野島伸司
ドラマ界のタブーに挑み続ける脚本家、野島伸司。90年代には特に話題作、問題作を連発しました。その前はどうだったのかと言うと、今さら説明不要ではありますが「愛しあってるかい!」や「101回目のプロポーズ」といったラブコメ作品でヒット作を出しまくっていたのですよ。それはそれでスゴイ!
とはいえ、やっぱり個性的で面白いのは90年代の野島作品。ということで、振り返ってみます!
高校教師
野島伸司は、1988年「君が嘘をついた」、1989年「愛しあってるかい!」、1990年「すてきな片想い」ときて1991年に「101回目のプロポーズ」というラブコメの集大成的な作品を大ヒットさせました。
90年代に入り乗りに乗ってきた野島伸司。次の野島作品に日本中が注目する中、野島伸司が出してきたのは「愛という名のもとに」でした。
これもまたヒットしました。バツグンに面白い。が、なんかちょっと今までと違う。違和感がある。そう感じた視聴者は多かったのではないでしょうか?
恋愛ドラマですが主人公たちは別れるし、主要人物が自殺するしですね。誰も幸せになってないんじゃないの?的なエンディングにもモヤモヤしたものです。
で、「愛という名のもとに」の流れを更に過激にして登場した次回作が、ご存じ「高校教師」です!

高校教師
センセーショナルをまきおこしましたね「高校教師」は。教師と生徒の禁じられた愛。女生徒役の桜井幸子が健気てカワイイと評判になりました。確かにカワイイ。教師役の真田広之だってカッコイイ。しかし、それだけではここまで大きな話題になることはなかったのではないでしょうか?
女生徒の一途さは、健気ではあるけれども現実的には暑苦しいものでもあるかと思いますし、受けて立つ教師の包容力に視聴者は共感したのかもしれませんが、現実的には優柔不断ともいえそうです。
そもそも教師と生徒の禁じられた愛ということだけであったら、視聴者はこれほどの衝撃は受けなかった。ここに自殺だのレイプだの近親相姦だのといった当時禁断とされたエピソードをぶち込んだことで唯一無二の作品となったのです。
中でも主人公の同僚教師役の京本政樹。彼が何よりも素晴らしい!ある意味主人公よりも存在感が際立つ!衝撃の要因は京本政樹にあると思いますね。
更にもう一人、ヒロインである女生徒の父親役である峰岸徹。彼がまた良い!感情の振れ幅が極端で、病魔に侵され余命いくばくもない。で、娘であるヒロインとは近親相姦の関係にあるという非常に難しい役を見事に演じています。
野島作品の特徴といえる群像劇に加え、山盛りの禁断のエピソード。納得の衝撃作です。
ひとつ屋根の下
「高校教師」の放送が1993年3月19日で終わり、翌月から早々に放送が開始された「ひとつ屋根の下」。売れっ子とは言え、野島伸司、ちょっとスゴイですね。
野島作品らしく、何かと問題の起こる家族ドラマなのですが、なんと言っても酒井法子の可愛さと福山雅治のカッコよさを世に知らしめた功績がデカイ作品でもあります。

ひとつ屋根の下
7年前の両親を亡くして以来バラバラになっていた柏木家6人兄弟がクリーニング店を営む長男・達也 (江口洋介)のもとで暮らし、様々な困難や葛藤を乗り越えて懸命に生きる家族の姿を描いたドラマ
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長男役の江口洋介、次男役のは福山雅治は、まぁいい。熱血漢と冷静沈着なエリートというよくある設定だ。問題は(まぁ、この設定が物語を面白くしているわけですが)他の兄妹たち。
酒井法子が演じる長女は、実は養女で不倫経験あり。そして白血病に犯されてしまう。
いしだ壱成が演じる三男は傷害事件を起こし少年鑑別所に収容されたという問題児。大路恵美が演じる次女はレイプされてしまい、山本耕史が演じる四男は交通事故により半身不随で車イスの生活をしている。
クセのある兄弟がひとつ屋根の下で暮らすわけですから、問題が起こらない方が無理があります。というか、問題が起こるように仕向けた人物設定です。面白くないはずがありません。
「ひとつ屋根の下」の第11話では視聴率37.8%という驚異的な数字を叩き出しており、これは1990年代の全民放ドラマの最高視聴率(現在でも放送元のフジテレビのドラマの歴代最高記録)となっています。
大好評につき1997年4月14日から6月30日まで「ひとつ屋根の下 2」が放送され、こちらも人気となりました!
聖者の行進
一般に「高校教師」、「人間・失格〜たとえばぼくが死んだら」、「未成年」をTBS野島三部作と呼んでいます。どれもヒット作、話題作で有名なものですが、その三部作に続いて野島伸司がTBSで脚本を手がけた「聖者の行進」、これがまた捨てがたいのです。
主演はいしだ壱成に酒井法子。広末涼子や雛形あきこが花を添え、水沢アキ、いかりや長介が脇を固めます。

聖者の行進
なんというか、設定が野島伸司ですよね。人間扱いされず、暴力、性的虐待を受ける知的障害者達を主人公にしたドラマ。もうこれだけで当時としては問題作の話題作ですよ。
しかも、ヒロインを演じるのは広末涼子。カワイイ、文句なしです。主人公のいしだ壱成も酒井法子も素晴らしいです。
それにしても90年代の野島作品というのは人物設定がどれもこれも特徴的ですから演じる方は大変だったでしょうねぇ。
「聖者の行進」は、野島作品の中でも「高校教師」などと並んで野島伸司の演出方針を疑問視する声の高い作品の一つとされているようです。暴力や強姦といった多くの過激な場面がありますから、そりゃそうだって感じで納得ではあります。
リップスティック
90年代最後の野島作品。1999年には田村正和、常盤貴子主演の「美しい人」と「リップスティック」が放映されています。
どちらも良い作品ですが、ここは「リップスティック」の方を推薦します。何故か?それはですねぇ、広末涼子が実に可愛いいからですよ。

リップスティック
ついにここまできたか。「リップスティック」の設定は何と鑑別所ですよ、鑑別所。登場人物も当然ながら鑑別所教官や収容生という事になるわけで、野島作品らしいといえばらしいのですが、多くの人にとっては馴染みのない場所設定ですよね。だからでしょうか、この時期の野島作品としては大きなヒットとはなりませんでした。
しかし、第21回ザテレビジョンドラマアカデミー賞において監督賞を受賞しているくらいですから作品自体は悪くないのですよ。
「リップスティック」は1999年にVHSでソフト化されたものの、DVD化はされていません。つまり人気がなかったという事なのでしょうが、設定が悪かったですかねぇ…何とももったいない話です。
フジテレビオンデマンドでオンライン配信はされたようですが、なかなか見る機会がないようです。チャンスがあれば是非ご覧になってください!
何かと話題を振りまく野島作品ですが、個人的には「ストロベリー・オンザ・ショートケーキ」が好きですね。2000年代の野島作品はその「ストロベリー・オンザ・ショートケーキ」から始まります!