「ブキミが気持ちいい!」

1985年7月に、その異様なゲームはゲームセンターに登場しました。キャッチフレーズは「ブキミが気持ちいい!」。まさしくその言葉通りに、ブキミなデザインのゲームでした。
主人公も敵も、全体的にサイズは大きめ。そして人間である主人公は普通の宇宙服姿でしたが、とにかく宇宙生物である敵のデザインがブキミなのです。そして負けないくらい、背景だってブキミでした。
この異様なグラフィックスを持ったゲームこそ、『バラデューク』なのです。
ストーリー
平和で友好的な星、パケット星が何者かに襲われた。パケット族の人たちは全て囚われてしまった。
調査に赴いたキミは、美しいパケット星の地下に邪悪なオクティ族の要塞が築かれていることを知る。
パケットを救えるのはキミしかいない! 波動銃とシールドで武装してオクティ族を殲滅しろ!!
1985年のナムコ作品は?
『バラデューク』を制作したのはナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)でした。
当時のナムコといえば、そのゲームの革新性も素晴らしかったと思うのですが、原色が多めのくっきりしたグラフィックスと、その一度聴いたら忘れられない明るいBGMが印象的だったと思うのです。
そんなナムコの歴史の中から年に1本づつ選んだとしても、1980年には『パックマン』、1981年には『ニューラリーX』、1982年には『ディグダグ』、1983年には『ゼビウス』、1984年には『ドルアーガの塔』と、ミドルエッジ世代でゲームが好きな方でしたら、どれも思い出に強く残っている作品なのではないでしょうか。
そして『バラデューク』は1985年に発売されるのですが、同じ年にはナムコからは、このような作品たちが発売されています。
『ドラゴンバスター』
主人公であるクロービスを操作して、いくつものダンジョンを通過しながらドラゴン山を目指し、ドラゴンを倒してセリア姫を助けるというアクションゲーム。
ナムコからリリースされたドラゴンバスター、ファミコン版は金色のカセットでした。「兜割り」「垂直斬り」などの必殺技も懐かしい! - Middle Edge(ミドルエッジ)
『ディグダグII』
前作が穴を掘ったのに対し、今度は島を崩して敵を海に落とすというアクションゲーム。
『メトロクロス』
障害物を乗り越え、ゴール目指して走るというゲーム。
傷だらけのランナーの孤独な戦い、ゴールを目指してひたすら走る「メトロクロス」 - Middle Edge(ミドルエッジ)
この年には他に『スカイキッド』と『モトス』が発売されています。
3作ほど紹介させていただきましたが、どれもグラフィックスが派手で、BGMが印象的だったと記憶しています。
それに対して『バラデューク』は…。
『バラデューク』
明らかに他のナムコ作品と比べて、デザインが違うことがおわかりいただけたでしょうか。
操作とゲーム展開

8方向レバーで主人公「ファイター」を操作し、ボタンで波動銃ボタンを発射することができる。
最初はシールドが2枚あって、ダメージを受けると1枚づつ減る。すべてなくなるとミスとなり主人公を1機失う。
フロア上には青いオクティがいて、それを全滅させるとゲートが開く。その中に入るとフロアをクリア。複数のゲートがある場合もあり、選択によって攻略法が変わってくる。フロアは6つで、最後のフロアには巨大なボスがいる。それを倒すとステージクリア。全部で8ステージ。
青いオクティを倒すとカプセルが出現する。中には点数になる「ジュエル」、攻撃力をUPさせる「パワー波動銃」、敵「バガン」、味方「パケット」が入っているが、何も無い場合もある。
『バラデューク』のここが凄い!
喋る
ゲーム開始時に、合成音声でパケットが「I'm your Friend!」と喋りました。
銃に反動がある
主人公「ファイター」は波動砲を持っているのですが、これを撃つと慣性の法則が働くらしく、後ろに下がってしまいます。
弾が大きい
避けるのも大変です。
特殊なシールドシステム

味方であるパケットを取ってフロアをクリアすると、ルーレットを行うことになります。
パケットを取った分だけパケットのマスが増えて、それに止まるとシールドが増えます。
ところが! すでにシールドが3枚以上ある場合、敵であるオクティのマスが登場します。これに止まると、逆にシールドが減ってしまうのです。それどころかシールドの枚数によっては、シールドが増減しないマスと、減るオクティのマスしか登場しません。
徐々に落下する
要塞には重力があるらしく、操作しないとゆっくりとですが落下して行きます。
正面からじゃないとダメージを与えられないオクティがいる。
このため、極めて難易度が高いです。
無敵状態がない
今のシューティングゲームは、ダメージを受けた直後は一定時間無敵になることが多いです。その間に逃げたり敵を一掃してピンチを切り抜けるのですね。演出としては、わかりやすく自機が点滅していることが多いです。
ところが『バラデューク』にはそれがないのです。そのため連続してシールドを失うことがあり、あっという間にミスになって1機失うことが多々あります。
透明なオクティがいる
難易度が高すぎます。
ぐずぐずしていると、とんでもなく強い敵(ブルー・スパーク)が出る。
2発当てないと倒せない上に、かなり高速です。しかも動きが変則的でした。
パケットが特攻する

パケットを持った状態でボス戦に突入すると、パケットが一匹ずつボスに特攻してくれます。そして命と引き換えに、ボスの動きを一瞬だけ止めてくれるのでした。
全パケットが特攻する前にボスを倒せば、すべてを失わなくてすむのですが…可愛そう。
パケットを殺せる
そんなパケットたちですが、主人公が銃で撃つことによって殺すこともできます。パケットはカプセルから出てくるのですが、バガンという敵が出てくる可能性もあるので、うっかり撃ち殺してしまうことも少なくないです。
ちなみにパケットは10匹殺すと1万点、20匹殺すと2万点が得られる隠しキャラクターが出るそうです。そのため、わざと殺す人も。ひどい。
やっとやっと家庭で『バラデューク』!
『バラデューク』は当時、人気も確かにあったゲームなのですが、ナムコらしくないカラーであるためか、またファミコンに移植されなかったからなのか、現在ではあまり話題にのぼらないゲームです。
当時でも、難易度が高い上に、運の要素がかなり大きいということもあり、プレイヤーを選ぶ作品でもありました。パターンが同一ではないため、やり込んでもやり込んでも、クリアできるようになるのが難しいのです。そこが逆に魅力だったのかも知れませんが。
そんなハードなマニア向けの本作は、1997年『ナムコミュージアムVOL.5』がプレイステーションで発売されて、やっと家庭でプレイできるようになりました! 発売されてからじつに12年後ですね。
当時のナムコのタイトルだけでなく、ゲームセンター全体の中でも異彩を放っていたブキミな『バラデューク』。12年後に遊べるようになるということは、やはりマニアには人気があったと言えるのではないでしょうか。
ちなみに続編として、1988年に『爆突機銃艇』が発売されたのですが、こちらは評価が低く、知名度もより低いゲームとなっています。

最後になりましたが、すべてクリアすると主人公「ファイター」が女性だったとわかるんです!