「岸辺のアルバム」の衝撃な内容
主人公は1970年代後半にはどこの地域にでもいた普通の良妻賢母の妻(八千草薫)。彼女の夫(杉浦直樹)は有名私立大学出身の商社マン。長女(中田喜子)は頭のいい大学生。長男(国広富之)は受験を控えた高校生。
東京郊外に家を持ち、どこにでもいそうな一見幸せそうに見える家庭ですが、内情は夫の務める会社が倒産寸前で毎日泥酔状態で帰宅します。夫婦の会話もなく、妻はふとしたきっかけで不倫を始め、娘は交際していた男性の友人からレイプを受け妊娠してしまいます。長男は母の不倫現場を偶然見てしまい・・・。
1977年(昭和52年)に放送された時はかなりの衝撃あるドラマでした。
女性は良妻賢母は当たり前で、不倫なんて考えつかないという昭和の女性像の常識を破るドラマでした。
「岸辺のアルバム」のオープニング映像と曲
「岸辺のアルバム」というタイトルのイメージから掛け離れた、オープニング映像です。
実際の水害被害で家が流される報道映像というショッキングな映像がオープニングからアメリカのシンガーソングライター、ジャニス・イアンの気だるく甘い歌声の「will you dance?」に乗って流れます。
このオープニングも衝撃を受けた方は多かったのではないでしょうか?
これまでのアットホームなホームドラマだと思っていたのに、水害被害の映像からのオープニング。被害があって、その後,家族が力を合わせてマイホーム再建していく話かと思った方もいらっしゃったのではないでしょうか?
でも、最終回を観て、ああそういうことかと納得するオープニングの映像でもありました。
主役は八千草薫
主人公の則子は八千草薫さんが演じています。彼女のイメージは上品で優しい正に良妻賢母にぴったりです。昭和の綺麗なお母さん像です。
こんな上品な主婦でも不倫をするのかと衝撃を受けた世のお父さんたちも多かったのではないでしょうか?
不倫相手役はあの当時女性に大人気の竹脇無我
則子の不倫相手は竹脇無我氏が演じています。八千草さんもそうですが、竹脇氏も不倫役より素敵な旦那様のイメージがあったので、当時、驚かれた女性は多かったのではないでしょうか?
竹脇氏の声も女性が好むトーンで素敵です。最初、電話の声だけの登場なので、それも惹きつけられる要素です。その声がよくて則子も一度は会ってもいいかなと思ったのかもしれません。
会ったら声から想像していた人物より更によく、やはり電話と同じで上品で教養のある話で益々のめり込んでしまったということでしょうか?
夫役は杉浦直樹

父の詫び状 杉浦直樹
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則子の夫役は杉浦直樹氏です。有名私立大卒の商社マンのイメージにピッタリです。どちらかと言えば、則子の方が夫の不倫で悩んでいそうな感じの旦那様です。わからないものです。奥様に不倫されるとは・・・。
杉浦氏は向田邦子作品の「父の詫び状」や「あ・うん」で評価が高まり、数多く、映画やテレビに出演されています。
長女役は中田喜子
長女役は当時、24歳だった中田喜子さんです。今もあちらこちらに出演されて、当時も今も美しい女優さんです。少し両親と距離がある秀才女子大生役が似合っていました。
色々なことに遭遇し、難しい役どころではありましたが、見事な演技力でした。
長男役は国広富之
長男役をまだ新人だった国広富之氏が演じています。3つ違いのお姉さん役の中田喜子さんとは実際は同い歳でした。
この「岸辺のアルバム」で脚光を浴び、新人賞にも輝き、八重歯が可愛いと女性に人気でした。その後は民放にもNHKの大河ドラマにも引っ張りだこでした。
先生役には津川雅彦
津川雅彦氏は、今回は、長男の先生役で何だか意外でしたが、調べてみると、最初は則子の不倫相手は津川氏だったそうです。竹脇氏が本当は先生役だったそうです。
それはそれでしっくりですが、それでは面白くないので、このままの配役でOKでしたね。
ハンバーガーショップの店員は風吹ジュン
風吹ジュンさんはモスバーガーの店員さんの役で、国広富之氏が演じる長男を何かと誘惑します。
今も可愛い女優さんですが、この頃はキュートでお色気もあり、小悪魔的な魅力がありました。今はお母さん役が多いですが、まだまだ男性を魅了する役柄も観たいファンも多いのではないでしょうか?
脚本は山田太一氏
「岸辺のアルバム」の原作、脚本は山田太一氏が手掛けています。
1970年代にはシナリオライター御三家の一人でした(倉本聰・向田邦子・山田太一)。
NHK大河の「獅子の時代」やTBSの「ふぞろいの林檎たち」シリーズの脚本も手掛けています。
忘れられないドラマ【ふぞろいの林檎たち】 - Middle Edge(ミドルエッジ)
「ふぞろいの林檎たち」のオープニング曲はサザンの「いとしのエリー」
1983年の放送、「ふぞろいの林檎たち」は当時はとても有名なドラマでした。4流大学出身の3人の青年が恋愛や進路に対して一生懸命になる姿を描いた青春ドラマです。
その時のオープニング曲はサザンオールスターズの「いとしのエリー」でした。
ホームドラマはアットホームなドラマだけではない!
「岸辺のアルバム」が放送されてから、ホームドラマはアットホームなドラマだけではないと禁断を打ち破る画期的なドラマでした。
禁断を打ち破ることで、「夫婦とは」「親子とは」「家族とは」をもう一度、深く考えるきっかけになったドラマでした。
「岸辺のアルバム」での俳優さんたちもとてもいい演技で心に残る一作でした。