秋になりました。「読書の秋」「食欲の秋」。夏の暑さで心身ともにウンザリしていたところに涼しい風が流れて動きやすくなり、色々な意欲が湧く季節。そんな秋に、日本神話的コネタをば。
木の国⇒紀伊の国?木々があふれる日本の樹木のお話
木々あふれる日本の、そんな樹木たちを植えた神が誰かご存知でしょうか?実はスサノオノミコト(以下、スサノオ)とそのお子さんたちです。かれらの逸話が由来になって出来た国もあります。木の国(キノクニ)と呼ばれたその国は、キノクニという音から「紀伊の国」に。現在の和歌山県です。
このコラム的には国名の由来より、「何を使って木々が生まれたか」がコネタです。
その前に。
「スサノオ」について
「スサノオ」と聞いて何を思い出すでしょうか。おそらく「天岩戸」「ヤマタノオロチ」などの神話ではないでしょうか?
これら神話を非常に大雑把に書きますと…「天岩戸」は、父神イザナギから夜または海原を治めるよう言われたスサノオが、統治を断り、亡き母神イザナミがいるあの世「根の国」に行きたいとごねた結果、怒った父神から居場所を追い出されたところからスタート。
追い出されたスサノオは根の国へ向う前に姉のアマテラスオオミカミに別れの挨拶をしに、天(高天原)を治める姉のところに挨拶に。高天原にしばらく滞在することになったものの、各所で次々と暴挙を働く始末。そんな弟を恐れた姉神は天の岩屋に隠れてしまいます。最終的に岩屋から出てこられ、スサノオは天からも追放されましたよ…というお話。
次に「ヤマタノオロチ」
引き続き「ヤマタノオロチ」。高天原を追放されたスサノオは地上に降り、出雲の鳥髪山(現・船通山)に着地。ふと、箸が流れてきた川があったので、「これ何?」的に川を上ると、美女を間に老夫婦が泣いていたので「何してるの?」と。
老夫婦いわく、美女は彼らの末娘でクシナダヒメ(イナダヒメとも)といい、夫婦にはその娘含め8人の娘がいたのだが、年に一度、ヤマタノオロチという8頭8尾の巨大怪物がやって来ては娘を食べてしまうと。今年はついに最後の末娘も食べられてしまう…と泣いているという。
スサノオはヤマタノオロチをを退治することに。退治後、オロチの尻尾から草那藝之大刀(クサナギノタチ。古事記での表記。※日本書記では草薙剣)が出てきたから姉に献上。これが三種の神器の一つに(現在は愛知県の熱田神宮の御神体)。その後クシナダヒメを妻とし二人の住まいを建てまして、その時に「八雲たつ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を」と詠んだよというお話。ちなみに、この歌はこれが和歌の由来と言われます。
スサノオについての逸話は大体これらの神話が有名かと。

ですが!むしろこの後のスサノオの行動こそ日本的に大事。何をしたか言いますと、それが最初に書いた「植樹」なんです。この逸話は古事記には載っていません。『日本書紀』卷第一第八段「第四の一書」と「第五の一書」に記されております。
ガッチリ書くとまず第四。
次に第五。
正直、漢字だらけで読む気が起きないのでザックリ説明すると
第四はスサノオの息子イソタケル(イタケルとも)のお話。「あの地には金銀があるらしい」と言う父スサノオと一緒に韓の国新羅に行ったものの父は居たがらず、結局父子共に埴土船で日本に戻り出雲斐伊川上の鳥上峯に到着。そんなイソタケル君、韓に行く時から多くの樹木の種を持っていましたが、新羅に植えず全て持ち帰り、九州を皮切りに日本全土に種を植えていきました。だから日本は緑溢れる国になりました、というお話。
第五は韓から戻ってくるまでの部分は同じなのですが、その後、父スサノオがアクティブ。スサノオが国のために自分の体毛をブチブチ抜き出し、ヒゲからスギ、胸毛からヒノキ、尻毛からマキ、眉毛からクスノキなどを生み出し、それらを息子イソタケルらが全国に植えたよというお話。スサノオは「杉と楠は船、檜は宮殿とか風呂の浴槽、マキは棺桶に」とまでアドバイス。そして「木の国」ができました、という感じです。

そう!日本はスサノオの体毛(から生まれた樹木)に覆われた国なんです。この逸話は尻毛まで登場する壮大な国作り神話ですが、あまり知られていない気がします。尻毛がいけなかったのでしょうか…。木々生い茂る山々を見るにつけ『スサノオは毛深ったのだろうか』とも空想してしまいます。
なお、息子イソタケルは現在、紀伊国一宮「伊太祁曽神社(いたきそじんじゃ)」の祭神であるほか、例えば関東だと「杉山神社」、新潟は佐渡国一宮「度津神社(わたつじんじゃ)」などに祀られております。日本を樹木溢れる国にしたスサノオ・イソタケル父子をぜひ★