みつはしちかこ
みつはしちかこ のデビュー作にして代表作である「小さな恋のものがたり」は、1962年に学研の「美しい十代」で連載が開始されました。多くの読者に支えられ近年でも展覧会等が開催されるほど、その人気は廃れることがありません。
みつはしちかこ展
「小さな恋のものがたり」のファンの多くは昭和に青春時代を過ごした女性だと思われますが、このメルヘンチックでありながらもユーモアもありリアルな表現もありという内容は男性とて見逃すことは出来ない作品となっています。
チッチとサリー
「小さな恋のものがたり」の主人公は、小川 チイコ(チッチ)というドジでコンプレックスの塊のようなどこにでもいる女の子。主人公は漫画家に似るとよく言われますが、このチッチもそう。みつはしちかこ によく似ています。
そしてボーイフレンドの村上 聡(サリー)。この2人を中心に物語は展開します。
小さな恋のものがたり
ところでこのボーイフレンド、聡だからサリーというわけでもありません。背が高いんですね。そうです。このあだ名は、リトル・リチャードが歌った「Long Tall Sally」が元でしょう。
この曲は多くのミュージシャンにカバーされていて、日本ではビートルズのバージョンで知っている人が多いのかもしれませんね。
現在では洋楽に日本語のタイトルが付けられなくなっていますすが、この曲は「のっぽのサリー」という邦題がついていました。
ただ、ビートルズがこの曲を発表したのは1964年ですから、みつはしちかこ が「のっぽのサリー」を知ったのは1956年に発売されたエルヴィス・プレスリーのカバーバージョンだったのかもしれません。
で、サリーの身長ですが、設定では183センチです。因みにチッチは132センチ。役者として才能を開花した岸部一徳はタイガース時代はサリーと呼ばれていました。やはり背が高かったからですが、身長は181センチだそうです。
小さな恋のものがたり
1962年から連載開始された「小さな恋のものがたり」は、1967年に単行本として発売されました。ストーリー4コマ漫画という読んで字の如しの形態がとられています。
小さな恋のものがたり
「小さな恋のものがたり」は昭和の王道を行く恋愛もの。つまりプラトニック・ラブです。いえ、恋愛という事で言えば、もっと手前の片思いに重点が置かれています。そう、基本チッチの片思いなんです。
第1集では2人がどのように出会い、どのようにしてデートにこぎつけるかというそのあたりが描かれています。で、第2集は、二人の関係が少しだけ親密になり、小さな恋のものがたりがはじまるのです。
小さな恋のものがたり
サリーは頭が良くてスポーツ万能(野球部のエース)、そしてハンサムという70年代女学生の理想の男性です。しかし、まぁ、なんというか、クールなんですよね。なので、付き合っていてもチッチの片思いのようになっているんです。
小さな恋のものがたり
連載期間は実に52年4ヶ月にもおよび、単行本は1970年以降は毎年5月に新刊がでていました。つまり年に1冊。で、物語は基本同じところをグルグル回る感じです。何度も春が来て夏が過ぎ、秋が来て何度も何度もクリスマスや正月を迎えますが、登場人物は年を取りません。そう、サザエさん状態です。ただ、その中で恋をしたり失恋したりしながら青春を謳歌していくんです。
テレビドラマ版
「小さな恋のものがたり」は、岡崎友紀と沖雅也という配役で1972年7月8日から9月30日まで全13回、日本テレビ系列で放送されました。
脚本を「雑居時代」など石立鉄男を主役にした一連のドラマで知られる、松木ひろし が担当しています。で、主題歌は岡崎友紀が歌う「ファーストラブ」です。
ファーストラブ
ジャケットに注目!「だから大好き!」とありますね、これは、同じく岡崎友紀と沖雅也で放送されていた「小さな恋のものがたり」の前番組なんです。「だから大好き!」は低視聴率のため打ち切りとなり、主演の2人も主題歌もそのままで始まったのが「小さな恋のものがたり」だったんです。
テレビアニメ版
テレビアニメ版は、ドラマ版から12年後の1984年3月20日に放送されました。
チッチの声は伊藤つかさ がやってます。そう、「3年B組金八先生」にマドンナ役で出演し、シングル「少女人形」で歌手デビューもしたあの伊藤つかさ です。
伊藤つかさ
このアニメ版、気になるのはチッチ以外はサリーのことを村上くんと呼んでいるところですね。初期の話なのでしょうがないんですけどね。やっぱりサリーと呼んでほしいなぁ。
その後の小さな恋のものがたり
毎年5月か6月は「小さな恋のものがたり」の季節。まさに季節の風物詩。ファンは毎年この時期に新刊が出るのを心待ちにしていました。それが、2007年の第41集以後は中断してしまったんです。
小さな恋のものがたり
「小さな恋のものがたり」を21歳で描きはじめた みつはしちかこ も当時すでに66歳ですからね。無理もありません。コンスタントに同じテンションで描き続けるというのは相当の苦労があると想像できます。
しかし、第42集は2011年12月に発売されました。
小さな恋のものがたり
奇跡と言ってもいいでしょうね。往年のファンは嬉し涙を流したといいます。更に3年後の2014年9月28日には、描き下ろし内容をメインにした第43集が刊行され一応の完結となるのでした。
小さな恋のものがたり
ラストはサリーが海外留学することになり、チッチと離れ離れになってしまうということで、往年のファンは涙に暮れたと言います。もう3年ぶりの新刊だというのに往年のファンは泣いてばかりです。
そもそも みつはしちかこ は、連載当初からチッチとサリーのハッピーエンドは望んでいなかったのだとか。基本チッチの永遠の片思いなんです。それが甘酸っぱくていいわけですよ。プラトニックなわけです。
しかし、みつはしちかこ は後日談が描きたくなった。それが、「その後のチッチ」というサブタイトルを付けて2018年10月に刊行された第44集です。
小さな恋のものがたり
第44集では存在を匂わす程度で基本的にサリーは出てきません。サリーよりも、みつはしちかこ は、チッチが描きたかったということですね。まぁ、ご本人の分身ですからね。
小さな恋のものがたり
それにしても みつはしちかこ は、この時77歳ですからね。この作品が持つ20歳の頃と全く変わらない瑞々しさは驚異的です。しかも絵が上手い!当時と全く変わらんではないですか!
サリーが居なくても友人たちに囲まれて元気に頑張っているチッチが観れるだけで、そう、往年のファンは、またまた涙するのでした。
小さな恋のものがたり
さぁ、どうでしょう?果たして続きは出るのでしょうか?「チッチとサリーの未来を描いてみたい」と第43巻が刊行された際に、みつはしちかこ は発言しています。第44集はチッチとサリーの未来とは言い難い。サリー出てきませんし。
もしかすると第45集、出るのかもしれませんよ。そうなると往年のファンは大泣きするに違いありません。その時を楽しみに待ちましょう。