芸能の神楽には”出雲系”と”伊勢系”があるのですが、その違いをご説明いたします。

芸能の神楽には”出雲系”と”伊勢系”があるのですが、その違いをご説明いたします。

秋になりました。秋は「飽き(飽和)」。草木の実りが飽和点に達し、果実が大地に溢れる季節です。そんな秋…食欲の秋とか読書の秋とか色々やる気に満ちる季節。ここではニッチにコネタの秋でまりいます。芸能の神楽には”出雲系”と”伊勢系”があるんですよ。


秋になりました。秋は「飽き(飽和)」。草木の実りが飽和点に達し、果実が大地に溢れる季節です。そんな秋…食欲の秋とか読書の秋とか色々やる気に満ちる季節。ここではニッチにコネタの秋でまりいます。

どこかで見たことがありませんか。巫女さんが何かを舞っている姿や、年明けやおめでたい時などにお子さんの頭をカプカプ齧る獅子舞を。真面目に書くと、芸能分類では「神楽(カグラ)」に属します。文字通り「神への楽(芸能)」です。

で、神楽って何?

神楽って何?…と言われると意外と回答しにくい。それが神楽。

文献をひも解くと、上代に成立した『万葉集』では「神楽」「神楽声」などと書いて「ササ」と読ませていました。また、平安時代の書物『梁塵秘抄』には「鈴はさやふる藤太巫女」という記述も。神楽を舞う人間が笹や鈴を持っていたことがうかがえます。現代の巫女さんを思い出していただければ良いのかなと思います。

その「神楽」を「カグラ」と読むことが定着してくるのは平安中期頃と言われております。京都の加茂神社の還立の「神楽」(寛平元年・889)や石清水八幡社の「神楽」(寛平年間)などが、「神楽」という言葉の初見と言われているほか、これらが宮中の神事にも影響し、宮中の神楽「御神楽(ミカグラ)」が生まれたとも。

芸能としての神楽は?

では芸能としての神楽はそもそも何と発音したかと言うと、おそらく神様が座す場所をさした「神座(カミクラ・カムクラ)」が語源ではなかろうか?と言われております。神楽の定義がこの「神座」に由来するからです。ですので、神楽(という芸能)をザックリ説明するとすれば、「神を『神座』に迎え、その前で鎮魂の作法(ワザ)を行う」ことかな、と思います。

ではなぜ「座」から「楽」になったのか。

「楽」は『古事記』では「アソブ」と読ませております。アソブとは鎮魂の歌舞を差す言葉ですので、芸能関係に使われるようになってきたようです。結果、時代が経つにつれ、神が座す空間「神座」から神の芸能「神楽」という言葉へ変遷したようなのです。寛平年間には「神楽(カグラ)」という言葉が文献上に出始めますので…少なくともそのあたりから現在で言うところの「神楽」は定着していたのかなと思います。

大別すると4つの「神楽」

そんな神楽ですが、宮中での神楽を「御神楽(ミカグラ)」と言うことは先に描きましたが、民間に伝承された神楽は「里神楽(サトカグラ)」と総称します。里神楽は、その特色から大雑把に以下4つに大別されております。

➀巫女神楽



神に仕える資格を持つ女性による神楽。古い姿は島根県の美保神社や佐陀神社などで見ることができます。

②採物神楽(出雲系)



神楽を舞う中で手に持つアイテム(採物トリモノ)を使う神楽。榊・御幣・杖・笹・弓・剣・鉾などなど。

演劇的なストーリーをもつ事が多いことと、ルーツが出雲(島根)にあるため、『出雲系神楽』とも。日本神話を扱い、「天岩戸」や「八岐大蛇」が有名かと。

江戸に伝わるパントマイム式の神楽「里神楽」や、九州に伝わる神楽などもこの流れ。

③湯立神楽(伊勢系)



神楽の舞庭にカマドを作り、その上に水をたっぷり入れた大きな釜を置き、湯を沸かす。その湯気がモウモウと立つ中で行われる神楽。湯を立てるから「湯立神楽」。愛知県や長野県、神奈川県、秋田県などに散在しております。

このタイプの神楽のルーツは一説に、伊勢神宮外宮の神楽とも。ゆえに『伊勢系神楽』とも。

伊勢神宮の外勤神職「御師(オシ)」らが各地にこの神楽を広めたようです。霜月(新暦11月)に舞われる地域では「霜月神楽」とも呼ばれます。

➃獅子神楽



➀~③は舞う場所を設けて演ずる神楽でしたが、こちらは別。2つの系統があります。



(1) 山伏系神楽…青森・岩手・秋田・山形に伝わる。

獅子頭(権現様)をあがめ、安置した場所の前で神楽を展開する。修験道の影響が濃い。

(2) 太神楽…伊勢・尾張(熱田)を拠点とする。



伊勢信仰に拠っていた曲芸的獅子舞。かつて東海道の中継地であった桑名と熱田それぞれに勢力があった。伊勢系大神楽が今も有名。熱田の勢力は徳川家とともに江戸に拠点を移したほか、水戸藩と共に水戸にも。結果、江戸と水戸の太神楽を軸に「太神楽曲芸協会」などを設立している。頭をカプカプする獅子舞などもコレ。

という感じに分類されていたりするのですが、出雲系と伊勢系がある点が日本らしい気がします。演劇性強い出雲系とお湯(湯気)の伊勢。単語は同じ「神楽」でも手法は違うのです。

皆様が生活する地域でもし神楽を見る機会がありましたら、古代日本も感じていただけたら嬉しいです。

関連する投稿


え、徳川綱吉が名君に?角川まんが『日本の歴史』最新研究でまさかのアップデート!

え、徳川綱吉が名君に?角川まんが『日本の歴史』最新研究でまさかのアップデート!

「学習まんがと言えばこれだよね!」と親世代も知る角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』が、刊行10周年で累計1000万部を突破。この節目に、なんと全15巻の内容を最新の研究に合わせて大改訂したというから驚きだ。東大の先生たちも加わったこの「アップデート」、あの「生類憐みの令」の評価まで変わっているらしい。自分の子どもや孫に教える前に、親父たちも要チェックだぞ!


武将の能力値記載のカードで歴史を学びながら遊べる!「信長の野望」のカードゲーム『信長の野望 戦国武将かるた』が発売!!

武将の能力値記載のカードで歴史を学びながら遊べる!「信長の野望」のカードゲーム『信長の野望 戦国武将かるた』が発売!!

講談社より、40年以上愛され続ける「信長の野望」シリーズの公式カルタ『信長の野望 戦国武将かるた』が現在好評発売中となっています。価格は2750円(税込)。


70年代前半に巻き起こった「日本語ロック論争」を特集したNHK Eテレ「世界サブカルチャー史」が放送決定!!

70年代前半に巻き起こった「日本語ロック論争」を特集したNHK Eテレ「世界サブカルチャー史」が放送決定!!

NHK Eテレにて、70年代前半を中心に邦楽ロックシーンに巻き起こった「日本語ロック論争」について特集した番組「世界サブカルチャー史 欲望の系譜 シーズン4 21世紀の地政学」ポップス編 第2回の放送が決定しました。


世界初はハリボー!日本初は?グミの歴史と人気商品をまとめてみた!

世界初はハリボー!日本初は?グミの歴史と人気商品をまとめてみた!

今ではコンビニお菓子の主役の1つともいわれているグミ。今では大人でも好きな人が多いですよね。日本にグミが浸透するまでの歴史をまとめてみました。


「どうする家康」と1983年の「徳川家康」のキャストを比べてみた!

「どうする家康」と1983年の「徳川家康」のキャストを比べてみた!

2023年の大河ドラマは「どうする家康」が放送されていますが、40年前の大河ドラマも「徳川家康」を放送していました。当時と現在のキャストや内容を比べてみました。


最新の投稿


「パックマン」「ゼビウス」などナムコット名作がブランケットに!ファミコン外箱を再現した「クラシックゲームブランケット」登場

「パックマン」「ゼビウス」などナムコット名作がブランケットに!ファミコン外箱を再現した「クラシックゲームブランケット」登場

株式会社KADOKAWA Game Linkageは、ナムコットブランドのファミコンソフト『パックマン』、『ゼビウス』、『ドルアーガの塔』の外箱をモチーフにした「クラシックゲームブランケット」3タイトルを2026年2月16日に発売します。両面印刷で外箱の表裏デザインを忠実に再現し、A5サイズ16ページの冊子も同梱。現在、予約受付中です。


病院も映画館も煙モクモク!?自由すぎる昭和の常識を徹底図解

病院も映画館も煙モクモク!?自由すぎる昭和の常識を徹底図解

日本文芸社は、「昭和100年」の節目に、書籍『眠れなくなるほど面白い 図解 昭和の話』を11月27日に発売しました。庶民文化研究家・町田忍氏監修のもと、「病院でもタバコOK」「消費税なし」「過激すぎるTV」など、令和の感覚ではありえない“自由すぎた昭和の本当の姿”を、図解と豊富な資料写真で紹介。世代を超えたコミュニケーションツールとしても楽しめる一冊です。


ビー・バップ・ハイスクール高校与太郎祭!仲村トオルも清水に降臨

ビー・バップ・ハイスクール高校与太郎祭!仲村トオルも清水に降臨

映画『ビー・バップ・ハイスクール』公開40周年記念イベント「清水 ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎祭」が、聖地・清水駅前銀座商店街で12/13・14に開催決定!初日は仲村トオルさん登壇のセレモニーを実施。学ラン・セーラー服でのコスプレOKエリアや、名シーンの聖地巡礼ツアー、映画全6作の上映会など、アツすぎる内容で、あの頃の青春がブッ返る!


プロレス界の歴史が動く今こそ読むべき一冊! 『ようこそ、プロレスの世界へ 棚橋弘至のプロレス観戦入門』2025年12月18日(木)発売!

プロレス界の歴史が動く今こそ読むべき一冊! 『ようこそ、プロレスの世界へ 棚橋弘至のプロレス観戦入門』2025年12月18日(木)発売!

新日本プロレスの“100年に一人の逸材”棚橋弘至氏による著書『ようこそ、プロレスの世界へ 棚橋弘至のプロレス観戦入門』が2025年12月18日にKADOKAWAより発売されます。引退が迫る棚橋氏が、26年の現役生活で培った視点から、プロレスの魅力、技の奥義、名勝負の裏側を徹底解説。ビギナーの素朴な疑問にも明快に答え、プロレス観戦をさらに面白くする「令和の観戦バイブル」です。


ウルトラふろく200点以上を一挙収録!『学年誌 ウルトラふろく大全』発売

ウルトラふろく200点以上を一挙収録!『学年誌 ウルトラふろく大全』発売

小学館クリエイティブは、ウルトラマンシリーズ60周年、『小学一年生』100周年の節目に『学年誌 ウルトラふろく大全』を11月28日に発売しました。『ウルトラQ』から『ウルトラマン80』までの学年誌・幼児誌のウルトラふろく200点以上を網羅的に掲載。組み立て済み写真や当時の記事も収録し、ふろく全盛時代の熱気を再現します。特典として、1970年の人気ふろく「ウルトラかいじゅう大パノラマ」を復刻し同梱。