【小橋建太インタビュー(後編)】元祖・絶対王者「幾多の苦難を乗り越えて」

【小橋建太インタビュー(後編)】元祖・絶対王者「幾多の苦難を乗り越えて」

幾多の怪我、病気を乗り越えて多くのプロレスファンを魅了し続けた「鉄人プロレスラー」小橋建太。波乱万丈なレスラー人生を不屈の精神で歩み続けた小橋さん、その真っ直ぐな生き方に迫ります。


「はい。しかしその復帰戦で僕は左膝前十字靱帯不完全断裂を負ってしまい全治4か月の診断、再び長期欠場に入ることとなります。その間、一部からは“小橋はもう終わったな”といった声も聞こえてきました。それでも必ずチャンスはある、目の前が真っ暗になるときにでもチャンスはあるのだから自分を信じよう。その一心で怪我と向き合おうと。そしてこの年の7月、138日間の欠場を経て再びリングに戻ることが出来ました。」

ミド編)

まさに不屈の精神としか言い表すことが出来ません。この復帰の翌年2003年3月、小橋選手は三沢選手を破ってついにGHCヘビー級王座のチャンピオンに輝き、そこから絶対王者と呼ばれた2年間が始まります。数々の死闘を繰り広げた小橋選手でしたが、対戦したなかでとくに「この選手は強いぞ」と感じた相手はいましたか?

「これは正直、一人には絞れないんです。闘った相手はみんな強かった。ベストバウトはたくさんありすぎて絞れません。ファンの方それぞれが“この試合だ”“この人だ”と思ってくれるのが嬉しいんです。」

ミド編)

有難うございます。もうひとつ、読者の方から質問がありましてこれまでで「一番カッコ良い」と思った選手を挙げるとしたらいかがでしょうか。

「これはいまの僕が思うことですが、笑顔の似合う老人になりたいんです。師匠のジャイアント馬場さんは晩年、素晴らしい笑顔でした。そして最近そう感じるのがスタン・ハンセン。笑顔が素敵で充実しているのが分かるんです。闘っているときはそんなこと思いませんでしたけどね(笑。」

2006年、腎臓がん発覚

ミド編)

名実ともにノアマットの中心へ。とうとう時代を掴んだ小橋選手でしたが2006年には腎臓がんが発覚しました。

「たまたま健康診断で発見してもらうことが出来ましたが、当時はまだ30代でした。がんの手術は無事に成功したのですが手術前日の夜、医者の先生が撲の部屋に来て“小橋さんをプロレスに復帰させるために手術するのではありません、復帰じゃなく生きることを頑張らないと。生きていれば何でも出来る、生きましょう”と言われました。」

ミド編)

医者の立場から、真剣に小橋さんに向き合ってくれたんですね。

「はい、その先生にはいまでも定期的に診察をしていただいています。当時、腎臓がんから復帰を遂げたアスリートはいないと言われましたが、結果として僕は546日後に再びリングに復帰します。」

「残念ながら復帰した後も体は思い通りになりませんでした。手術は成功しても以後の食事は蛋白質が制限されていますから体を大きくすることが出来なくなりましたね。そんななかでも医者の先生には練習方法をどんどん質問したり、体にいいプロテインがあるか質問したり。“そんなのないよ、そんなことより早く引退しなさい”なんて言われましたけどね(苦笑。」

ミド編)

腎臓がんからの復帰はもちろんのこと、術後思うようにならない体と向き合いながらも小橋さんは何度もリングに戻ってきました。

これだけ満身創痍な体なのに、2013年5月に引退するその試合までファンの目の前には常に強くて大きな小橋選手の姿が映っていました。なぜ、ここまで強い気持ちを保つことが出来るのでしょうか。

自分を信じて自分を諦めない

困難に直面したとき、自分を諦めなければそれを越えることが出来る。誰でもみんな、自分自身がやれると信じていれば。その気持ちを常に持ち続けることです。光がみえていないだけでチャンスは必ずあると信じて日々の積み重ねを継続する。物事は一気に好転することなんてありません、もしあったとしてもそれはまた一気に悪くなる。日々少しづつ積み重ねることは大変だけど、その経験が自分を強くします。」

「がんになってからの人生は色んなことがありますが、復帰戦後に日テレのアナウンサーからリング上で“今の気持ちをお聞かせください”とマイクを向けられて、ふと“男は40歳からです”と答えていたんです。そのときの自分が40歳だったからですね(笑。いま聞かれたら“男は50歳からです”と言うでしょうし、女性だったら“女は50歳からですよ”と言うでしょう。ふと出た言葉でしたけど、僕はそれが本質じゃないかと思っているんです。」

「冒頭で“あの頃に戻りたいとは思わない”と話しました。若さは素晴らしいけど、年齢を重ねてからの人生の重みはまた格別です。あの時代に戻りたいという気持ちは一切ありません。でも、あの時代があったからこそ今がある。みんなもそうでしょう。ピンチの中にこそチャンスがあるし、いまが良い状態の人はその状態に奢らずにしっかり足元をみて。みんなが良い状態になれば、日本全体がもっと良くなる。そう思うんです。」

ミド編)

数えきれないほどの困難と向き合って真正面から乗り越えてきた小橋さんの言葉に、読者の皆さんも勇気をもらえると思います。最後に小橋さんのこれからの目標をお聞かせ下さい。

関連する投稿


プロレス界の歴史が動く今こそ読むべき一冊! 『ようこそ、プロレスの世界へ 棚橋弘至のプロレス観戦入門』2025年12月18日(木)発売!

プロレス界の歴史が動く今こそ読むべき一冊! 『ようこそ、プロレスの世界へ 棚橋弘至のプロレス観戦入門』2025年12月18日(木)発売!

新日本プロレスの“100年に一人の逸材”棚橋弘至氏による著書『ようこそ、プロレスの世界へ 棚橋弘至のプロレス観戦入門』が2025年12月18日にKADOKAWAより発売されます。引退が迫る棚橋氏が、26年の現役生活で培った視点から、プロレスの魅力、技の奥義、名勝負の裏側を徹底解説。ビギナーの素朴な疑問にも明快に答え、プロレス観戦をさらに面白くする「令和の観戦バイブル」です。


プロレス四天王・小橋建太&田上明、博多大吉と豪華共演!トークイベント「Talkin' Dream」開催決定!

プロレス四天王・小橋建太&田上明、博多大吉と豪華共演!トークイベント「Talkin' Dream」開催決定!

プロレス界の黄金期を築いた「全日本プロレス四天王」の小橋建太氏、田上明氏と、"プロレス博士"として知られる博多大吉さんが集結するトークイベント「Talkin' Dream」が、2025年11月16日にLOFT9 Shibuyaで開催されます。夢の豪華スリーショットが実現!貴重な裏話や思い出話が聞けるチャンスです。


猪木の伝説的な試合の数々を純金で再現!『燃える闘魂アントニオ猪木 純金カードコレクション』が発売決定!!

猪木の伝説的な試合の数々を純金で再現!『燃える闘魂アントニオ猪木 純金カードコレクション』が発売決定!!

ニッポン放送プロジェクトより、プロレスラー・アントニオ猪木の伝説的な試合の数々をK24(純金)で再現したコレクターズアイテム「アントニオ猪木 純金カードコレクション」が発売されることが発表されました。


【訃報】「イチバァーン!」プロレスラーのハルク・ホーガンさん死去。アントニオ猪木、アンドレ・ザ・ジャイアントらと対決

【訃報】「イチバァーン!」プロレスラーのハルク・ホーガンさん死去。アントニオ猪木、アンドレ・ザ・ジャイアントらと対決

プロレス界のレジェンドとして知られるプロレスラー、ハルク・ホーガンさん(本名:テリー・ユージーン・ボレア)が24日、アメリカ・フロリダ州クリアウォーターの自宅で亡くなっていたことが明らかとなりました。71歳でした。


ワイルドハートなジムが川崎市多摩区にオープンしたぜ!!オーナーはもちろん、WILDHEART大森隆男選手!!

ワイルドハートなジムが川崎市多摩区にオープンしたぜ!!オーナーはもちろん、WILDHEART大森隆男選手!!

全日本プロレスをはじめ、プロレスの全盛期で活躍されたプロレスラーの大森隆男さんが川崎市多摩区に24時間のトレーニングジムをオープンしたので、ジム開設のきっかけやジムに向けた想いなどをインタビューしてきました!!


最新の投稿


ビックリマンAI名刺メーカー爆誕!あなたの顔が「スーパーゼウス」風に?40周年記念企画

ビックリマンAI名刺メーカー爆誕!あなたの顔が「スーパーゼウス」風に?40周年記念企画

ビックリマン「悪魔VS天使シリーズ」40周年を記念し、アル株式会社とロッテが共同で「ビックリマンAI名刺メーカー」を2025年12月16日から40日間限定で提供します。ユーザーが自身の顔写真をアップロードすると、生成AIがビックリマン風のキャラクター画像に変換。公式キャラと融合した名刺デザインを作成・購入でき、ファンが物語の登場人物になる体験を提供します。


タブレット純が語り尽くす!伝説の「エレックレコード」秘話&秘蔵映像を映画館で

タブレット純が語り尽くす!伝説の「エレックレコード」秘話&秘蔵映像を映画館で

神奈川県民ホールは、音楽イベント「KANAGAWA ロックサーキット」の第3弾として「タブレット純 フォークを語る~伝説のレーベル『エレックレコード』トーク&上映会~」を2026年1月23日にイオンシネマ座間にて開催します。昭和歌謡の伝道者・タブレット純氏とMUSIC LIFE CLUBの井口吾郎氏が、吉田拓郎、海援隊などを輩出したエレックレコードの知られざるアートと音楽カルチャーの軌跡を解き明かします。


懐かしのブリキ缶が大集合!「昭和の缶に、恋してる」レトロ缶企画展開催

懐かしのブリキ缶が大集合!「昭和の缶に、恋してる」レトロ缶企画展開催

東洋製罐グループが運営する容器文化ミュージアムは、企画展「昭和の缶に、恋してる レトロブリキ缶コレクション」を2025年12月15日から2026年2月20日まで開催します。昭和100年を記念し、お菓子や贈答品などに使われた貴重なブリキ缶を展示。缶の構造やデザイン、当時のエピソードも交え、昭和の生活文化とブリキ缶の魅力を再発見できる展示内容です。


「パックマン」「ゼビウス」などナムコット名作がブランケットに!ファミコン外箱を再現した「クラシックゲームブランケット」登場

「パックマン」「ゼビウス」などナムコット名作がブランケットに!ファミコン外箱を再現した「クラシックゲームブランケット」登場

株式会社KADOKAWA Game Linkageは、ナムコットブランドのファミコンソフト『パックマン』、『ゼビウス』、『ドルアーガの塔』の外箱をモチーフにした「クラシックゲームブランケット」3タイトルを2026年2月16日に発売します。両面印刷で外箱の表裏デザインを忠実に再現し、A5サイズ16ページの冊子も同梱。現在、予約受付中です。


病院も映画館も煙モクモク!?自由すぎる昭和の常識を徹底図解

病院も映画館も煙モクモク!?自由すぎる昭和の常識を徹底図解

日本文芸社は、「昭和100年」の節目に、書籍『眠れなくなるほど面白い 図解 昭和の話』を11月27日に発売しました。庶民文化研究家・町田忍氏監修のもと、「病院でもタバコOK」「消費税なし」「過激すぎるTV」など、令和の感覚ではありえない“自由すぎた昭和の本当の姿”を、図解と豊富な資料写真で紹介。世代を超えたコミュニケーションツールとしても楽しめる一冊です。