「春よ、来い」の放送時期
「春よ、来い」が放送されたのは1994年10月から1995年までの1年間です。前作は「ぴあの」、次作は「走らんか!」でした。
連続テレビ小説は1961年に誕生し、1974年までは1年間の放送でした。その後、基本的には半年放送でしたが時々1年間の作品もあったのです。1983年の「おしん」、1991年の「君の名は」に続いて「春よ、来い」が3作目ですね。2020年現在、1年放送された最後の朝ドラです。10月はじまりで1年間だったのはこの作品だけなんですよ。
NHK放送開始70周年の記念ドラマでもありました。にもかかわらず、DVDは完全版、総集編ともに発売されておらず、再放送もされていません。その理由として大きいのは、ヒロインが途中降板しているからなんです。
「春よ、来い」のストーリー
「春よ、来い」は原作者であり脚本担当でもある橋田壽賀子さんの自伝的ドラマです。
ヒロインの高倉春希は、高校卒業後女子大へ進学を希望していたのですが母親に反対されてしまいます。母は、ゆっくり花嫁修業をさせたいと考えていたのです。ですが父親の後押しもあり上京します。東京で女子寮に入るのですが、戦争が勃発し、女子大は閉鎖されてしまいます。
終戦後に言語学者になるため、再び大学に入学。そこで演劇に出会い、芸術科に転学します。そして脚本家として生きようと決意したところ、両親が立て続けに亡くなる、恋人と別れるなどの不幸が重なり自暴自棄になって自殺未遂をはかります。一命をとりとめ、その後は仲間の支えなどで自立していきます。そして結婚。脚本家として順調に生活を送っていた頃、夫が癌であることを知ります。夫を見送るまでを描いた物語です。
ヒロインがまさかの途中降板!
「春よ、来い」のヒロインは安田成美さんでした。当時、朝ドラは新人女優が努めることが多かったのですが、安田成美さんは1982年デビューですからデビューからすでに12年経っていました。主演作品もあり、人気女優だったんですよね。
今でこそ、人気女優が朝ドラ主演というのも珍しくはないですが当時は本当に珍しかったんですよ。「春よ、来い」は脚本で原作者である橋田壽賀子さんの自伝的小説を元に作られた作品。名前はすべて偽名なのですがヒロインは橋田壽賀子さん役ということになります。
橋田壽賀子さんが「若い頃の自分に似ているから」という理由で安田さんを指名したのだとか。実際の橋田さんの若い頃の写真は見たことがないですが、脚本家の使命だったから有名女優がヒロインだったんですね。
元々は安田さんがメイクをして老年期まで演じる予定でした。第一話は老齢メイクをして出演しているのですが(そこから改装する形でドラマが始まります)1995年2月に突如ヒロインを降板しています。1年作品ですから、半分も出演していないんですね。
理由は「肉体的精神的な疲労による体調不良」とのことでした。この件で会見を開いた橋田さんは「飼い犬に手を嚙まれた気分」とコメントしています。普通のドラマの主演が降板してもショックですが、自分役に、と選んだ女優さんが降板したのですからショックが大きかったでしょうね。
その後2019年の日本経済新聞の記事で「降板した理由をよく知らない」と橋田さんが語っているので、本当に突然のことだったのでしょうね。
「台本の仕上がりが遅く長ゼリフのため負担を感じていた」「戦時下の描き方に不満を抱いていた」など諸説ありますが実際のことは分かっていません。
安田成美さんはその後ドラマ本数を減らし2年に1作品ほどになっていましたが、2010年以降はまた多くのドラマに出演するようになりました。1994年に木梨憲武さんと結婚され、子育てもひと段落下からという理由もあるかもしれませんが、ヒロイン鋼板はイメージが悪かったでしょうね。
ちなみに、2010年の朝ドラ「てっぱん」ではヒロインの義母役を演じています。また朝ドラに出演するというのもすごいですね。
代役は中田喜子さん
結局、安田成美さんは太平洋戦争のシーンまで演じ、その後33歳からは中田喜子さんが演じています。安田さんは脚本家として生きていこうと決意した辺りまでですね。
安田さんが演じた部分を第一部、中田さんが演じた部分を第二部としていますよ。
中田さんは「渡る世間は鬼ばかり」など橋田作品の常連の女優さんです。今度は本当に信頼できる女優さんを選んだんでしょうね。
この交代劇があったためか、この作品はソフト化されていないんです。1年間の大作ですし、もう一度観たい人も多いと思いますが、ヒロインが途中で(しかも不自然な年齢で)交代するというのは違和感がありますからね。
主題歌は松任谷由実さん

朝ドラ「春よ、来い」の主題歌は、松任谷由実さんの「春よ、来い」です。音楽の教科書に載るほどの名曲ですので、この曲は知っているけれど朝ドラの主題歌というのは知らなかったという人も多いでしょう。
ドラマを見ていた人にとってはこの曲を聴くとドラマを思い出しますよね。いつかまたどこかで見られる日が来たらいいですよね。