時代劇「江戸を斬る」とは
月曜の夜8時、ちょうど夕食後のひと時、もしくは晩酌中に放送され、幅広い年齢層から愛された時代劇です。TBS系テレビ番組「ナショナル劇場」で放送され、第8部まで製作・放送されました。第1部は、1973年に竹脇無我を主演にて「江戸を斬る 梓右近隠密帳」として始まりました。最高視聴率は25.7%。第2部から第6部は、主演を西郷輝彦とし1975年から1981年まで放送され、最高視聴率は36.7%でした。第7部、第8部は、里見浩太朗が主演となり、1994年まで続くことになりました。
ストーリーは、第1部では政治サスペンスが描かれていましたが、第2部より「遠山の金さん」をモチーフとして描かれています。
第1部 「梓右近隠密帳」
「江戸を斬る」第1部では、徳川家光の異母兄弟で保科正之の双子の弟の梓右近と幕府転落を企む由井正雪一派の動乱を描いた政治サスペンス劇となっています。主演の竹脇無我が、主人公・梓右近と双生児の兄・保科正之の二役を演じています。
ストーリーは、徳川三代将軍家光の治世下、徳川政権が完全に安泰とは言えなかったその頃、裏長屋に梓右近と名乗る浪人が住んでいました。右近は将軍家光の異母弟で、保科正之の双子の弟という数奇な星のもとに生まれました。当時、双子の迷信から危うく闇に葬られるところを、大久保彦左衛門が乞い受けて育てます。しかし、右近は大久保屋敷を出てしまったのです。その後、右近は彦左衛門との再会をきっかけに、将軍の大権を行使し得る隠し目付として悪に挑んでいくことになるのでした。
第2部~第6部 「江戸を斬るⅡ~Ⅵ」
第2部からは、政治サスペンス劇から一転、「遠山の金さん」をモチーフに恋愛とホームドラマ要素を取り入れた一話完結ドラマに路線を変更しています。主人公の遠山金四郎を西郷輝彦が演じています。
ストーリーは、桜吹雪の彫り物をした浪人の金さんが、江戸を騒がす事件を岡っ引きはもちろん、金四郎を取り巻く仲間たちと裁いていきます。実はこの金さんは、奉行所など要職を歴任した名門遠山家の跡取り息子の遠山金四郎だったのです。

第3部になる「江戸を斬るⅢ」では、金四郎が南町奉行所勤め、金四郎の適役として成田三樹夫演じる火付盗賊改め方長官・脇坂重蔵が登場します。南町奉行として人気を集める金四郎を面白く思わない重蔵が、金四郎を蹴落とそうと情け容赦ない取り締まりを強行します。そんな強権捜査で庶民を苦しめる重蔵に立ち向かっていく金四郎・・・。
今回は、金四郎とおゆき(雪姫)・松坂慶子の結婚もあり、仕事に恋にと痛快時代劇となっています。

金四郎の結婚相手 おゆき(雪姫):松坂慶子
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前作から1年半ぶりの「江戸を斬るⅣ」は、浪人姿だった金四郎ですが「大工の金公」と名乗って町人姿で探索にあたるスタイルが本格化します。主要登場人物や各設定も今回の作品の設定がおおむね最終シリーズのVIまで継承されています。
ストーリーは、前作で結婚した金四郎と松坂慶子演じる紫頭巾・お雪の夫婦剣法が、三度大江戸の悪を斬ります。お転婆な妻に何かと気を揉む金四郎と内助の功だけでは気が済まない妻おゆきのコンビが絶妙で、おしどり夫婦の掛け合いに注目したい作品です。

さて第5部となってくると話をどういうふうに展開させていくのか気になってきました。金四郎がヒロインと結婚したところで終わらないのが「江戸を斬る」。
「江戸を斬るⅤ」では、時間の流れが少々乱れていて視聴者へのちょっとしたなぞかけのようなストーリーとなっています。第3部「江戸を斬るⅢ」から登場している岡っ引きのお京が、1話目では岡っ引きになる前のお京として描かれていたりします。そして、松坂慶子の多忙によりおゆきの出番が少なくなった代わりに「お江戸の悪を許しちゃおけねぇ男よ」という決め台詞とともに桜吹雪を見せるシーンが加わりました。ちょっと「遠山の金さん」っぽいですよね。
さて、西郷輝彦の「江戸を斬る」最終作が「江戸を斬るⅥ」となります。
この頃になるとおゆき役の松坂慶子が、ますます多忙となり全28話ある中で7回しか登場しません。金四郎との夫婦剣法が見られなくなった代わりに、岡っ引きのお京が大活躍します。
ただ、活躍するお京も前作の山口いづみより由美かおるにキャスト変更されているんですね。
第7部・第8部 「江戸を斬る」
西郷輝彦主演の「江戸を斬る」シリーズから6年。1987年に主演を里見浩太朗と一新してのシリーズ続編がスタートします。なんと主人公の遠山金四郎は、火消し一番組を表稼業にした北町奉行・遠山金四郎と設定が変わりました。
第7部になる「江戸を斬る」ですが、第2部からタイトル後にⅡやⅢとシリーズ番号がありましたが、今作品より「江戸を斬る」のタイトルのみとなりました。全作品とはストーリーの舞台が変わったからでしょうか。
さて、第7部のストーリーですが、旗本五百石取りの次男坊でありながら、家督相続に絡む事情で桜吹雪の彫物を入れて、一見放蕩無頼に暮らしている遠山金四郎。箱根に湯治に来ていた金四郎に思わぬアクシデントが起こります。湯元の宿で起こる事件に潜む悪党たちを江戸の仲間たちと豪快に裁いていきます。


「江戸を斬る」シリーズの最後の作品である第8部。第6部以来の登場となります「紫頭巾」(松坂慶子演じたおゆき)を城之内早苗が熱演しています。
ストーリーは、将軍家のご落胤を名乗る女性の真贋を巡る騒動に直面した金四郎が、その真相を暴くところから物語がスタートします。先代将軍・家斉のご落胤・茜姫(芦川よしみ)が現れたという話で、江戸の町は大騒ぎになるのです。
おわりに
長く愛された「江戸を斬る」ですが、主人公を演じる俳優によって面白みが変わって楽しい時代劇です。個人的には、西郷輝彦バージョンが長期制作放送されていただけあって、江戸を斬る=西郷輝彦というイメージがついています。改めて第1部から見て行くと軽快感があるのは、竹脇無我と西郷輝彦かなと思いました。里見浩太朗は、貫禄があるなと感じましたね。
遠山金四郎を題材にしたドラマ「遠山の金さん」も同時代に放送されていたも面白いですね。