札幌の恋人「ジャネット・リン」とは

札幌の恋人「ジャネット・リン」とは

1972年札幌オリンピックのフィギアスケート女子シングル銅メダリストである彼女。2001年に世界フィギアスケートに殿堂入りしています。


札幌オリンピックでのエピソード

札幌オリンピック女子フィギアスケートの金メダリストを思い出せる人が少ないのは、華やかなフリーの演技と眩しい笑顔のジャネット・リンに魅了されたからです。彼女は「銀盤の妖精」そのもので、最も鮮烈な記憶を日本中に残した選手ではないでしょうか。

華やかな演技もさることながら、シット・スピンでバランスを崩し尻もちをついた時、はにかんだ笑顔を浮かべ、すぐ立ち上がって演技を続けた彼女に、日本中が衝撃を受けたそうです。その瞬間を見ていた誰もが彼女に心を奪われたに違いありません。はにかんだ笑顔が可愛かったと元ボクサーの赤井秀和も話しています。

選手村の自室の壁に「Peace & Love」と書き残して日本を離れた彼女ですが、この建物が分譲アパートとなった後に彼女のメッセージは消されてしまいました。しかし翌1973年に来日し、再びサインした「Peace, Love + Life」は消されずに、歴代家主によって今も大切に保存されています。

彼女の経歴

1953年シカゴ郊外で生まれた彼女は、3歳半で初めてスケート靴を履きます。5歳からはフィギュアの訓練を始め、12歳でジュニアの国内選手権にて優勝を果たしています。

1968年のグルノーブルオリンピックに出場したときは、まだ14歳でした。その時の成績は9位。すでに注目を集めていた彼女は、記者から「アメリカのもので何が一番恋しいですか?」と問われ、ハンバーガーと答えたそうです。子どもらしい可愛い回答です。でも、この回答によってマクドナルドがアメリカ選手団に100個のハンバーガーを届けることとなり、たいへん話題になりました。

その後、同大会で金メダルを獲得したペギー・フレミングがプロに転向すると、彼女はアメリカ女子フィギュア界のエースとなったのです。それから、1973年まで5年連続で全米選手権で優勝し、USレディース・シニア・ナショナル・チャンピオンの座に上りつめました。

グルノーブルオリンピックで金メダルを獲得したペギー・フレミング(中央)

1972年の札幌オリンピックに出場。この時彼女は18歳でした。演技中、着氷に失敗したにもかかわらず終始笑顔で滑っていたことは、日本だけでなく全世界で大絶賛されたのです。

札幌オリンピックから1年後の1973年にプロに転向し、以後2年間アイス・フォーリーズに所属し、各地を巡演しつつ、全米主要都市の広報を担当していました。しかし喘息により1975年に引退してしまいます。

引退後は結婚し、双子を含む5人の子どもに恵まれました。彼女はスケートを諦めていたわけではなく、子どもを育てながらも食事療法で病を克服し、1981年に現役復帰します。この時彼女は28歳。復帰後1982年と1983年にはプロのスケート選手権で優勝しましたのですが、翌1984年に引退します。彼女は後年「スケートよりも家族のほうが大切と考えた」と話しています。

主な成績

彼女の成績に少し触れてみます。

1972年 札幌オリンピック 女子シングルで銅メダル獲得
  同年 カルガリー世界選手権 女子シングルで銅メダル獲得
1973年  ブラチスラヴァ世界選手権 女子シングルで銀メダル獲得
その他 全米選手権では5回優勝しています。

ジャネット・リンと同時期に活躍した選手は、ジュリー・ホームズ、スーナ・マーレイ、ドロシー・ハミルです。

引退後の活躍

引退後も日本での人気も衰えず、1983年にはTBSテレビドラマ「胸さわぐ苺たち」に本人役でゲスト出演するほど。引退前ですが1974年にはカルピスのCMにも出ています。


1994年にアメリカ・フィギュアスケート界栄誉殿堂入りし、1998年長野オリンピックではスポンサーであるマクドナルドにより、長野オリンピック・スポークスパーソンに就任しています。長野オリンピック親善大使として来日し、選手村のマクドナルドオープニングセレモニーで挨拶を行いマクドナルドのCMにも出演しました。

2001年世界フィギュアスケート殿堂入り。
その後、2007年キリスト教の文書伝導を目的とするパワー・フォー・リビングのキャンペーンに、日本ハムのヒルマン監督(当時)、歌手の久保田早紀(久米小百合)、音楽ユニットm-floのMCであるVERBALとともに出演しています。

さらに2022年札幌市は1972年札幌冬季五輪から50年を記念してジャネット・リンのメッセージを公開するなど未だ日本ではジャネット・リン人気が続いています。

おしまいに

現在の彼女は、数年前に審判としてスケート界に復帰しているようです。先に紹介したように2022年2月に彼女からのメッセージが札幌市で公開されましたが、メッセージでは金メダルに届かなかった悔しさに触れつつ、「未熟な女の子が最善を尽くした結果、人々の関心を集めてしまうなんて」「日本の皆さんに永遠に感謝します」と記されています。日本にとっても彼女にとっても記憶に残るオリンピックだったのでしょうね。

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