黒柳徹子のふしぎ発見!  38歳でタマネギ頭、そしてノーブラになるまで

黒柳徹子のふしぎ発見! 38歳でタマネギ頭、そしてノーブラになるまで

6歳のとき、演劇でキリストを演じ、羊役の子にティッシュペーパーを突きつけ「アナタ、羊でしょ。食べなさい」といってから、38歳でニューヨークへ演劇留学し、タマネギ頭、ノーブラになるまで。


「子どもの頃から、学校でも家庭でも人格を大切にしてもらったお陰で、自分が何ができるかはわからないけど「何かはできるだろう」とずっと思ってきました。
自己肯定感を育んでもらったことが大きかったと思います」
という徹子の父は、NHK交響楽団のコンサートマスター(指揮者)でヴァイオリニストの黒柳守綱。
母は、エッセイストの黒柳朝。
弟は、ヴァイオリニストの黒柳紀明。
妹は、バレリーナでエッセイストの黒柳眞理。
伯父は、日本ニュースのニューヨーク支社長やアメリカ・メトロニュースの極東代表を務めた田口修治。
年末、NHK交響楽団が第9のコンサートを開いたとき、コンサートマスターだった22歳の父親とコーラスとしてやってきた音大生、19歳の母親が出会った。
このコンサートのコーラスは全員、ボランティアの音大生。
そのたくさんいるコーラスの中から、父は母に一目惚れ。
日比谷公会堂でのコンサートの後、
「お茶を飲みにいかない」
と誘った。
喫茶店では山盛りのサクランボを出され
「サクランボ、好き?」
と聞かれた母は
(こんなおいしいもの、誰でも好きだろ)
と思いながら
「大好き」
と答えた。
そして喫茶店で話し込んだ後、
「僕の部屋に来ない」
と誘われ、喫茶店の上のアパートに行ってみるとワンルームの部屋にベッドと長椅子があるだけだった。
「私、帰ります」
「もう電車ないよ」
北海道の実家から出てきて、麹町の親類の家に住みながら学校に通っていた母は、ここがすごく遠い場所だとしかわからず、タクシー代もなく、部屋に残るしかなかった。
そしてその後もしばらすそこにいた。
父は出かけるとき、外からもカギをかけた。
「もう監禁よね!」
(黒柳徹子)

そんなプレイボーイだった父親だが、仕事にはとても厳しかった。
若い頃、天才ヴァイオリニストと呼ばれ、21歳でNHK交響楽団のコンサートマスターとなるとミスをした団員をにらみつけ
「みんな死に物狂いで弾いているのに、なんで間違えるんだ」
と怒り、
「怖い」
と恐れられていた。
徹子いわく
「特にヴァイオリンに関しては鬼だった」
という父は、家でヴァイオリンのレッスンを行った後、帰りの玄関で生徒が
「先生、今日は天気がいいですね」
というと急に怒り出した。
「今、君が考えなければならないのはヴァイオリンのことであって天気のことじゃない。
そんなことどうだっていいじゃないか」
また結婚後は、1度も浮気をしなかった。
とにかく仕事以外は母といつも一緒にいた。
父が他界したとき母は70歳で
「いつもママきれい、ママきれいっていってくれてたけど、そういってくれるパパがいなくなったら、私なんてただのおばあちゃんじゃない。
せめてもうちょっと早く死んでくれれば私だってまだ次のチャンスがあったのに」
といい、その後、アメリカに住んだり、公演活動をしながら95歳まで生きた。

6歳のとき、徹子は日曜学校の演劇でキリスト役に抜擢された。
3人の賢者が天使にに導かれてキリストが生まれた馬小屋にたどり着き、3つの贈り物をするという場面。
マリア様に抱かれた徹子は、羊役の子供にの顔の前にティッシュペーパーを突きつけた。
「アナタ、羊でしょ。
食べなさい」
「イエス様はそんなことなさいません!」
牧師にキリスト役を降ろされ、羊役になると
「チリ紙ちょうだい」
といいながらキリストの足をくすぐって羊役からも降ろされた。

1939年4月、東京、大田区の公立小学校に入学。
3ヵ月後の7月、
母親が呼び出され「お嬢さんがいるとクラス中の迷惑になります」
といわれて退学。
現在でいうADHD、ASD、LDなどの障害のある子供と判断されたのかもしれない。
日本初のリトミック教育(音楽、演劇、ダンスなどを多用して楽しく学ぶ教育)を導入した自由が丘のトモエ学園に転校。
初めて会った小林宗作校長に
「君は本当はいい子なんだよ」
といわれたことや、教室が廃車になった電車だったことが気に入った。
トモエ学園の授業は、子どもたちの興味や個性を尊重し、席も時間割も自由。
その日の気分で好きな席に座り、各自のペースで勉強し、校外学習も多かった。
この斬新で自由なスタイルの下、徹子は友達と一緒にノビノビと元気よく育っていった。
「義経と弁慶」の演劇をすることになたとき、
「私、かわいかったので」
主役の義経に抜擢。
関所で
「義経と弁慶ではないか」
と疑われ、そうでないことを証明するために弁慶が義経を殴るシーンで、弁慶役にブタれた徹子は反射的に足にかみついてしまい、山伏役に降格。
5人の山伏が
「♪お山は晴天♪」
と歌いながら山を登るシーンで金剛杖で指揮をとってしまい、山伏役も降ろされた。


1941年12月、日本がアメリカを奇襲攻撃したことで太平洋戦争が勃発。
家には父親が東洋蘭の栽培をするための温室があって、そこに防空壕を掘って、空襲警報が鳴る度、家族はそこに避難していた。
あるとき防空壕の中で大きなガマガエルを見つけた母親は、素手でつかんで父親にくっつけた。
ガマガエルが嫌いな父親は、警報が鳴る中、何度も防空壕から出そうになった。
それをみて徹子たちは小声で笑った。
戦争が始まると、その日その日に必死で、楽しいことや笑うことは少なくなっていた。

テレビはまだなく、国はラジオで国民に
「日本は勝っている」
と伝えていたが、トモエ学園でも避難する数が増え、小学生の徹子は
「勝っているなんていうわりにしょっちゅう空襲がくるんだな」
と不思議に思った。
学校は毎日あったが店は全部閉まっていて、食料は配給のみ。
「これしかないから考えて食べてね」
と母親に渡される大豆15粒が1日のゴハンで常に空腹だった。
やがて大豆も配給されなくなると栄養失調になり、体中におできができて、爪の下が腫れて膿んできた。

1944年、敵国の音楽として演奏ができない状況が続いていた父親に召集令状が届き、麻布の第3連隊に入隊。
ガマガエルをくっつける相手がいなくなった母親はさみしくなった。
戦争中、自由が丘の駅で戦地に赴く兵隊を旗を振って見送ると裂いたスルメを1本もらえた。
だから徹子も駅に人が集まっているとその中に入っていった。
「ただスルメが欲しかったのです。
後になって、そのことが私の中に大きな罪の意識として残りました。
私が送った兵隊さんの中には戦死して帰ってこなかった人もいた・・・」
徹子は、
「戦争は幸せの真逆にあるもの。
楽しいもの、愛するもの、美しいものを奪ってしまう」
といい、戦争の恐ろしさを伝えていくもの、自分の使命だと自覚している。

1945年3月10日、東京大空襲でトモエ学園は焼失。
前年の夏休みに北海道旅行をした帰り、汽車で隣り合わせた青森県の農家の「おじさん」を頼って、祖母、母、弟、妹と疎開。
魚が食べられるようになって、栄養失調はすぐに治った。
「戦時中、私は栄養失調で、おできが体中にできていました。
それが膿んで、全身がドキンドキンと脈打つあの感覚。
疎開先の青森でお魚を食べたら、おできがすぐ治って、タンパク質の大切さを痛感しました 」
疎開中、子供はリンゴの袋貼りをやらされたが、他の子供がすぐに飽きてやめてしまう中
「飽きない性分なの」
という徹子は延々と続け
「おめ、飽ぎねーのか?」
と聞かれても
「飽ぎね」
と答え、いつまでも作業を続けた。
「テレビの出演料と同じくらいお金をいただけるなら『職業・袋貼り』でもいいくらい!」

1945年8月、終戦後に東京に戻ったが、父親は捕虜としてシベリアにいた。
母親の友人が家を訪ねてきたとき、留守番をしていた徹子は玄関に座り
「母はただいま出かけております。
父はシベリアにいっております。
おことづけがあれば伺います。
ただシベリアの父への伝言はいつになるかわかりません」
と対応し
「お利口ね」
とホメてもらった。


1949年4月、イギリス系のミッションスクール(キリスト教の教えを教育理念に掲げている学校)、香蘭女学校に入学。
同年11月22日、父、黒柳守綱がシベリアから復員。
日本に向かう引揚船、高砂丸の中で、疲れ切った人々を励ますようにバイオリンを弾いた。
徹子は父親に笑顔で駆け寄っていった。
すると父親は
「ただいま、トット助!」
とうれしそうにいった。
両親は共に美形で、家に来たお客様にあいさつしたときに
「あら、お父さんもお母さんもおキレイなのにね」
と少し失礼なことをいわれたことがあったが、母親が即座に
「素直なだけが取り柄です」
というのを聞いて
(きれいより素直なのがいいんだ)
と思った。

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