026年4月に山梨県甲斐市に開館予定の「山梨いちごの王さまミュージアム サンリオ創業者 辻󠄀信太郎記念館」、高知県の「香美市立やなせたかし記念館」、東京と富良野の「アンパンマンショップ」などで取り扱われる予定です。また、紀伊國屋書店をはじめとする全国の書店でもお取り寄せが可能となっています。
人生を豊かにする「やさしい言葉」に出会う
「人生って面白いね」。辻󠄀名誉会長がやなせ氏に宛てた言葉通り、60年前の情熱が再び形となり、令和の時代に蘇ります。やなせたかし氏がその長い生涯を通じて発信し続けた「愛」と「優しさ」のエッセンスが、この最初の一冊に凝縮されています。
2026年春、新生活の始まりと共に、心に寄り添う一編の詩を見つけに本を手に取ってみてはいかがでしょうか。そこには、時代が変わっても色褪せない、人間としての温かな眼差しが溢れています。
■【書籍情報】
タイトル: 詩集 愛する歌
著者: やなせたかし
本体価格: 2,000円(税別)
発売日: 2026年4月1日
判型: A5変形 上製本
発行元: 株式会社サンリオ
ISBN: 978-4-387-26013-4