バンド「たま」の旧譜11作品が5/21一斉配信解禁されました!
前年に昭和が終わり、平成となった2年目の1990年。
ドイツが再統一され、ソ連のゴルバチョフ書記長がノーベル平和賞を受賞するなど、冷戦の時代が終わりを告げ、世界的にも大きく変革が訪れていた時代に日本でもバブル景気が崩壊していくなど時代の変化が始まっていました。
そんな1990年に伝説のバンドが「さよなら人類」でメジャーデビューを果たします。
そう、白いランニングシャツのドラマーが「着いたーーーー!」と叫ぶ新人類的なバント「たま」です。
TBS系音楽番組『平成名物TV・三宅裕司のいかすバンド天国』の14代目イカ天キングとなっていた「たま」でしたが、あくまで深夜放送のバンド番組であったため、その認知度はお茶の間までは届いておらず、このメジャーデビュー曲で世間の認知を得ることになりました。
<今回配信解禁される作品>
・1st アルバム 「さんだる」
オリジナルCD発売日:1990年7月10日
・2nd アルバム 「ひるね」
オリジナルCD発売日:1991年1月21日
・3rd アルバム 「きゃべつ」
オリジナルCD発売日:1991年10月21日
・1st シングル「さよなら人類 (シングル・ヴァージョン) / らんちう (シングル・ヴァージョン)」
オリジナルCD発売日:1990年5月5日
・2nd シングル「オゾンのダンス / ワルツおぼえて」
オリジナルCD発売日:1990年9月21日
・3rd シングル「夕暮れ時のさびしさに / 家族 / まちあわせ」
オリジナルCD発売日:1990年12月10日
・4th シングル「海にうつる月 / ばいばいばく」
オリジナルCD発売日:1991年4月5日
・5th シングル「きみしかいない / 魚」
オリジナルCD発売日:1991年11月21日
・6th シングル「そんなぼくがすき / ぼくはヘリコプター」
オリジナルCD発売日:1992年1月21日
・8th シングル「星を食べる / 方向音痴」
オリジナルCD発売日:1992年12月20日
・友部正人&たま
アルバム「けらいのひとりもいない王様」
オリジナルCD発売日:1992年3月5日
たま
バンド「たま」とは?
ふしぎで、ヘンで、やさしい。
でも一度聴いたら忘れられない──それが「たま」の音楽です。
1990年代初頭、日本の音楽シーンに突如現れた4人組バンド「たま」。
フォークでもロックでもない、不思議な音楽と個性的なルックスで一躍脚光を浴びた彼らは、“異端”でありながらも一時代を象徴する存在となりました。
この記事では、たまというバンドの魅力を、その独特な世界観を形づくったメンバーたちと共にご紹介します。

“クラウンスター★セレクション”シリーズのたま編
Amazon.co.jp: セレクション: ミュージック
バンド「たま」とは?
たまは1984年に結成され、1990年に「さよなら人類」でメジャーデビュー。
その年の紅白歌合戦にも出演し、“奇跡のバンド”と称されました。
どこか古びた音楽性と、子どもっぽさと大人の陰影が混ざり合った歌詞、そしてなにより強烈な個性を持ったメンバーたち。
彼らの存在は、いわゆるJ-POPのフォーマットを軽々と越え、音楽ファンの心を掴んで離しませんでした。
2003年に解散したあとも、メンバーそれぞれが音楽活動を続けており、“たま”の精神はいまも息づいています。
バンド「たま」のメンバー
知久 寿焼(ちく としあき)
担当:ギター・ボーカル
生年月日:1965年2月10日
高くて震えるような歌声と、詩的で不思議な歌詞の世界で「たまの顔」とも言われた存在。
代表曲「夕暮れ時のさびしさに」「おやすみいのしし」など、日常の中にある寂しさややさしさを掬い取るような作品が印象的です。
現在もソロアーティストとして活動中。絵本のような音楽を奏で続けています。
石川 浩司(いしかわ こうじ)
担当:パーカッション・ボーカル
生年月日:1961年7月3日
赤いちゃんちゃんこ、裸足に洗面器──見た目のインパクトでは間違いなくNo.1。
けれどその佇まいの奥には、「誰もが置き忘れてきた遊び心」が息づいています。
楽器も音楽も、枠にとらわれない彼の姿勢は、たまの自由さを体現していました。
現在はソロやユニット「ホルモン鉄道」で活動中。2023年には体調不良から復帰し、元気な姿を見せています。
柳原 陽一郎(やなぎはら よういちろう)
担当:キーボード・ボーカル・作曲
生年月日:1962年8月5日
たまの“音楽的エンジン”。
メジャーデビュー曲「さよなら人類」、2ndシングル「オゾンのダンス」の作詞を手がけたほか、アコーディオンやピアノを駆使して多彩な楽曲を生み出しました。
1995年に脱退後、ソロシンガーとして活動。
難解なようで親しみやすい、独自の言葉選びとメロディセンスは、たま時代からまったくブレていません。
滝本 晃司(たきもと こうじ)
担当:ベース・ボーカル
生年月日:1961年12月7日
どこかもの悲しい、でも温かい音の主。
代表作「海にうつる月」など、抑えた表現の中に深い情感をにじませる楽曲を多く担当。
“たまの静けさ”を支えた存在とも言えるでしょう。
現在はソロでの音楽活動を中心に、映像作品への楽曲提供など幅広く活動中です。
曲に宿る“異常な日常”——代表的な楽曲紹介
さよなら人類
発売日:1990年5月5日(デビューシングル)
作詞:柳原幼一郎
作曲:柳原幼一郎、知久寿焼、石川浩司、滝本晃司
収録:シングル『さよなら人類/らんちう』、アルバム『さんだる』
たまのメジャーデビュー曲であり、オリコン週間シングルランキングで初登場1位を獲得した代表作です。「今日人類がはじめて木星についたよ」という冒頭のフレーズから始まるこの曲は、シュールでナンセンスな世界観を持ちながらも、どこか切実なメッセージを感じさせます。独特なメロディと歌詞が融合し、たまの音楽性を象徴する楽曲となっています。
でも、その突飛さの裏には、どこか不安定な時代を生きる“人類”への優しい眼差しが感じられます。音も詞も奇妙なのに、なぜか心にすっと入ってくる。不条理とロマン、風刺と祈りがごちゃ混ぜになったような、不思議で忘れられない名曲です。
夕暮れ時のさびしさに
発売日:1990年12月10日(3rdシングル)
作詞:知久寿焼
作曲:知久寿焼 /滝本晃司 /石川浩司 /柳原幼一郎
収録:シングル『夕暮れ時のさびしさに/家族/まちあわせ』、アルバム『ひるね』
この曲は、日常の中にあるさびしさを穏やかなメロディに乗せて表現しています。沖縄風の音階を取り入れた旋律と、知久寿焼の優しい歌声が印象的です。TBS系ドラマ『浮浪雲』の主題歌として使用され、たまの音楽が広く知られるきっかけとなりました。
一日の終わり、街のざわめきが少し静まる夕暮れ。その名の通り、この曲には、日が沈むときの切なさと温もりが丁寧に詰め込まれています。沖縄風のメロディがふわりと流れ、知久寿焼のやさしい歌声が、心の奥に染み入ってきます。何か特別なことがあるわけじゃないのに、なぜか泣きたくなる——そんな時間を音楽にしたような一曲。たまの“静かな詩人”の一面がよく表れています。
海にうつる月
発売日:1991年4月5日(4thシングル)
作詞:滝本晃司
作曲:知久寿焼 /滝本晃司 /石川浩司 /柳原幼一郎
収録:シングル『海にうつる月/ばいばいばく』、 アルバム『ひるね』
滝本晃司が手掛けたこの楽曲は、静かな旋律と詩的な歌詞が特徴です。月の光が海に映る情景を通して、儚さや孤独感を表現しています。オリコンチャートで最高22位を記録し、たまのアーティスティックな側面を際立たせました。
夜の海にぽっかり浮かぶ月。それを見つめるような、静かで澄んだ一曲です。滝本晃司さんの透き通る歌声と、控えめなアレンジが心地よく、まるで時間が止まってしまったかのような不思議な感覚に包まれます。言葉は多くないけれど、その分、聴く人それぞれの想像をやさしく受け入れてくれるような余白があります。たまの中でも、とりわけ詩的で静謐な作品です。
きみしかいない
発売日:1991年10月21日(5thシングル)
作詞:知久寿焼
作曲:知久寿焼 /滝本晃司 /石川浩司 /柳原幼一郎
収録:シングル『きみしかいない/魚』、アルバム『きゃべつ』
知久寿焼が作詞を手掛けたこの曲は、一見ラブソングのように思えますが、歌詞の「きみ」は自分自身を指していると解釈できます。自己愛と孤独をテーマにした内省的な内容で、たまの中でも特に深いメッセージ性を持つ楽曲です。
知久寿焼のつぶやくような声と、くるくると動くメロディが独特で、少し笑えて、少し泣ける。不器用な人間の心のひだを、そのままそっと差し出されたような、じんわり温かい楽曲です。
おやすみいのしし
発売日:1991年10月21日(アルバム『きゃべつ』収録曲)
作詞:知久寿焼
作曲:知久寿焼 /滝本晃司 /石川浩司 /柳原幼一郎
収録:シングル『きみしかいない/魚』、アルバム『きゃべつ』
この曲は、たまのライブにおいてアンコールトラックの定番曲として親しまれました。知久寿焼のやさしい歌声と、独特な歌詞が特徴です。日常の中にある小さな出来事や感情を、ユーモラスかつ詩的に描いています。
曲名からして不思議で、どんな曲なんだろう?と思って再生すると、そこにはとても静かでやさしい世界が広がっています。まるで子守唄のようなこの曲は、人にも動物にも、もしかすると“今日という日”にも、「おやすみ」を言っているような気がします。たまらしいナンセンスさと、胸にしみる温かさが同居した、まるで小さな詩集のような一曲です。静かな夜のお供にぜひ。
オゾンのダンス
発売日:1990年9月21日(2ndシングル)
作詞:柳原幼一郎
作曲:知久寿焼 /滝本晃司 /石川浩司 /柳原幼一郎
収録:シングル『オゾンのダンス/ワルツおぼえて』、アルバム『さんだる』
柳原幼一郎が作詞を手掛けたこの曲は、カントリーとスカを融合させたような軽快なリズムが特徴です。マンドリンの音色が印象的で、歌詞には「永久運動」などのユニークな表現が含まれています。たまの音楽性の幅広さを感じさせる楽曲です。
タイトルの“オゾン”も歌詞の“永久運動”も、一見意味がつかみにくいけれど、だからこそ自由に解釈できるのが魅力。踊るように歌うけれど、ふと立ち止まったときに「なにか深いことを言ってたかも」と思わせる、不思議な中毒性があります。
方向音痴
発売日: 1990年7月10日(アルバム『さんだる』収録曲)
作詞:知久寿焼
作曲:知久寿焼 /滝本晃司 /石川浩司 /柳原幼一郎
収録:アルバム『さんだる』
この曲は、方向音痴という日常的なテーマをユーモラスに描いています。知久寿焼の軽快なメロディと、独特な歌詞が印象的です。たまの楽曲の中でも、特にコミカルな側面が強調された一曲です。
自分の“ダメなところ”をこんなに愛しく描けるのは、たまならでは。方向音痴という日常的な失敗を、笑い飛ばすでもなく卑下するでもなく、ただそっと見つめて、歌にしてしまう優しさがあります。どこに行くのか分からなくても、それでもちゃんと世界は続いている。そんなメッセージが軽やかなメロディに乗って伝わってきます。迷うことに、少しだけ自信が持てるようになる一曲です。
たまは終わらない
たまの音楽は、ユニークさで注目される一方、そこに込められた“やさしさ”や“ちいさな哀しみ”が、今なお多くの人の心に残っています。
変わっているけれど、けして奇をてらっていない。
自由であることを恐れず、誰かの心の「よく分からない部分」にそっと寄り添ってくれる。
そんな音楽を残した「たま」は、これからもずっと、静かに生き続けていくのです。
TVアニメ『宇宙人』ムームーのエンディング主題歌「さよなら人類」
2025年4月よりTOKYO MXほかにて放送中のアニメ「宇宙人ムームー」のエンディングテーマとして、「さよなら人類」のカバーがさくらこ(春海百乃)&ムームー(小桜エツコ)で歌われています。
作詞は柳原幼一郎、作曲は柳原幼一郎と知久寿焼と石川浩司と滝本晃司、編曲は栗コーダーカルテット。