第63回アカデミー賞
第63回アカデミー賞は1991年3月25日に行われたアカデミー賞発表・授賞式である。

会場となったシュライン・オーディトリアム
第63回目のアカデミー賞授賞式は、 シュライン・オーディトリアムで行われた。
結果は、ケヴィン・コスナーの『ダンス・ウィズ・ウルブズ』が、作品賞、監督賞、脚色賞を含む7部門を受賞した。
また、日系人監督スティーヴン・オカザキの『収容所の長い日々/日系人と結婚した白人女性』が短編ドキュメンタリー映画賞を受賞している。
作品賞『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(Dances with Wolves)
『ダンス・ウィズ・ウルブズ』は、1860年代のフロンティアを舞台に、北軍の中尉とスー族と呼ばれるインディアンとの心の交流を描いた西部劇映画。
フロンティアへの敬意・郷愁を描いている点で従来の西部劇とは大きく異なる。また、これまでの「インディアンは片言の英語を話す」というステレオタイプからも脱却しており、「インディアンたちが彼らの言語で喋る」、という点でも話題を集めた。
第48回ゴールデングローブ賞 作品賞も獲得。のちに、「4時間アナザー・ヴァージョン」と呼ばれる全長版が公開された。

ダンス・ウィズ・ウルブズ
作品賞のその他の候補作は以下の通り。
レナードの朝
ゴースト/ニューヨークの幻
ゴッドファーザー PART III
グッドフェローズ
監督賞:ケヴィン・コスナー『ダンス・ウィズ・ウルブズ』
ケヴィン・コスナーは監督および製作であると同時に、主役のジョン・ダンバー中尉(狼と踊る男)を演じている。
コスナーは実はチェロキー族インディアン、ドイツ、アイルランドの混血である。1987年の『アンタッチャブル』の主演をしたことで一躍有名になった。
環境保護活動にも意欲的で、1992~1993年ごろから、石油回収技術を開発する企業オーシャン・セラピー・ソリューションズに2000万ドル以上の私財を投じ、水と油を分離させる遠心分離機を開発させている。

ケビン・コスナー(Kevin Costner)
他の監督賞ノミネートと作品は以下の通り。
フランシス・フォード・コッポラ(ゴッドファーザー PART III)
スティーヴン・フリアーズ(グリフターズ/詐欺師たち)
バーベット・シュローダー(運命の逆転)
マーティン・スコセッシ(グッドフェローズ)
主演男優賞:ジェレミー・アイアンズ『運命の逆転』
『運命の逆転』は、1980年のクラウス・フォン・ビューロー事件を映画化したもので、アラン・ダーショウィッツの『Reversal of Fortune: Inside the von Bülow Case』を原作としている。
ジェレミー・アイアンズはイギリスの法律家、演劇評論家のクラウス・フォン・ビューロー役で受賞した。受賞スピーチでは、自身が双子役をして高く評価された『戦慄の絆』の監督であるデヴィッド・クローネンバーグに対し、機会を与えてもらった事への謝辞を述べた。

ジェレミー・アイアンズ(Jeremy Irons)
主演男優賞のノミネートは以下の通り。
ケヴィン・コスナー(ダンス・ウィズ・ウルブズ)
ロバート・デ・ニーロ(レナードの朝)
ジェラール・ドパルデュー(シラノ・ド・ベルジュラック)
リチャード・ハリス(ザ・フィールド)
主演女優賞:キャシー・ベイツ『ミザリー』
『ミザリー』は、スティーヴン・キングの同名小説を映画化したもの。大衆向けロマンス小説「ミザリー・シリーズ」の作者ポールが自動車事故に遭い、彼のファンの中年女性アニーが助けるが、彼女はポールを看病すると言いつつ拘束・監禁してしまうストーリー。
キャシー・ベイツは狂気の中年女性アニー・ウィルクス役での受賞。ゴールデングローブ賞 主演女優賞(ドラマ部門)にも輝いている。

キャシー・ベイツ(Kathy Bates)
他に主演女優賞にノミネートされた方は以下の通り。
アンジェリカ・ヒューストン(グリフターズ/詐欺師たち)
ジュリア・ロバーツ(プリティ・ウーマン)
メリル・ストリープ(ハリウッドにくちづけ)
ジョアン・ウッドワード(ミスター&ミセス・ブリッジ)
助演男優賞:ジョー・ペシ『グッドフェローズ』
『グッドフェローズ』は、ニコラス・ピレッジの同名ノンフィクション小説を原作にした犯罪伝記映画。1955年~1980年のニューヨーク・マフィア界に生きた、ヘンリー・ヒルという実在の男を描く。
ジョー・ペシは、武装強盗と殺人に秀でたトミー・デヴィート役での出演。ペシは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』や『カジノ』での暴力的なイタリア系マフィアの役でおなじみだが、『ホーム・アローン』ではユーモラスな泥棒コンビを演じている。

ジョー・ペシ(Joe Pesci)
助演男優賞のノミネートは以下の通り。
ブルース・デイヴィソン(ロングタイム・コンパニオン)
アンディ・ガルシア(ゴッドファーザー PART III)
グラハム・グリーン(ダンス・ウィズ・ウルブズ)
アル・パチーノ(ディック・トレイシー)
助演女優賞:ウーピー・ゴールドバーグ『ゴースト/ニューヨークの幻』
『ゴースト/ニューヨークの幻』は、愛する人が幽霊となって目の前に現れる物語で、このアイデアはのちの映画や小説に影響を与えた。
ウーピー・ゴールドバーグは、アフリカ系アメリカ人女性として二人目の助演女優賞受賞で、大いに話題になった。1992年の『天使にラブ・ソングを…』のヒットで世界に顔が知られるようになる。
エミー賞、グラミー賞、オスカー(アカデミー賞)、トニー賞の4つの賞をすべて受賞した人物(EGOT)でもある。

ウーピー・ゴールドバーグ(Whoopi Goldberg)
他に助演女優賞にノミネートされた方は以下の通り。
アネット・ベニング(グリフターズ/詐欺師たち)
ロレイン・ブラッコ(グッドフェローズ)
ダイアン・ラッド(ワイルド・アット・ハート)
メアリー・マクドネル(ダンス・ウィズ・ウルブズ)