太陽にほえろは個性派の俳優がそろった刑事ドラマ

太陽にほえろは個性派の俳優がそろった刑事ドラマ

「太陽にほえろ!」は、1972年(昭和47年)7月21日から1986年(昭和61年)11月14日までの間、14年と4か月という長期に渡って日本テレビ系列で放送されました。金曜日20時というゴールデンタイムの1時間枠で、多くの視聴者から支持された大人気刑事ドラマです。放送回数はなんと全718回、その人気の度合いがわかりますね。


人気刑事ドラマ「太陽にほえろ」

「太陽にほえろ」は、ニックネームで呼び合う刑事たちの活躍を描いたテレビドラマです。登場する刑事たちが所属するのは、東京都新宿区矢追町所在の警視庁七曲警察署捜査第一課捜査第一係。そして捜査第一係を束ねているのが、石原裕次郎演じるボスこと藤堂係長です。1972年にスタートしてから、15年近くも続いた長寿番組で、日本の刑事ドラマの代表格となりました。

かつての刑事ドラマは、事件と犯人を中心に描く内容が多く、メインとなる刑事達は脇役的な扱いになってしまうことも。しかしながら「太陽にほえろ」では、登場する刑事の各々にフルネームと性格設定を確定して、「青春アクションドラマ」として刑事が主役となる物語が展開しました。

「太陽にほえろ」は走る刑事ドラマとしても良く知られ、勝野洋と宮内淳のコンビが走った総延長距離は、なんと地球半周分とか。基本的に、事件が発生してから解決するまでは1話完結となっています。一係のメンバーと登場人物のエピソード等は、時系列で描くというスタイルをとっています。

当初の構想から大きく方向転換

当初の構想では、人気の萩原健一が演じるマカロニ刑事こと早見淳を主人公として、新米刑事がだんだんと成長していく物語として展開させる予定でした。しかし何故か萩原健一が、製作側の意志とは異なり降板を申し出ます。「劇中で死にたい」という萩原の希望を受け入れて、刺殺される形で降板することになりました。

主人公の降板という重大事態ではあったのですが、番組の打ち切りはしないで、萩原の後任として松田優作を起用。更なる成功を収めることとなります。このことで再度制作側が検討し、新人俳優を主役で出演させ、刑事として成長していき、やがて殉職して番組を降板するというスタイルが定着しました。

そして「太陽にほえろ」で一人前になった新人俳優が、多数誕生します。その後に路線が安定すると沖雅也・神田正輝・三田村邦彦・世良公則・地井武男などの、実績のある人物が起用されるケースも出てきます。また石原裕次郎の脇を固める刑事たちにも、主演となる回が用意されるようになりました。

番組の終了は石原裕次郎の健康

番組を収録していくにあたって、制作側はレギュラー出演者のスケジュール調整に特に注意を払ったそうです。実際の警察官は、非番という交代制の休みがあるので、番組1年目では萩原・小野寺・下川にお休みがありました。しかし2年目以降は、病欠といったごく一部の例外を除き、一係のメンバーは毎回顔を揃えています。

石原裕次郎の場合、1986年に再入院が決まり代行者として渡哲也が出演しています。その後、石原裕次郎から「健康な状態での復帰は無理」という理由で降板の申し出があり、番組は円満に終了することに。最終回に何とか復帰した石原裕次郎は、番組のテーマでもある「生命の尊さ」を訴え、主役として物語をしめくくったのです。

魅力的な登場人物

七曲署捜査第一課捜査第一係の刑事は、一応7人ということになっていました。実は、藤堂係長が一係の人員は7人だと語った回があるんですよ。ですので、新任刑事が着任するのは、殉職・異動・退職などで欠員が生じた場合か、本庁が配属人数を改定した場合に分けられます。しかし番組の後期では、8人以上の所属が見られ、配属人数の改定でもあったのでしょうか。

【藤堂俊介(ボス)】
石原裕次郎が演じるボスは、七曲署の捜査第一係長です。威厳を持ちながら包容力に溢れる、理想的な上司で描かれています。本庁でも十分に働ける実力者ですが、妥協を許さない捜査を進めるため、所轄の一係長に留まる設定。シリーズの初めでは、自らが現場に出ることも多かったのですが、中期以降においてはデスクの前で指揮を執るようになっています。

【山村精一(山さん)】
露口茂が演じる山さんは、藤堂係長を補佐する司令塔的なポジションにある刑事です。番組の初期ではアウトロー的なキャラクターでしたが、次第に推理力をベースにした沈着冷静なキャラクターに変化していきました。落としの山さんとも呼ばれる山村は、相手の心を読み取る洞察力を持ち、優れた推理力に的確な取調べの技術で、数多くの難事件を解決しています。主要刑事の中で、最多登場回数・最多連続登場を記録しました。

【石塚誠(ゴリさん)】
竜雷太が演じるゴリさんは、食欲旺盛&豪快な九州男児です。押しの強い性格から、ゴリ押しのゴリさんとニックネームが付いたのですが、新人刑事は体格や顔つきからゴリラのゴリさんと間違われることも。そして、警視庁刑事の中でも3本の指に入る射撃の名手でもあるのですが、普段は拳銃に弾丸を装塡していませんでした。しかし、早見刑事が殉職したことから、1発だけ装填するようになったそうです。

【島公之(殿下)】
小野寺昭が演じる殿下は、甘いマスクの見た目から殿下というニックネームが付きました。しかし、殿下という名で呼ぶのは、さすがに係長や先輩刑事だけ。後輩刑事からは名前で呼ばれています。番組初期においては、遊び人的なキャラクターに描かれていました、優しい人格に注目されて、良心的なキャラクターへとシフトしていきました。それでも命を軽視したりする相手には、熱く立ち向かうところも持っていました。

【野崎太郎(長さん)】
下川辰平が演じる長さんは、交番勤務からのたたき上げ刑事で、警官歴はメンバーの中で一番長いとか。山村刑事より早く一係に赴任していたような節も見られます。実は放送当初では、山村が野崎に敬語を使っている場面があったんですよ。藤堂係長以外のメンバーで、山村とタメ口で話せる唯一の人でもあります。番組の初期では、結構棘のあるところもありましたが、中期以降では温和なキャラへに描かれています。

【早見淳(マカロニ)】
萩原健一が演じるマカロニは、第1話で本富士署から一係に転属される刑事という設定でした。長髪・ノーネクタイ・三つ揃いのスーツといった見出しなみで、銃を提げた姿がマカロニ・ウェスタンみたいだ島にからかわれ、それがニックネームとなったそうです。やること全てが型破りな刑事として描かれ、あまりの暴走ぶりは先輩刑事たちの頭痛の種になっていました。

【内田伸子(シンコ)】
関根恵子が演じるシンコは、七曲署少年課婦警として初登場します。しかし第38話において、捜査一係に配属となり夢が叶います。藤堂係長のかつての同僚だった父親が退職後に始めた小料理屋で、休みの時にはシンコも手伝をしていました。そのせいで、時折おしんことかわれることも。柴田刑事と結婚するために寿退職をしています。

【柴田純(ジーパン)】
松田優作が演じるジーパンは、殉職した早見刑事の後任と加わったメンバーです。なんと無銭飲食で捕まってしまい、配属の日は留置場から出勤するという変わり種。空手の有段者で、ジーパン姿で暴れまわります。その後シンコ刑事と婚約しますが、自分が命を守った男に撃たれて殉職。有名な死ぬ今際のセリフが、「何じゃ、こりゃあ! 死にたくねぇよ、何で死ぬんだよ・・」。実はこの有名なセリフは、台本にない松田のアドリブだったそうです。

【その後も入れ替わりの新人刑事が】

長く番組が続いていく中、新たな新人スターが続々登場。三上順刑事(テキサス)役の勝野洋・田口良刑事(ボン)役の宮内淳・滝隆一刑事(スコッチ)役の沖雅也・岩城創刑事(ロッキー)役の木之元亮・五代潤刑事(スニーカー)役の山下真司・西條昭刑事(ドック)役の神田正輝・竹本淳二刑事(ラガー)役の渡辺徹・原昌之刑事(ジプシー)役の三田村邦彦・春日部一刑事(ボギー)役の 世良公則と続いていきます。

そしてここで、殉職した石塚の後任としてやってきたのが、ベテランの井川利三刑事(トシさん)役をする地井武男。その後も5人の刑事が赴任し、最後は橘兵庫(警部)役の渡哲也が、石原裕次郎が復帰するまでの間、係長代理として警視庁捜査一課[から臨時に着任しています。こうやって見ると、なかなかに豪華な顔ぶれですよね。

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