映画愛が止まらない!1980年の配給収入でみる邦画ランキング、ベスト10がこれだっ!

映画愛が止まらない!1980年の配給収入でみる邦画ランキング、ベスト10がこれだっ!

映画っていいものです。レンタルビデオやネットで簡単に観ることができますが、あえて言いたい。「映画館に行けっ!」と。1980年の邦画ランキングです。1980年には多くの人がこの映画を観たんですね。


1980年

1980年というと、竹の子族、なめ猫が流行り、松田聖子やシャネルズがデビューし、漫才ブームが起こるという何とも景気の良い年です。しかし、日本の映画産業はというと、斜陽が叫ばれて久しく上質と言われる作品が日の目を見ることは余りないという時代です。

因みにキネマ旬報の1980年のベスト10を見てみましょう。

1980年度ベスト・テン発表

キネマ旬報 1981年2月下旬決算特別号

1位「ツィゴイネルワイゼン」
2位「影武者」
3位「ヒポクラテスたち」
4位「神様のくれた赤ん坊」
5位「遥かなる山の叫び声」
6位父よ母よ」
7位「四季・奈津子」
8位「海潮音」
9位「狂い咲きサンダーロード」
10位「太陽の子 てだのふあ」

さすがキネマ旬報、良い映画選んでます。では、この年、実際にはどのような映画がヒットしたのでしょうか?配給収入による邦画ベスト10、いってみましょう!

10位 動乱

配給収入9.5億円、10位は「動乱」です。高倉健と吉永小百合のダブル主演にして初共演作。もう、それだけで話題独占です。高倉健が男の中の男ってやつを思い知らせてくれます。

監督:森谷司郎(聖職の碑など)、脚本:山田信夫(英霊たちの応援歌 最後の早慶戦など)、撮影:仲沢半次郎(天使の欲望など)、そして主題歌を小椋佳が担当しています。

9位 天平の甍

9位になると配給収入も大台を超えてきます。大台。そうは言っても10億ですけどね。少ないです。とは言え11.5億円の配給収入で9位となったのは「天平の甍」です。

監督:熊井啓
脚本:依田義賢
原作:井上靖 
ナレーター:城達也
出演者:中村嘉葎雄、大門正明、田村高廣
音楽:武満徹
撮影:姫田真佐久
編集:小川信夫
配給:東宝
公開:1980年1月26日
上映時間:152分

天平の甍

地味ですよね。9位になったことが不思議なほどに地味。今となっては、このタイトル読めないヒト多いんじゃないでしょうか?因みに「てんぴょうのいらか」と読みます。ただ、この作品は戦後最初の中国ロケを行ったことで知られています。

7-8位 男はつらいよ

8位「男はつらいよ 寅次郎春の夢」12.2億円、7位「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」12.5億円。なんとも安定した配給収入ですね。さすが国民的映画。

監督:山田洋次
脚本:山田洋次、朝間義隆、栗山富夫、レナード・シュレイダー 
出演者:渥美清、倍賞千恵子、林寛子、前田吟、笠智衆、香川京子
音楽:山本直純
撮影:高羽哲夫
編集:石井巌
配給:松竹
公開:1979年12月28日 
上映時間:104分

男はつらいよ 寅次郎春の夢

もう寅さんはですね、どれを見ても面白いんです。外れがないんですね。8位の「男はつらいよ 寅次郎春の夢」の時点で既に24作目ですからね。特に目新しいストーリーがあるというわけでもないのですが、まぁ、お約束と言うか、水戸黄門みたいなものですかね。
7位の「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花」は、浅丘ルリ子が演じるリリーというヒロイン三部作の完結篇にあたります。

浅丘ルリ子人気もあったのでしょうが、3回も登場するヒロインというのは珍しいです。
本作は第4回日本アカデミー賞最優秀脚本賞(山田洋次、朝間義隆)、最優秀主演女優賞(倍賞千恵子)、特別賞(渥美清)を受賞しています。

6位 ヤマトよ永遠に

配給収入が13.5億円というと、多いような少ないような、よく分からんというのが正直なところではないでしょうか?アメリカ映画などと比べてしまうとヒットとは呼べないのではないかという気さえします。しかし、観客動員は 220万人です。多いように思えますよね。大ヒットではないかと思えますよね。ようやくアニメの登場です。「ヤマトよ永遠に」、配給収入13.5億円で第6位にランクイン。

ヤマトも多くのシリーズが制作されていますが、この「ヤマトよ永遠に」は永遠の敵であるデスラーが唯一登場しない作品なんです。しかも、これまた永遠のヒロイン森雪が乗艦していなんですよね。ヤマトとしては珍しい作品となっています。

5位 戦国自衛隊

小説を映画化し、テレビCMをバンバン流し、関連企業にチケットを売りまくって映画も小説もヒットさせる。いわゆる角川商法と呼ばれた勝利の方程式です。配給収入13.5億円の「戦国自衛隊」もそのひとつで、原作は半村良。実際に小説も映画も大ヒットしたのですから大したものです。

しかし、配給収入13.5億円とはいえ、製作費が11.5億万円もかかっていますからね。利益を考えるとどうなんでしょう。映画を作るには「お金がかかる」とはよく言われることですが、これでヒットしなかったら次はない。それが現実なのでしょうから、角川商法は理にかなっていたというわけです。
ところで、「戦国自衛隊」は千葉真一芸能生活20周年及びジャパンアクションクラブ (JAC ) 発足10周年記念作品となっています。

4位 ドラえもん のび太の恐竜

「のび太の恐竜」は、大長編ドラえもんシリーズの第1作目です。配給収入15.5億円、観客動員数320万人で堂々の4位!

ヤマトや寅さんと並んで、いや、それ以上と言ってもいいかもしれません。息の長いシリーズですよね。実は本作が大長編ドラえもんシリーズの第1作目です。まぁ、ここからはじまったんですね。漫画でも長編として人気があったのですが、映画も大ヒット。2006年には「ドラえもん のび太の恐竜2006」としてリメイクされています。

3位 二百三高地

さぁ、いよいよトップ3の発表です。ここまでキネマ旬報が選んだ作品は1本も入っていません。では第3位はどうか?やっぱり入っていない「二百三高地」。が、配給収入17.9億円、堂々の第3位です。

監督:舛田利雄
脚本:笠原和夫
ナレーター:内藤武敏
出演者:仲代達矢、三船敏郎、森繁久彌
音楽:山本直純
主題歌:さだまさし『防人の詩』
撮影:飯村雅彦
編集:西東清明
製作会社:東映東京撮影所
配給:東映
公開:1980年8月2日
上映時間:185分

二百三高地

大物俳優が多数出演しています。そんな中、誰よりも輝いているのは、仲代でも、三船でも、森繁でもなく、夏目雅子ですね。美しい。
また、さだまさしが歌う主題歌「防人の詩」もヒットして映画を大いにサポートしました。後にテレビドラマ化されましたが、その際のタイトルは「二百三高地 愛は死にますか」となっています。「愛は死にますか」は、「防人の詩」の歌詞にあり当時は大層話題になりましたねぇ。

「二百三高地」は、第4回日本アカデミー賞において、優秀監督賞:舛田利雄、優秀脚本賞:笠原和夫、最優秀助演男優賞:丹波哲郎、優秀助演女優賞:夏目雅子、優秀音楽賞:山本直純、最優秀撮影賞:飯村雅彦、最優秀照明賞:梅谷茂、優秀美術賞:北川弘、優秀録音賞:宗方弘好と9冠に輝いています。

2位 復活の日

2位です。配給収入も23.7億円と20億を超え、申し分ありません。が、ロケハンだけで5000万円、南極ロケに6億かかり、当初14~5億円の予定だった製作費は25億円にもなったそうです。赤字。完全なる赤字。そんな映画「復活の日」は、監督は深作欣二、主題歌はジャニス・イアン。日本では人気の高かったオリヴィア・ハッセーをはじめ知名度の高い役者が多数出演しています。

監督:深作欣二 
脚本:高田宏治、深作欣二、グレゴリー・ナップ
原作:小松左京 
製作:角川春樹
出演者:草刈正雄、ボー・スヴェンソン、オリヴィア・ハッセー、夏木勲、多岐川裕美、千葉真一、渡瀬恒彦、緒形拳 
音楽:テオ・マセロ、羽田健太郎 
主題歌:ジャニス・イアン「You are love」
撮影:木村大作
編集:鈴木晄
製作会社:角川春樹事務所/TBS
配給:東宝
公開:1980年6月28日
上映時間:156分

復活の日

さて、それで「復活の日」の評価は?と言われれば、はっきり言ってパッとしません。こんなに予算を掛けながら、日本映画としては超大作なのに今ではほとんど忘れ去られた映画となっています。
原作は小松左京ですしね、悪くはありませんよね。それを意外な感じがしないではありませんが、「仁義なき戦いシリーズ」の深作欣二監督がどう料理するのか?興味をそそられる作品ではあります。

「復活の日」は角川映画にとって最後の大作となりました。巨額の製作費をかけると角川映画と言えども採算があわなくなったんですね。以降、角川映画はアイドルを中心としたスター・システムによる2本立て上映へとシフトしていきます。

1位 影武者

さていよいよ1980年の配給収入第1位、「影武者」の登場です。配給収入26.8億円の大ヒットを記録したとはいえ、黒澤明でさえも資金調達に苦しみながら完成にこぎつけた作品です。前作の「デルス・ウザーラ」も日本で撮ることが出来なかったんですよね、誰か資金を提供しろっ!世界の黒沢だぞっ!と声を大にして言いたい。で、それに応えたのが黒澤明を敬愛するフランシス・フォード・コッポラとジョージ・ルーカスでした。ありがとう。貴方たちのおかげで名作が形になりました!

監督:黒澤明
脚本:黒澤明、井手雅人
製作:黒澤明、田中友幸
外国版プロデューサー:フランシス・フォード・コッポラ、ジョージ・ルーカス
出演者:仲代達矢、山崎努、萩原健一、根津甚八、油井昌由樹、隆大介、大滝秀治、桃井かおり、倍賞美津子、志村喬、藤原釜足
音楽:池辺晋一郎
撮影:斎藤孝雄、上田正治
編集:黒澤明
製作会社:黒澤プロダクション、東宝映画
配給:東宝
公開:1980年4月26日
上映時間:179分

影武者

面白い!これはやっぱり面白いです。黒澤明最後の傑作と言ったら怒られるかもしれませんが、そう言いたいほどに面白い作品です。まぁ、何と言っても設定がいいですよね。影武者とはね。

配給収入と作品の出来が見合った映画。そう言って良いでしょう。素晴らしい作品は多くの人に観てもらいたいですからね。
ところで、キネマ旬報のベスト10に入っているのは「影武者」だけですね。ヒットした映画が悪いわけではありません。かと言ってそれが名作として後世まで残る作品かと言えば、それも疑わしい。

「影武者」は、第33回カンヌ国際映画祭でパルム・ドール(グランプリですね)をはじめ、世界各国で多くの映画賞に輝きました。しかし、日本アカデミー賞はひとつもとっていないんですよね。「二百三高地」がたくさんとったからでしょう。そこらあたりは大人の事情というヤツが絡んでいそうです。
映画をヒットさせるのは難しい。評価されるのも難しい。しかし、結局良い映画というのは残るってことですね。

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