増補改訂版「ふたりのトトロ」から伝わる、若い情熱が集ったスタジオジブリ第2スタジオ。

増補改訂版「ふたりのトトロ」から伝わる、若い情熱が集ったスタジオジブリ第2スタジオ。

本著は、2018年に発売され好評を博した「ふたりのトトロ(木原浩勝著)」の増補改訂版。著者が宮崎駿監督から「二人で『トトロ』を始めます」と背中をたたかれて1年。いまなお世界中の老若男女から愛され続ける「となりのトトロ」は、スタジオジブリ第2スタジオに集ったクリエイターたちの楽しい情熱と共に生まれました。


いまでこそ世界中の人々から愛される、スタジオジブリの代表作「となりのトトロ」。
しかしながら作品がいかにして作られたか、宮崎駿監督がどんな思いで作品と向き合ったのかを正確に伝える資料は、その知名度に比して少ない。

それはアニメーション制作会社なのだから当然といえば当然で、後に振り返ったところで制作現場の当事者でなければ思い起こすことすら出来ない。

本著は、後に怪談作家としてデビューし、自ら集めた取材内容を客観的に現象として記録した後、分析、抽出して書き残すことでファンを魅了する木原浩勝氏が、作家デビュー前に在籍したスタジオジブリで担当した「となりのトトロ」制作デスク時代の記録と記憶を基に、往時のスタジオジブリの熱気を克明に綴った一冊である。

なお、スタジオジブリ第2スタジオの意味は本書にて。

「この作品は楽しい作品です。楽しく作ってください。」

「日本が舞台の楽しい素敵な映画を作りたい」

宮崎駿監督の企画意図を受けて「となりのトトロ」を楽しく作ることを厳命された著者は、とくに莫大な工数がかかる動画制作スタッフの編成において

1.外部であってもなるべくトトロ専属で
2.トトロの世界観を表現するには女性中心で
3.女性スタッフが働きやすい現場環境作り

結果、社内の動画制作スタッフは大半が女性という、非常に特色あるスタッフ編成を行うこととなる。これが1980年代に実現していたと考えると、驚くばかりである。

また、ハードを極める現場スケジュールの中でも、経験豊かな原画マンと若い動画マンが交わることでクオリティーの向上を実現した「原画チェックシステム」は、厳しい現場に会っても”楽しく作る”ことを宮崎駿監督以下、集ったクリエイター全員が望んだからこそ実現したシステムだった。

となりのタヌキ♪

トトロ制作時にはスタジオ内での煙草の喫煙本数が減ったことのみならず、エンディングテーマ「となりのトトロ」の歌詞を”となりのタヌキ タヌキ♪”と口遊みながら絵コンテを描いていたという宮崎駿監督。

監督自身もまた、全力で楽しく作ることに取り組んでいた様子が伺える。過酷を極める制作現場ながら、その制作中にスタジオから笑いが絶えた日は1日としてなかった。

増補改訂版に添えられた膨大な制作資料

なお、増補改訂版「ふたりのトトロ」には、膨大な制作資料が添えられている。
※制作資料80ページ超大幅増補

「となりのトトロ」はもちろんのこと、併映となった「火垂るの墓」の制作現場、そして前作にしてスタジオジブリデビュー作品「天空の城ラピュタ」の壮絶な進行状況をリアルに伺い知ることが出来る、それこそ制作現場の当事者にしか知りえない資料である。

「この作品が失敗したら、次回作はありません」

増補改訂版に添えられた「天空の城ラピュタ」の週間実績レポートからは、壮絶な進行状況が確認出来る。
なおこのレポートは社内スタッフのみならず、「アニメージュ」誌上のジブリ特集のために編集部の担当と来社したことがある鈴木敏夫氏(現スタジオジブリ代表取締役議長)にも報告されていたことが分かる。正確な進行状況は社内外で共有されていた。

当時、宮崎駿監督が発したこの言葉は、一見すれば興行成績を指すと思われるが、真実は「公開に間に合わないこと」であったと、著者は読み解いている。

スタジオジブリ初代代表の原徹氏

また、著者は本書内でスタジオジブリ初代代表を務めた原徹氏への謝意を述べている。

「風の谷のナウシカ」を制作したトップクラフトの代表取締役社長にしてスタジオジブリの初代代表を務めた同氏の存在があってこそ、莫大な発注行為を伴うアニメーション制作を新会社がやってのけることが出来たのだから、スタジオジブリという企業が立ち上がったのは、まさに原徹氏の功績であろう。

本書の結びは、そんな原徹代表が著者にかけた一言で締められている。

「~あんだが撮影で見せた根性があれば、宮さん相手でも務まるやろ。一緒に宮さんを担がんか_」

増補改訂版 ふたりのトトロ ―宮崎駿と『となりのトトロ』の時代― (講談社文庫) : 木原 浩勝: 本

関連する投稿


スタジオジブリ『海がきこえる』のリバイバル上映が決定!90年代「テレホンカード風」デザインのムビチケが発売!!

スタジオジブリ『海がきこえる』のリバイバル上映が決定!90年代「テレホンカード風」デザインのムビチケが発売!!

国内最大級の映画・ドラマ・アニメのレビューサービス Filmarks(フィルマークス)主催のリバイバル上映プロジェクトにて、1993年公開のスタジオジブリによるアニメ『海がきこえる』が、初の全国リバイバル上映されます。


「高畑勲展-日本のアニメーションを作った男。」が開催決定!メインビジュアル、会場のみどころ、チケット詳細などが発表!!

「高畑勲展-日本のアニメーションを作った男。」が開催決定!メインビジュアル、会場のみどころ、チケット詳細などが発表!!

麻布台ヒルズ ギャラリー、NHK、NHKプロモーションが主催する展覧会『高畑勲展-日本のアニメーションを作った男。』が開催されます。


日本アニメーション創業50周年記念!トリビュートイベント「僕たちの未来少年コナン展 2025」が開催決定!!

日本アニメーション創業50周年記念!トリビュートイベント「僕たちの未来少年コナン展 2025」が開催決定!!

日本アニメーション株式会社がアニメーション制作・ライセンス展開を行う『未来少年コナン』のトリビュートイベント「僕たちの未来少年コナン展 2025」の開催が決定しました。


Z世代にも人気!大人から子供まで楽しめる名作アニメ「パンダコパンダ」の決定本がついに登場!!

Z世代にも人気!大人から子供まで楽しめる名作アニメ「パンダコパンダ」の決定本がついに登場!!

玄光社より、書籍『パンダコパンダ ファンブック』が発売されます。発売予定日は4月15日、価格は2640円(税込)。


アニメの傑作が勢揃い!スタジオジブリ40周年記念としてヘリテージ・オークションズ史上最大の日本アニメオークションが開催!

アニメの傑作が勢揃い!スタジオジブリ40周年記念としてヘリテージ・オークションズ史上最大の日本アニメオークションが開催!

3月22日~24日に開催される「アート・オブ・アニメVol. VI オークション」にて、『となりのトトロ』『AKIRA』『ドラゴンボールZ』など1200点以上のアニメ・マンガ作品のセル画等が出品されます。


最新の投稿


『頭文字D』の世界が千葉に!名車モチーフの雑貨が揃うポップアップストアが期間限定オープン

『頭文字D』の世界が千葉に!名車モチーフの雑貨が揃うポップアップストアが期間限定オープン

人気漫画『頭文字D』のポップアップストアが、グランサックス イオンモール千葉ニュータウン店に登場。伝説のハチロク(AE86)を再現したウェットティッシュケースや、RX-7型の無線マウス、366日分のバースデーキーチェーンなど、ファン垂涎の公式ライセンスグッズが勢ぞろい。日常を彩る名車アイテムの魅力を紹介します。


昭和の大横綱「千代の富士」の肉体がスーツから甦る。NY発OVERCOATが挑む究極のパターンメイキング

昭和の大横綱「千代の富士」の肉体がスーツから甦る。NY発OVERCOATが挑む究極のパターンメイキング

ニューヨーク発のブランド「OVERCOAT」が、昭和の名横綱・千代の富士との異色のコラボレーションを発表。生前愛用したテーラードスーツから身体寸法を逆算し、伝説の肉体をパターン(型紙)として再現。特別展示や限定アイテムの販売を行うポップアップイベントを、2026年3月より東京・ニューヨークで順次開催します。


伝説の「プロレスリング・マスター」武藤敬司、その足跡を網羅。『Gスピリッツ選集』第3巻が待望の発売!

伝説の「プロレスリング・マスター」武藤敬司、その足跡を網羅。『Gスピリッツ選集』第3巻が待望の発売!

辰巳出版は2026年3月6日、プロレス専門誌『Gスピリッツ』の証言集第3弾『Gスピリッツ選集 第三巻 武藤敬司篇』を発売しました。平成の新日本プロレス黄金期を支え、日米を股にかけて活躍した武藤敬司のキャリアを、本人や関係者の貴重なインタビューで振り返る一冊。新録インタビューも追加された、全プロレスファン必携の保存版アンソロジーです。


没後30年、俳優・渥美清の軌跡を辿る。神保町シアターで「寅さん」から知られざる名作まで12本を特集上映

没後30年、俳優・渥美清の軌跡を辿る。神保町シアターで「寅さん」から知られざる名作まで12本を特集上映

東京・神保町の名画座「神保町シアター」にて、2026年3月14日より特集上映『没後30年 俳優・渥美清』が開催されます。国民的映画『男はつらいよ』シリーズの人気作をはじめ、主演を務めた貴重なラブコメディや社会派人間ドラマなど、全12作品をフィルムで上映。日本映画界に多大な足跡を残した稀代の名優、渥美清の多才な魅力を再発見する貴重な機会です。


『ドラゴンボール』亀仙人の「カメハウス」が超精巧フィギュア化!内装まで再現した豪華セットが登場

『ドラゴンボール』亀仙人の「カメハウス」が超精巧フィギュア化!内装まで再現した豪華セットが登場

バンダイスピリッツより、ドラゴンボールの聖地「カメハウス」を立体化した『ワールドコレクタブルフィギュア PREMIUM-カメハウスセット-』が登場。全高約22cmのハウス本体は室内まで作り込まれ、悟空や亀仙人など7体のフィギュアが付属。日常シーンから名場面まで自由に再現可能なファン垂涎のアイテムです。