昭和レトロ研究家・初見健一が「昭和こどもゴールデン映画劇場」を刊行!
人気の昭和エッセイ『まだある。』シリーズの著者で、昭和レトロ研究家の初見健一による「あのころの映画」に関するエッセイ風シネマガイド『昭和こどもゴールデン映画劇場』が、大空出版より現在好評発売中です。

昭和を彩った、ミドルエッジ世代感涙の作品の数々を紹介!
本書では、昭和をにぎわせ今なお語り継がれる『燃えよドラゴン』『E.T.』といった不朽の名作から、シリーズ継続中の人気映画『スター・ウォーズ』『007』、「残酷ドキュメンタリー」の決定版『世界残酷物語』『グレートハンティング』、オカルト・サスペンス映画の源流を作った『エクソシスト』『サスペリア』、当時オールディーズ・リバイバル現象を巻き起こした『グリース』『アメリカン・グラフィティ』まで、昭和を彩った懐かしの映画の数々を紹介。ミドルエッジ世代の琴線に触れる作品を一挙に振り返ることが出来ます。
本書で紹介している映画を一部ご紹介!
本書では、著者が観た時の年齢を基準に作品を「~小学生時代」「中学生時代」「高校生時代~」の3つに分類。それぞれの作品を、ミドルエッジ世代である著者の当時の視点から振り返ることが出来ます。以下で、そのいくつかをご紹介したいと思います。
『サスペリア』(~小学生時代)
小学校時代に観たという、1977年公開のホラー映画『サスペリア』。「一番好きな映画」の候補に常に含まれるとした上で、「何度観ても支離滅裂で脈絡が無く」「なんなんだよ、このバランスは!」と言わしめるほどの整合性の無さが「世界のぜんぶ」がここにあるかのような充足感を視聴者に与え、それゆえ本当に「完全無欠な映画」であると結論付けています。

『エクソシスト』(~小学生時代)
同じく小学生時代に観たという、1974年公開のホラー映画『エクソシスト』。『サスペリア』同様に「完全無欠な映画」であるものの、その方向性は真逆であり、『サスペリア』が「狂人の仕事」であるとすれば、『エクソシスト』は極めて精巧に組み上げられた理知的な映画であり、「恐怖」を産む冷酷な精密機械であると評しています。

『グリース』(中学生時代)
中学生時代に観たという、1978年公開の学園ミュージカル映画『グリース』。「しょーもない」と思いつつも何回も観てしまう映画で、当時流行していた『サタデー・ナイト・フィーバー』よりもファッションとしての「不良性」をわかりやすく提示していたと指摘。そして、ひたすら明るく馬鹿馬鹿しくもある作風が、「青春」というものの「感じ」に似ていると評しています。

『BLOW THE NIGHT!夜をぶっとばせ』(高校生時代~)
今度は邦画からのご紹介。高校生時代に観たという、1983年公開の映画『BLOW THE NIGHT!夜をぶっとばせ』。監督である曽根中生の作品の面白さは「道端に落ちていたクシャクシャの紙切れを拾って、広げてみたらおもしろいことが書いてあった」という種類のものであるとし、本作については「80年代少女」たちが一様に抱え込んでいたヤバさが、なぜか丸ごと記録されている「記録映画」であると評しています。

昭和のオカルトにも強いライター、初見健一!!
『昭和こどもゴールデン映画劇場』にて、取り上げたそれぞれの映画について鋭い洞察を展開している初見。その一方で、昭和のオカルトを題材とした著書を数多く世に送り出しているライターでもあります。ここでは、そのいくつかをご紹介したいと思います。
『昭和オカルト大百科』
大空出版より刊行された『昭和オカルト大百科』。UFO、UMA、超能力、ノストラダムス、心霊といった、70年代の子ども文化にあふれかえった「オカルト」なアレコレが、いつどこで生まれ、なにをきっかけにブームになり、どうしてスタレたのか?を再検証する内容となっています。「イカレた時代」に育った、すべての元「昭和オカルトキッズ」必見!

『昭和ちびっこ怪奇画報』
青幻舎より刊行された『昭和ちびっこ怪奇画報』。宇宙人、超能力、ネッシー、ミイラ、キングコング、食人種、死後の世界といった、60年代~70年代のオカルトブーム下における当時の児童向け雑誌、書籍に掲載された小松崎茂、石原豪人をはじめとする人気イラスト作家の筆による「怪奇画」約120点を掲載。あのころのドキドキ、ワクワクを当時のビジュアルそのままに再現されています。

『昭和ちびっこ未来画報』
青幻舎より刊行された『昭和ちびっこ未来画報』。50年代~70年代にかけて、さまざまな子ども向けのメディアに掲載された“未来予想図”が収録されています。小松崎茂、石原豪人をはじめとする空想科学イラストの巨匠たちが描いた未来画を暮らし、交通、ロボット、コンピューター、宇宙、終末の六項目に分けて紹介。当時の子どもたちの“わくわく”の源でもあった「未来」。我々が現実の21世紀に暮らす「未来人」となった今だからこそ、本書で取り上げられた“想像遺産”の数々を堪能しましょう!

このように、我々ミドルエッジ世代の知的好奇心をくすぐる著書を多数発表している初見ですが、現在、学研『ムーPLUS』で「昭和こどもオカルト回顧録」というコラムを連載中です。「津の水難事故怪談」や「小坪トンネル怪談」などの心霊ネタや「不幸の手紙」など、多数のコラムを発表していますので、興味のある方は是非チェックしてみましょう!
コラムはこちらで連載中です!
初見健一 アーカイブ | ムー PLUS
ご本人にインタビュー!!

著書『昭和こどもゴールデン映画劇場』の対象年代は、初見さんの小学生から中高生の頃と重なっています。初見さんにとって、昭和後期に上映されていた映画と現代の映画ではどういった違いを感じますか?

80年代以前の映画には、個人が撮りたいものを勝手に撮ったという感じの作品が多かった気がします。今のようにマーケティング的な発想でテーマを決めたりしてないし、集客の見込みが立たないような企画も平気で通ったりしている。だからクオリティもピンからキリまであって、「なんだこりゃ?」と思うような駄作も多いんですけど、とにかくすごく多種多様で種々雑多だった。当時、例えば角川映画の露骨なマーケティング戦略が「商売くさい」と批判されていましたが、今見るとものすごく自由でめちゃめちゃなことをやってる。現在の映画界では、もうあまり無謀な博打はできなくなっていると思います。

同書ではホラーをはじめカンフー、SF、アクションなどの幅広いジャンルの映画が題材にされています。そのなかで“青春映画”を多く選出した事が、ご自身でも意外だったとコメントされています。他にも意外な選出となったジャンルや映画タイトルはありましたか?

レイ・ハリーハウゼンの特撮映画について長々と書いたんですが、あれは自分でも意外でした。僕は特撮マニアでもないし、ハリーハウゼンの映画についてもあまりちゃんと意識して考えたことはなかったんですけど、ああやって子ども時代の記憶をまとめてみると、自分は『スターウォーズ』以前のB級SFやファンタジー映画の独特の匂いが好きだったんだな、とあらためて発見した感じでした。あとはシリーズの「2」が好きらしい、ということ。特に『エクソシスト2』とか『ポセイドン・アドベンチャー2』とか、世界中で駄作として切り捨てられている「2」に妙なシンパシーを感じる癖があるらしい。

初見さんは“オカルトライター“のイメージも強いのですが、初めてオカルトに触れられたのはいつ頃ですか?

園児時代から小1にかけてのころです。これは僕の世代はみんなそうだったと思います。73年ごろからのオカルトブームは凄まじいもので、男の子のカルチャーのメインストリームがオカルトでした。心霊番組がガンガン放映されるようになったのもこのころですし、円谷プロも『怪奇大作戦』や『恐怖劇場アンバランス』などを手がけていて、好き嫌いは別にして、普通にテレビを見ていればオカルト的なものが目に入ってくる時代でした。ちなみに、僕のオカルト入り口は小学館の『なぜなに学習図鑑』という児童書のシリーズでした。

著書『昭和オカルト大百科』では、70年代に大きな注目を集めた オカルト勢が数多く登場します。なかでもノストラダムスに関しては、”恐怖の大王“がやって来るとされた、あの”1999年7の月”から2019年7月で丸20年が経過しました。今あえて1999年当時を振り返るとしたらいかがでしょうか?

ノストラダムスが熱く語られたのはやはり70年代で、80年代以降、特にバブル期以降はもうああいうロマンチックな終末論への感心はすっかり薄まって、みんなが半笑いの思い出話としてしか語らなくなっていたと思います。また、終末論に影響されたオウム事件、そしてある意味で終末を連想させるほどの被害をもたらした阪神淡路大震災が95年に起きているので、かつての娯楽的オカルトのノリで「世界の終わり」を語るような余裕が当時はなかったような気がします。

著書『昭和ちびっこ未来画報』に掲載されているかつての“未来予想図”が非常に懐かしいです。昭和後期に多くの方が感じていたであろう21世紀という強烈な未来的キーワード。
車が空を飛び、人型ロボットが暮らしをサポートしてくれるなどのイメージがありました。現在はこうしたイメージとは異なる技術の発展をみせていますが、かつてのイメージはいつ頃まで有効だったのでしょうか?

21世紀が「未来」として空想されていたのは80年代までだったという印象です。70年の大阪万博のころがピークで、SF的な「未来」イメージがメディアに氾濫しました。でも、85年のつくば万博の展示には、もうそういう雰囲気がなかった。21世紀は夢のような「未来」ではなく、実現可能なテクノロジーの集積という形でしか想像されていなかったと思います。やはり70年代の未来観の根底には戦後の高度経済成長があった。高速道路や新幹線が急速に整備されて、日本が一気に変わっていく時代だったからこそ、とてつもなくファンタジックな21世紀のビジョンにもリアリティが感じられたんだと思います。経済成長が頭打ちになると未来のイメージも地味になっていく、ということなのでしょう。
初見健一 プロフィール
1967年、東京生まれ。主に1960~70年のお菓子やおもちゃ、キッズカルチャーについての話題など、レトロな戯言をネタに活動中。主な著書に文庫『まだある。』シリーズ全9巻、単行本『まだある。大百科』『まだある。こども歳時記』『ぼくらの昭和オカルト大百科』、『昭和こども図書館』(大空出版)、『昭和ちびっこ未来画報』『昭和ちびっこ怪奇画報』(青幻舎)、『小学生歳時記』(ダイヤモンド社)、『子どもの遊び 黄金時代』(光文社新書)など。
初見健一(@ken1hatsumi)さん | Twitter