中村俊輔のサッカーノート Fantasista 破壊的なまでに超攻撃的サッカーは相手を完膚なきまでにたたきのめし、みる者を魅了する

中村俊輔のサッカーノート Fantasista 破壊的なまでに超攻撃的サッカーは相手を完膚なきまでにたたきのめし、みる者を魅了する

Fantasista(ファンタジスタ)とは、サッカーの国、イタリアで生まれた言葉で、ファンタジア(創造、想像力)を持つ選手、思いもつかないプレーで一瞬にしてチャンスをつくりだす特別な選手を指す。


必殺フリーキック

中村俊輔のフリーキックは世界的に評価が高い。
海外メディアが選出するランキングにも度々選出されている。
ゲームにおいても能力値は高く設定され、15,000人以上の選手が実名で登場する「FIFA 17」ではフリーキック能力値は9位となっている。
そのフォームは独特で、体を傾け全身のバネを使って大きなパワーを生み出す。
通常、フリーキックで蹴るカーブキックは90km/hくらいだが、中村俊輔は99.7~101km/hと世界有数の高速。
回転速度は毎秒7.5回転。
25m飛ぶ間に横に3m以上曲がり、ボールの回転軸が斜めなのでゴール付近で魔法がかかったように急激に落ちる。
ボールが無回転で揺れる「ブレ球」のシュートを打つこともあるが、それはボールの中心を足を押し出すように(並進運動)1/100秒間に強く(72km/h以上で)蹴っている。
「無回転を狙うときは、足で押すようなイメージ」
(中村俊輔)

神パス、スペースを瞬時に把握する深視力

中村俊輔はまるで人と違うところをみているようなパスを出してみんなをアッといわせる。
ピッチで入り乱れる選手の位置を瞬時に把握し的確なプレーを行うには
「スポーツビジョン(スポーツに必要な視力)」
「視野の広さ」、
そしてわずかなスペースを見つける「深視力」が必要といわれている。
深視力は、選手の位置関係を立体的に認識する能力で、日本代表やJリーグのトップ選手とそれ以外の選手は「スポーツビジョン」と「視野の広さ」はそれほどでもないが「深視力」に大きな差があるという。
また
「糸を引くようなパスを次々通す人は、位置関係を俯瞰できる能力に長けている」
といわれ、中村俊輔は深視力が優れているといわれている。

自分好きのシュンくん

中村俊輔は1978年6月24日に横浜で生まれた。
7つ違いの「アンちゃん」
4つ違いの「ヨシくん」
1つ違いの「ターちゃん」
と3人の兄がいた。
「和博」「喜雅」「貴之」は父:博之がつけたが、4男は
「俊輔がいいわ」
と母:イリ子がつけた。
中村俊輔には3歳のときからの記憶があり、マーチングバンドで指揮者となって右手で棒を持って歩いたり、補助輪なしで自転車に乗れるようになり、家の近くの坂道をスピードを出して下るが面白くて仕方なく、ある日、急ブレーキをかけると体が宙に舞って顔から地面に落ちて、痛いのを我慢して帰ったが、鏡で目の上が真っ青に腫れているのをみてこわくなって泣いたことを記憶していた。
そして何気なくボールを蹴ったのは左足だった。
「手は右。
字を書くのも箸を持つのも右。
だけど足は左だった。
3歳のときからそれはわかっていた」
中村俊輔は、アルバムをみるのも好きで、4歳のときに3歳の自分の写真をみていたことも覚えている。
自分が写っているものが好きなのは今でも変わらず自分の映ったビデオをみるのが大好きである。

サッカー人生の始まり 深園(みその)サッカークラブ

4歳のときに1つ上のターちゃんと一緒に深園(みその)幼稚園に通い始めた。
幼稚園には体操クラブがあり、そこに若林可夫先生がいた。
年長組のターちゃんと一緒にツバメ組の中村俊輔も体操を習っていたが、そのうち幼稚園でサッカーチームをつくって大会に出ることになった。
チームメンバーは年長組だけで、ターちゃんは初代キャプテンに選ばれた。
練習は週3回。
時間は90分。
厳しい練習が実り、ターちゃんたちのチームは、約30チームが参加した関東幼少年サッカー大会で優勝した。
深園サッカークラブには年長組しか入れなかったが中村俊輔はいつもターちゃんたちがボールを蹴っている横で練習をみていた。
そしてボールをさわるのが大好きになっていき、幼稚園でみんながお絵かきや折り紙をしていても先生のスキをついてサッカーボールを持ってきた。
若林可夫は中村家に電話をかけた。
「もしよろしければお兄さんと一緒にサッカーをやってもいいですよ」
イリ子から話を聞いた中村俊輔は
「やったぁー」
と大喜びし次の日から正式に深園サッカークラブに入った。
それからは風邪をひいて熱があっても練習は絶対に休まなかった。

熱血の系譜

若林可夫は古沼貞雄にサッカーを学んだ。
古沼貞雄は高校サッカー界で名を知らぬ者はいないといわれるほどの名監督。
1974年の初優勝を含めて、全国大会で6度優勝、3度の準優勝。
高校総体でも優勝3度、準優勝4度。
帝京高校サッカー部で一時代を築いた。
朝早く起きて指導に当たり練習場に声を響かせた。
大雨が降ってもびしょぬれになるのを気にも留めずにグラウンドで指示を続けた。
「我々が傘をさしたり屋根の下にいたりなんか、できないですよ」
よく部員に
「サッカーって点取りゲームか点取らせないゲームか、どっちだと思う?」
と問いかけ自身の考えとして
「割合でいえば少なくとも6割は守りのゲームです」
「失点ゼロなら絶対に負けないんですよ」
「ワールドカップで優勝や準優勝、3位のチームをみてみろ。
スターはたしかにいる。
大事なのは1次リーグ、決勝トーナメントでも失点がとにかく少ない」
といった。
堅い守りをベースにした古沼スタイルで1977年の2度目の全国大会優勝は無失点で果たした。
守りの基本は
「技術を使わせないこと」
ゴールに近い場所では基本的にトラップやパスをさせない。
ペナルティーエリア内は必ずワンタッチでクリアする、相手にゴール付近でプレーさせないことを徹底した。
部員は
「失点しないためなら骨が折れてでも体を張ってゴールを隠す」
と誓った。

元来、古沼貞雄は陸上部出身。
箱根駅伝出場を夢みて東洋大学に入学したがケガで断念。
日本大学に再入学し卒業後、サッカー素人のまま指導者の道を歩み始めた。
近隣の学校の部活に参加してサッカーを学び、まったくの無名校だった帝京高校は常勝軍団と化していく。
5年後、習志野高校(千葉)をわずか3年半で初優勝させた西堂就監督と酒を酌み交わしたとき、守備の重要性に気づいた。
帝京はすでに全国大会の常連だったが、なかなか勝ち進めなかった。
「古沼よ。
お前は江戸っ子だからな。
酔った先のことは考えないだろ」
古沼貞雄は意味を理解できなかった。
「サッカーは攻撃もあれば守備もあるんだ。
守ることも考えたら帝京はもっと強くなるんじゃねえかなあ」
古沼貞雄はハッとなった。
帝京は攻撃重視、個人技優先、ある意味、自由奔放なサッカーだった。
「気持ちのいい攻撃の他にあるところに目を向けてみろ」
古沼貞雄は守備を重視した戦術に転換。
クリアなどの決まり事を徹底。
「(ボールを)取ろう、取ろうは取られのもと」
という標語をつくりカバリングの重要性も説いた。
そして守りに欠かせない体力は陸上部の経験を生かし鍛え上げた。
練習試合に負ければ、長距離ランナーだった自身が先頭に立って1時間のランニング。
技術は教えられなくても体を張る強さは伝えられた。
そして就任から9年、帝京高校は「堅守速攻」で日本一まで駆け上がった。

「サボってるヤツに着させるユニフォームはない」
「最後まで8番を追いかけろ」
「お前、帰れ」
若林可夫はスパルタで、いつも大声で怒鳴っていた。
「暗くなっても練習したい」
というリクエストが出ると自腹でグラウンドに照明をつけた。
心理学では「感情は伝染する」、またスポーツでは「熱(意)は伝染する」というが、若林可夫の気持ちは中村俊輔にも伝わり
「やってやるぞ」
「負けたくない」
「うまくなりたい」
という気持ちにさせた。
家から練習に行くときはサッカーボールを蹴りながら歩いた。
坂道が多い場所だったので上り坂では壁に当てたり、電信柱に当てたり、ガードレールの間をくぐらせたりしてボールを運び、下り坂では足の裏でコントロールしてボールを転がした。
ターちゃんが小学校に上がり年長組になると中村俊輔がキャプテンになった。
ある日、若林可夫に
「みんな、ボールを蹴ってみろ」
といわれ40人くらいが蹴ると中村俊輔が左足で蹴ったボールが1番遠くまで飛んだ。
「じゃあキッカーはお前」
こうして初めてキッカーに任命され、やがて世界最高レベルのフリーキックを持つまでになる。
中村俊輔たちのチームは、ターちゃんたちに続き2年連続で関東幼少年サッカー大会で優勝した。

サッカー症候群  サッカーが1番大事

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