菊の舞台でも福が来た!刹那の輝きを見せた馬  マチカネフクキタル

菊の舞台でも福が来た!刹那の輝きを見せた馬 マチカネフクキタル

 同期のマチカネワラウカドとペアで名前を付けられたマチカネフクキタル。遊び心から付けられた言葉が4歳(今の3歳)の秋に一気に現実となった。馬主にとっても馬にとっても待ちかねた戴冠。しかしその活躍は、刹那的なものでもあった。


マチカネフクキタル

名前の由来

「マチカネ」の馬主はホソカワミクロン社長 細川益男さん

 競走馬には、馬主が自分の所有馬であることを目立たせることに加え、ほかの馬と馬名が重複し競走馬としての登録が行えないことを防ぐなどといった目的で、冠名という特定の言葉が付けられることが多い。「テイエム」「シルク」「アドマイヤ」であったり、最近では「サトノ」などが有名だろう。
 マチカネフクキタルの「マチカネ」も冠名だが、これは馬主である故細川益男さんの経歴に由来する。細川益男さんは、粉体処理技術の分野を牽引してきた業界の功績者で、その分野の世界最大手の会社ホソカワミクロンの社長であったが、細川さんは旧制浪速高等学校を卒業しており、この学校が豊中市の「待兼山」にあったことから、「マチカネ」の冠名を使うようになったものである。(ちなみに同校は現在の大阪大学の前身。)

ワラウカドにはフクキタル

 細川さんの「マチカネ」軍団は、「マチカネタンホイザ」「マチカネキンノホシ」など、ユニークなネーミングが多い。マチカネフクキタルも、同期に「マチカネワラウカド」がおり、ペアにすれば「笑う門には福来たる」となるよう、遊び心も込めてつけられたネーミングであったと思われる。(なお、マチカネワラウカドも、ダートで重賞を勝つなどした活躍馬となった。)

力不足の春。夏を越し、待ち兼ねた福は秋に一気に来た

同世代との力の差を感じたダービー

 デビューは1996年11月の阪神の新馬戦。相手が後のG1馬キョウエイマーチという強敵だったこともあり、3着に終わる。その後、初勝利は3月までかかった。
しかし、500万下条件のムーニーバレーRC賞を勝ち上がって芝適性を見せたことで、陣営は日本ダービートライアルのプリンシパルステークスに挑戦。ここでも2着に入り、夢の舞台、日本ダービーの出走を果たした。
 日本ダービーでは、前目に付け、直線一瞬見せ場はあったが脚は続かず、逃げきるサニーブライアンから0.5秒差の7着に沈んだ。同世代のトップクラスとの力の差があることを見せつけられた一戦で春を終えた。

トライアル連勝!勢いは血統の壁を破り菊花賞も制覇!

 秋の初戦は菊花賞トライアル神戸新聞杯。レースは大器サイレンススズカが逃げ、後続を突き放す。一方、直線を向いてマチカネフクキタルは最後方におり、サイレンススズカとの差は10馬身と、ほぼ絶望的な状況。しかし、前があくと、そこから一頭だけゴムまりのような弾け方でどんどん差を詰めていく。最後はサイレンススズカをかわし、衝撃的な末脚で1着を確保した。
 次戦の京都新聞杯も、同じような直線だけの弾け方でトライアル連勝を果たす。春から秋にかけて一気に成長する夏の上がり馬はいるが、この2戦は、マチカネフクキタルという馬が、まさに春の彼とは明らかに違う馬になったことを示すものだった。
 迎えた本番、菊花賞。断然の人気かと思われたが、ファンは彼を3番人気の評価にとどめた。2戦のトライアルで負かしたシルクジャスティス、メジロブライトの方が上位人気だったのは、彼らの春の実績を評価したというよりも、この3000メートルの長距離戦が、マチカネフクキタルには血統的にもたないのではないかというその不安があまりにも大きかったからである。父クリスタルグリッターズ、母父トウショウボーイという血統。血統の世界を少しでも知っているファンからすれば、このレースが彼に適したレースではないと判断するのは簡単だった。
 そうして菊の舞台がスタートする。マチカネフクキタルはポンと好スタート。しかし鞍上の南井は内でじっと構える。京都の淀の2回目の登り坂から下り坂に差し掛かる。多くの馬が最後のタイトルを狙って動き始める。しかし南井はまだじっとしている。外からメジロブライトが一気に上がり、直線へ。マチカネフクキタルは馬群の中。やはり距離がダメなのか。そんな思いも束の間、一頭だけ違う勢いで抜け出てきた馬がいた。マチカネフクキタルだ。「またまた福がきたぁ!神戸、京都に続いて、菊の舞台にも福がきたぁ!マチカネフクキタルです!」と杉本アナの声が響いた。
馬にとっても馬主の細川さんにとっても初のG1制覇だった。

競走馬の輝きは刹那的なもの

 しかし、マチカネフクキタルの輝きは長く続かなかった。古馬になってから裂蹄など蹄の病気に悩まされ、順調にレースが使えなくなり、勝てなくなった。京都記念や大阪杯で2着に来たのが精いっぱい。直線を向いてすぐに前を捉えられるいいポジションにいながら、体の使い方が硬く、じりじりとしか伸びない。もはやあの秋に見た弾け飛ぶマチカネフクキタルの姿はなかった。
 どんなアスリートにもピークがあるが、競走馬の輝きはもっと刹那的であることを強く感じた一頭である。しかし、それゆえに、そんな一瞬を精いっぱいに走る競走馬たちをファンは愛し、その一瞬の輝きをいつまでも忘れないのだろうと思う。

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